「仕入れに係る消費税額」と、「課税仕入等の税額の合計額」は同じものか否か
注意:
この記事は、消費税法を勉強中の一個人が、自身の勉強のために書いています。
大学院で判例研究や法令解釈の講義を履修済み程度の理解度で、
なるべく、根拠を明示しながら考察をしていますが、正確であるかどうかの保証はできません。
誤っている箇所があったら、教えてください。
「仕入れに係る消費税額」と「課税仕入れ等の税額の合計額」が出てくる。
消費税法の理論の勉強をしていると、「仕入れに係る消費税額」という用語と、「課税仕入れ等の税額」、「課税仕入れ等の税額の合計額」という用語が出てきます。
予備校では、あんまり気にしないでいいです、とさらっと説明されました。
納得ができないと理解ができない性分なので、異同について調べてみました。
結論
結論からいうと、これらは別物です。
「課税仕入れ等の税額の合計額」➡
課税仕入に係る消費税額 + 特定課税仕入に係る消費税額 + 課税貨物の消費税額
-上記それぞれの返還
+or-棚卸資産の消費税額(みなすor除外)
「仕入れにかかる消費税額」➡
上の「課税仕入れ等の税額の合計額」に
調整対象固定資産の調整(著しい変化による調整・転用)
居住用賃貸建物の転用・売却の調整(加算)をしたもの。
考え方
条文を追っていきましょう。
課税仕入れ等の税額は、30条①項で「当該課税期間中に国内において行った課税仕入に係る消費税額、当該課税期間中に国内において行った特定課税仕入に係る消費税額及び当該課税期間における保税地域からの引取に係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額の合計額」と表現され、30条②項で↑を「課税仕入等の税額の合計額」というといわれます。(なんで①項の時点でそういわないの、、泣き。初登場のときに定義して。別の項でしないで。)
そして、32条①項柱書で、
返還等がある場合は、一号~三号の区分に応じた金額を、
30条①項または30条②項の「課税仕入れ等の税額」とみなすとしています。(返還分を引いているだけ。)
それで、
それを「仕入れに係る消費税額」と言うよ。というとしています。
更に、
33条~35条で、「仕入れに係る消費税額」に
調整対象固定資産の調整税額を加算・控除した額を
また「仕入れに係る消費税額」とみなして、
35条の2で、「仕入れに係る消費税額」に
居住用賃貸建物の転用・売却の調整(加算)をした額を
また「仕入れに係る消費税額」とみなすといっています。
今度は36条で、
棚卸資産の調整をするときの調整額を
また加減算するのかと思ったら、
これは、直接「仕入れに係る消費税額」をいじるんじゃなくて、
「仕入に係る消費税額」の基礎となる「課税仕入れ等の税額」とみなしたり、「課税仕入れ等の税額」に含まないよとしています。
なので、実際の考え方の順序としては、
30条①➡30条②➡36条➡32条②で「課税仕入れ等の税額」を決め、
それがイコール「仕入に係る消費税額」になり、
33~35条・35条の2で、上書き・上書き・上書きをされる感じでしょうか?
確定申告書に記載されるのは、「仕入れに係る消費税額」
確定申告書に記載するものは、四十五①イ~二の4つの合計額。
4つを列挙すると、
仕入れに係る消費税額(法32①一)、
売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(法38①)、
特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額(法38の2①)
領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(法39①)。
つまり、仕入れに係る消費税額、売上対価の返還等に係る消費税額、特定課税仕入の対価の返還等に係る消費税額、貸倒れに係る消費税額を、足してから記入せよとのこと。申告書上は、④~⑦欄ですね。
第四十五条(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告)
第一項
柱書、一号、二号 省略
三 前章の規定によりその課税期間において前号に掲げる消費税額から控除をされるべき次に掲げる消費税額の合計額
イ 第三十二条第一項第一号に規定する仕入れに係る消費税額
ロ 第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額
ハ 第三十八条の二第一項に規定する特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額
ニ 第三十九条第一項に規定する領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額
四号以降 省略
簡易課税なら、「課税仕入れ等の税額」=「仕入れに係る消費税額」
簡易課税(37条)が適用される場合は、
30条~36条までの規定にかかわらず、
「課税仕入等の税額」を計算し、それを「仕入れに係る消費税額」とみなします。
なので、この場合は、「課税仕入れ等の税額」=「仕入れに係る消費税額」となりますね。
理サブをみてみる。
仕入税額控除(2023年TAC理サブでいうと理論3-1)の理論をみると、
1.の仕入れに係る消費税額の控除で、「その課税期間中に国内において行った課税仕入に係る消費税額(注)、その課税期間中に国内において行った特定課税仕入に係る消費税額(注)、その課税期間における保税地域からの引取に係る課税貨物(注)につき課された又は課されるべき消費税額の合計額」を控除するとあり、
2.の課税売上高が5億円を超える場合等で、「1.の規定による課税仕入等の税額の合計額は次の方法により計算した金額とする。」となっています。
条文まんまですが、2.の段階で「課税仕入れ等の税額」とさらっと言い換えてますね。
3-2~3-10までをさらっとみた感じでも、
「課税仕入れ等の税額」、「仕入れに係る消費税額」の使い分けも、
上記の結論の認識であっていそうです。
感想
使い分けはスッキリしましたが、そもそもこれなんのために使い分けられているのでしょうか?
使い分けないと行けなかったんでしょうか???
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