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スタエフ文藝部-綴-提出作品 『サンセットシティ』
憂鬱の波が穏やかになった。
火曜日の午後五時。
蒸し暑い部屋でやっと身体を起こした私は、昨日の代わりに適当にシャワーを浴びた。
綿の黒いワンピースを頭から適当に被り、適当に髪を一つに束ねて、アコースティックギターだけを背負って徒歩十五分の公園へ向かう。
その途中、
「お母さんはどうして、お父さんと結婚したの?」
早歩きの母親に連れられ、麦わら帽子を被った小さな男の子が、見上げて問いかけている所を見かけた。
「いいから急いで」
目を合わせずに手を引く母親。
私の中で黒い海がまたゆらゆらと波打った。
公園に着いて適当にベンチに座ると、周りを見渡して潮の匂いを吸い込む。
あれ、私以外みんな、こんなにも生きる力に満ち溢れているのか。
なんとなくの希望を見つめているのか。
ランニングをしているお爺さんに心の中で問いかける。
笑い合う女学生、顔をしかめてカフェオレを飲み干すサラリーマン。
みんなどうやって生きているんだろうか。
ギターケースに入れていた便箋に、ネイビーのペンで線を書く。
曲にもできず、絵画にもならず、言葉にもできず。
ちっぽけな私は好きなアーティストのいつもの曲を歌って、誰に聴かれるでもなく、ただ歌って、ただ歌って。
お題:自己紹介をしてください