三つ葉のクローバー
【写真で掌編小説】
「三つ葉のクローバー」
いつもと同じ帰り道に、見覚えのないベンチがあった。
いつもと同じだったら、通り過ぎるだけのはずだけど、今日はどこか気になり立ち止まった。
ベンチに対面して周りを見回す。
通行人はいない。
私はベンチに腰掛けてみる。
ベンチにかかっているカーテンの隙間から、新緑が見えた。
遠く遠くに見える緑は、心を擦り減らす日常を忘れさせてくれる気がした。
しばらく座っていたベンチの右隣に、誰かが座った。
振り返ると、『私』がいた。
私と同じ外見の彼女は、私に問いかける。
「忙しくても、ちょっと座って、緑を見るのも悪くないでしょ?」
戸惑っていると、彼女は私に手を差し伸べる。
「はい、あげる。お守り」
受け取ると手のひらには、三つ葉のクローバーだった。
「少ないから…、貴重だから…、そんな理由じゃなくてもいいんじゃない? 大事だから大切。それでいいんだよ。だから、『ありふれた私』に、プレゼント!」
渡された三つ葉のクローバーは、どこにでもあるただの葉っぱ。
手のひらに乗せたありふれたものは、心に温かさをくれた。
「あ、ありが…とう…」
振り返るとベンチと揺れるカーテンと、三つ葉のクローバーが残っていた。
終わり
写真から掌編小説でした!
十一作目です!大事なものは希少価値とかじゃないですね。心に残る大切を見つめたいです!
素敵な写真をありがとうございました。
また、お会いできることを楽しみにしています♪