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#12 「わっ!」こどもたちと一緒に、海での発見を楽しむ「海あそび舎」とは?

芦屋港レジャー港化に向けた町の賑わい創出として、町内事業者一人ひとりに話を聞き、その魅力を発信する「あ!48(あしや)stories」です。まずは、レジャー港化に伴う機運醸成事業に関わった事業者から取材をしていきます。

芦屋町の景勝地「洞山」の近くで海を観察する人を発見・・・!近づいてみると、”海あそび舎”八木澤潮音(やぎさわしおね)さんがニッコリ笑顔で迎えてくれました。「さぁ、海あそびを楽しみましょう!」青い海と空が似合う通称“しおねえ”に、海あそび舎の設立と、こども向けの海あそびプログラムのこと、芦屋港の活用アイディアなどをお聞きしました。


海あそび舎
インスタグラム https://www.instagram.com/umi.ashiya/
HP:https://sites.google.com/view/umi-ashiya/
内容:海の自然体験活動(生き物観察、ビーチコーミング、シュノーケリングなど)

Q どんな海あそびプログラムを開催していますか?

親子で楽しめる生き物、漂着物の観察会を行っています。未就学児さん対象のうみのこクラブも人気です。また、漂着物を使ったクリスマスリースを作ったり、海藻でエコバックを染めたりするワークショップを行っています。ひじきの汁でエコバッグを染めたときは、「バッグがひじきの匂いになるの?」と、こどもから素朴な疑問が飛んできて、思わず笑ってしまいました!一度体験してハマり、何回も参加してくれる子もいます。

ビーチコーミング中に見つけたスナガニ

Q どうして海が好きになりましたか?

海のない奈良県で生まれ育ったのですが、両親が趣味でスクーバダイビングをしていて、海に憧れるようになりました。12歳の時にはじめて海に潜り、こんなに楽しい世界があるのかと感動しました。陸から離れて海の中で浮かんでいると、空を飛んでいるような気分になり、気持ちがいいんです!

海への興味から沖縄の琉球大学へ進学しました。海洋生物について学んだり、潜水部に入ったり、陸より海にいる時間の方が長いような生活をしていましたね(笑)潜水部では部長をしていて、後輩にスキューバダイビングを教えるために、プロ資格(インストラクター)を取りました。子ども向け自然学校のスタッフをするようになり、自然体験の大切さや魅力を感じるようになったのもこの頃です。

洞山の面白さを伝える潮音さん

Q 何がきっかけで「海あそび舎」を始めたのですか?

一人で行くよりも、誰かと海に行って発見を分かち合うことが好きでした。そこで芦屋町に来てから、海あそびの具体的なプログラムを考えました。身近に自然ツアーをしている自営業の人や、NPO団体を結成している人がいたので参考にしました。
自分たちだけで海へ行っても貝殻拾いなどを楽しめますが、私のプログラムでは見つけておしまいではなく、そこから海の生き物について考え、新しい発見に繋がるように工夫しています。

Q 芦屋町の洞山・夏井ヶ浜・狩尾岬ではどんな生き物を発見できますか?

私に生き物のことを聞いちゃますか?止まりませんよ(笑)
カニ・ウミウシ・アゴハゼ・アメフラシなどを見つけられます。芦屋町で見られるカニは10種類以上です。砂浜と同じ色でとにかく素早く走る、小さなスナガニをはじめとして、死んだふりをするカニや森に住んでいて産卵のために海に下りてくるカニ、さらに足ヒレがあり泳げるカニもいます。アメフラシという生き物は、周りを驚かせて身を守るために、紫の汁をもあもあと出したりするので、その瞬間を見たこどもたちは「わぁっ!」と驚きます。

Q 海の大切さを、こどもたちに伝えたいという思いもあるんですね!

そうなんです。海あそびのプログラム参加者が、遊んでいる間に海ごみを見つけて「拾いたい」と言ってくれることがあります。芦屋町のボランティア清掃ゴミ袋を使ってビーチクリーンをすることもあります。
プログラム参加後に生き物を好きになったり、海を守りたい・大切にしたいと思ってもらえるように、海を楽しみつつ環境の変化に対して何ができるか一緒に考えるようにしています。それが家庭ごみを減らしたり、節水することなどの環境に配慮した行動に繋がるといいなと思います。
教室で環境について学んでも、なかなか現地で実感する機会がないですからね!

Q なぜ、芦屋町に住むようになりましたか?

夫の仕事がきっかけで2023年に東京都から福岡県へ移住しました。北九州市付近で海の近い場所に住みたいと思っていて、芦屋町を見つけました!中古住宅を購入し、自分たちで改修しながら住んでいます。前に住んでいた方がご近所さんへ顔繋ぎしてくれたので、地域の方と交流がしやすくありがたかったです。

当初は、海あそび舎をすると決めていませんでした。ダイビングショップや海沿いのカフェ・ゲストハウスなど、何ができるかな?と考えていました。本当にしたいことは何か、形にできることはあるかを模索した結果、こどもたちに海の楽しさ・大切さを伝える仕事がいいと思い、海あそび舎を始めました。

石炭(木の化石)は、遠賀川の歴史を物語る

需要があるのかな?駅が遠いけど来てくれる人はいるのかな?と不安がありましたし、プログラムの内容や料金設定も全て手探りでした。観光協会のあしや探検隊に載せていただいて、ポスターも掲示してもらいました。町内の小中学生にチラシを配布してもらったこともあって、今年は海の自由研究やシュノーケリングなどに沢山の家族が参加してくれました!

Q 芦屋町に住んで2年近くになりますが、どうですか?

海が近く、夕陽を見れる生活は最高です!また、魚がおいしすぎて、大好きになりました!奈良県に住んでいた頃は、鮭やししゃも、さばなど限られた種類しか身近になかったのですが、芦屋町ではいろんなお魚を食べることができて、胃袋が喜んでいます!
また、わかめ・ひじきなどの海藻は、これまで乾燥のものを食べていましたが、越してきてから生のものが手に入るようになって感動しています。わかめしゃぶしゃぶをポン酢でいただくのが好きです。

Q これまでのプログラムで、印象に残ったことはありますか?

プログラムの後半に突然泣き出した子がいて、楽しくなかったのかな?と不安になったことがありました。しかし、お母さんが「帰りたくないんだよね」と慰めているのを見て「そんなに楽しんでくれていたんだ!」と驚き嬉しくなりました。普段こどもを見守るのに精一杯な親御さんたちも、一緒に海あそびを楽しみながら「来てよかった」と言ってくださることが嬉しいです。

これまで何もいないと思っていたところに生き物を発見すると、その後に自分たちだけで海へ行ったときに、海への見方が変わったりします。こどもさんが「何これ!」と見つけたものが、私にとっても新たな発見だったりします。素直に疑問を投げかけてくれるので、「そこにそんな生き物いるんや!」「言われてみればそうやね!」と一人で海に行くときより、私自身も楽しいです。
悪天候などでプログラムをキャンセルにしたり、場所を変更したりという対応は必要ですが、そんなに大変だとは思いません。むしろ、同じプログラムでもルーティン化されず、天気によって異なる海模様を楽しんでいます!

Q これから新たなプログラムが生まれるのでしょうか?

1人で大人数は対応できないので、夏だけでもスタッフを募って1クラス分などまとまった人数に対応できるようにしたいなと思います。また、年間を通して四季の海を楽しめるようにプログラム作りをがんばります。

さらに、1~2時間の自然体験じゃものたりないという家族向けに、海漬けの2泊3日キャンプも行いたいです。私は大学時代に参加した10日間の無人島キャンプが思い出に残っていて、自然と深く触れ合う機会をつくっていきたいと考えています。

サンゴの骨

Q 芦屋港のレジャー港化に、どんな思いを抱いていますか?

2023年の機運醸成事業の中で、キャンプの海講師として参加しました。参加者のこどもたち10名ほどに「海のお宝さがし」と題して、「海の不思議を探れ」という指令カードから始まるプログラムを実施し、親子で楽しんでくれました。

芦屋海岸には松が植わっているので、宗像市の松原のようにベンチがあったり散策ができたりする場所になるといいなと思います。また、海岸は維持費のかかる大型機材を導入してレジャーを行うのではなく、自然の環境に近い状態で行えるアクティビティができるといいですね。シュノーケリングは大きな機材がいらないし、人材育成をすれば地元の若者が働く場にもなるので、実現しやすいアクティビティだと思います。

海外ではエコツーリズム(※)という環境と地域に優しい観光の考え方があって、それに沿った海の楽しみ方を推奨したいです。地域の資源を活かして、住民と来訪者の双方が心地よいレジャーを展開するように進めてほしいです。

(※)地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組み。(環境省)

海のない奈良県ご出身ですが、海に憧れを抱きダイビングに没頭したり、サンゴ礁の研究をしたりと、海に親しんできた潮音さん。「非日常だった海が次第に身近になり、今ではなくてはならないものになりました」と語る潮音さんのいきいきした表情に魅了されました。こどもたちに海あそびの楽しさを教えるだけでなく、海の環境のことを知ってもらう、そんな素敵な活動をこれからも応援します!

ビーチコーミングで拾った貝殻や木片
普段触れない貝殻の細部を観察したり、漂流物がどこから来たかなどを考えたりして、
大人も楽しい時間でした!

(文―上田裕菜)

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