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先生、経営は「理屈」ではなく「勘」というのは本当ですか?

経営者の皆様は本屋は好きでしょうか?

本屋に行くと、たくさんのビジネス書に出会うことができます。

「イノベーションを起こすことがこれからのビジネスには重要だ」
「属人化から脱却して仕組みで稼げるようにしよう」
「経営戦略と経営戦術を分けて戦うべきだ」

私もビジネス書はかなり読んできたつもりですが、そのうち何割かは数ページめくってゴミ箱行きのものもありました。

その手の本で、私が一番嫌悪感を抱くパターンの本はみな「当たり前のことを言っているだけ」の本。

「イノベーションが大事だ」「属人化はだめだ」…そんなこと誰でもそう思ってるよ。と突っ込みたくなる。

当たり前の自明のことをただ伝えて、読んだ人の経営がよくなるなんて思っているやつがいるとしたら、そいつは無能な経営者かコンサルタントだ。なんて心の中で悪態をつきたくなってしまうような本も少なからずあります。

「経営の支援」を生業としている人間は少なくありません。公認会計士、税理士、中小企業診断士、社労士、経営コンサルタントなど実に多くの人たちが、企業の経営の支援を行っています。(私もその一人)

そして、その多くが「理屈」で経営を語ろうとします。

ですが、本当に「理屈」で経営は回るのでしょうか?

経営が理屈や理論でみな動いているのだとしたら、世界中の経営コンサルタントはみな大成功しているはずですが、皆さんの周りを見渡してみてどうでしょう?私のまわりには見当たりません。

正しい理屈で運営すればだれでも成功できるなら、人に教えるよりも自分でやればいいと思います。でもやらないのには、やれない理由があるということですね。


結論、経営は「理屈」だけでは回りません。

その理由と打開策について今回はお話していきたいと思います。



なぜ経営は理屈だけでは回らないのか

税理士である私のところには多くの中小企業のお客様からいろいろな相談が寄せられます。

・経営コンサルタントを付けて経営理念を作ってみた
・ビジネス書で学んだ組織管理の手法を取り入れてみた
・人材アセスメントツールを入れてみた

これらは、私がお聞きした中小企業の経営者様からお聞きした、仕組みとやらを経営に落とし混んでみたのにダメだったいわゆる’’失敗事例’’のほんの一例です。

みなどれも、社内に理屈通りに「仕組み」なりを取り入れてみて組織が進化すると思っていたのに、何も変わらない、または悪化してしまったという結末でした。

私たち経営者は、実に多くの悩みを抱えながら、少しでも事業がよくなる術を探して毎日戦っています。

色々な人に相談したりビジネス書を読み漁ったりすると、どの人もども本にも書いてあること。それは経営に理屈を持ち込むということです。

社長が稼ぐのではなく「仕組み」というもので稼ぐのだと書いてあったから、よしでは経営理念を作ろう!そうすれば毎日朝礼で唱和していけば社員に浸透していく!あとは話題の人材アセスメントツールを導入して、社員を透明性高く評価できる仕組みを入れれば、従業員満足も高まって離職率も下がり、優秀な人材がどんどん入ってくる!!

、、、、、、、、、、はずだったのに。。。離職率は減るどころか増加しているし、毎日朝礼の唱和時の従業員の死んだ目を見ていると、経営者の自分も鬱になりそう。。。

こんな話は私は何度聞いてきたことでしょうか。

このほかにも、過去の経験や分析結果から導き出された作戦Aと社長の直感で決めた作戦Bがあったとして、従業員や顧問税理士からは作戦Aを押されていたにもかかわらず、ワンマン社長の鶴の一声で作戦Bを選択して、結果として大成功するなんて話は決して珍しい話ではありません。

なぜ経営は理屈通りに行かないのでしょう?



理屈で語れる事例の1つとして例えば、ダイエットの結果についてコミット(保障)するという手法で話題となったライザップ。

あれは、私も経験したからわかりますが、ダイエットひいては人の体の仕組みというものは一定の方程式があり、そのコントロール対象は「自分のみ」であるので、’’一定の条件のもとに、一定の行動’’を行っていけば、(おおむね)誰でも、成果が出てくるものです。だから結果にコミットするということが可能となるのです。


ですが経営は違う。

会社を経営するということは、実に様々な人や要素が有機的に絡まり合いながら動いていくことになります。

例えば、お客様や従業員という経営者以外のヒトが参加してくるため、「どれだけ優れた商品やビジネスモデルを構築しても実際には全然売れなかった」ことや、「どれだけ優れた人事評価システムや人材アセスメントを取り入れても、やっぱり従業員側の要因により退職は続く」ことが、当然のようにあるということは、経営者の方であればだれでも理解できることでしょう。

これを可変性と言うのですが、経営の3要素と言われる「ヒト・モノ・カネ」のうち、ほかの2つになくて「ヒト」にだけある要素。これが可変性ということです。

ヒトは、他の要素によって自在に動くものであるため、こちら側の理屈をいくら作り上げても、相手側の要素により簡単に予想通り動いてくれなくなります。

どれだけ立派な離職防止の仕組みを作り上げようとも「新しいことをやりたくなりました」という、こちらではコントロールしきれない要因により、人は退職していきます。

そのため、この「ヒトの可変性」という問題により、経営には勝ち組の方程式を作るのは難しく、理屈だけで経営を回そうというのは至難の業なのですね。

話は変わりますが、むかし大学生のころ、好きな女の子に告白してフラれた友人が「なんだよ、告白はタイミングが全てだって言うから、彼氏と別れたこの完璧なタイミングで告白したのに、結局違うじゃねーかよ」という言葉がなぜか印象的で今でも覚えています。当たり前だろ、と直感的に心のなかでダメ出しした記憶があります。

これも、恋愛を理屈だけで語ろうとしている失敗例の1つで、「告白はタイミングが重要」という理屈で相手の女の子が動いてくれると信じてしまい、女の子の心の可変性を完全に見失っていた例ですね。


では経営に理屈は不要か

私は経営は理屈だけでは回りませんが、経営に理屈は必要だと思います。

つまり、経営の成功には理屈、言い換えると理論は、十分条件ではなくて必要条件だということです。


経営理論だけでは経営を成功させることはできないが、経営理論無しに経営を成功させることは不可能だと思っています。



実際のところ、経営の実務の中で理論が通用するのは私の感覚では3割程度です。残り7割は、理屈よりも経営者の勘の方がうまくいく。

私が思う優れた経営者は、ここまでは理論でいける、ここからは理論ではなくて経営者の勘を頼るというラインを理解している(このライン自体も経営者独特の勘で決めている気がします)ということです。

イメージにしてみるとこんな感じ。

実際に「経営は直感が大事だよ」と言う経営者ほど理論の重要性を知っている節があり、結果としてその経営者の事業はうまくいっている印象があります。


なので、いろいろな経営理論を取り込もうと会社に仕組みをと入りれようと考えて、その結果失敗に終わってしまった経営者様。ぜひそこで「やはり経営は理屈じゃ無理だよな」とあきらめないでほしいのです。

あなたが失敗したのは、理論だけで経営を片付けようとしたからであって、その理論が間違っているわけではない。(かもしれない)

参考までに最近私がはまっている漫画「キングダム」はかつての中国の始皇帝が中華統一をするまでの戦国時代を描いているのですが、その中の戦でたくさんの戦略が出てきますが、やはり重要局面を決めるのは強行突破(理屈ではなく本能の勘)だったと記されています。戦いの歴史を見てみても、理論(戦略)が生きるのは、その戦いの一部であったことがわかります。

経営や組織は生き物です。

だから可変性がある。

そこを理解しながら、理論の重要性を学び、そのうえで経営者の勘を研ぎ澄ませていくことだけが、あなたの会社を強くしてくれるのです。


野球の打率のようなものでしょうか。


理論を学ぶことは素振りに近い。理論を学んで、打率を上げていく。逆に理論でホームランは打てない。ホームランを打つために、経営者の勘を研ぎ澄ませていく。



最後に打開策

▶理論の素振りをしたい方は、私たちの経営ブログを体系的に読んでみてください。


▶経営者の勘を研ぎ澄ませたい方は、こちらのブログを参考にしてください。


経営お役立ちコンテンツ「となりのブレイン」

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今回は、事業の飛躍に必要な要素のうち、いずれの要素にも必要な経営者の勘という観点から切り込んでみました。

少しでもお役に立てた部分があれば幸いです。

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