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「魂のいちばんおいしいところ」

谷川俊太郎さんの訃報を知り、涙が溢れた。
すごくさみしい。
さみしさと悲しみと感謝が涙になって流れている。
 
3年前、クレヨンハウス「子どもの本の学校」で、あだちのりふみさんとのオンライン対談を拝見した時、とてもお元気で、エネルギッシュで、
これからもずっとずっと作品を生み出されるような気がしていた。
 
どんな方も命に限りがあるのだ。
命には限りがあるが、作品はずっと生き続ける。
 
谷川俊太郎さんの詩は、こどもの頃からずっと傍にあった。
何度も何度も音読した。
 
本棚の一番手に取りやすいところに置いてあるのは、
「みみをすます」と「魂のいちばんおいしいところ」だ。
 
特に「魂のいちばんおいしいところ」は、
育児に疲れ、自分の無力さに落ち込んでいた時に救ってくれた特別な詩。

何ひとつ言葉はなくとも
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
 
(略)
 
そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた

谷川俊太郎「魂のいちばんおいしいところ」(サンリオ)

0歳の息子を膝に乗せてこの詩を読んだ時のことを、
昨日のことのように思い出す。
 
なんで溌剌とできないんだろう、
不器用でかっこ悪いオカーサンでごめん、
うまくできなくてごめん、
そんな気持ちに押しつぶされそうになりながら、
この詩を声に出して読んだ。
 
読んでいる間、
赤ちゃんは膝の上で「はふはふ」笑ってた。
 
わらいながら、〈魂のいちばんおいしいところ〉を私にくれた。
 
この詩を読むたびに、あの時のわたしを思い出す。
とても苦しかったけどとてもしあわせだった、
もう戻らない、かけがえのない日々を思い出す。
 
谷川俊太郎さん、たくさんの詩をありがとうございました。
これからも大切に大切にします。

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