一片:二月二十三日 朝

これは夢日記。
突然私はフランクフルト駅のようなところの
駅のホームで目を覚ました。電車が行き交うホームの真ん中に
立っていた私はあたりを見渡す。

天気は晴れと雪。日差しが外から舞い込んでいるものの疎らに雪もはらはらと降っておりなんとも幻想的だ。
この時代には珍しいSLじみた電車はガチャガチャとした音を立て、
ホームにはまばらに人が居た。

聴覚がバグったのか、遠い位置でも様々な声が聞こえる。
少し離れたところにいる少女が少年に言う。

「100年の愛も冷めてしまいそうよ」

「それは嫌だあなぁ。愛って冷めたらどうなるの?冷めた愛が残るの?冷めたら消えてしまうの?

「きっと消えたらどんなに楽だろうって思うわよ」

「どういうこと?」

「思い出して気持ちが少しでも動くならそれは愛が消えてないってことだからよ」

「ふーん。よくわからないね。まあいいや」

そう言って少年は少女の手を握り走り去っていく。
遠目にはベンチに座った地味なのだけど、どこか品のある老婆がその様子を見ていた。

老婆の顔は能面のような無表情でありつつも、明確な意思を持った目で走り去っていく少年少女を追い続けていた。
そして気がつくと私の小指は折れていた。

『嗚呼、これは夢なんだな』

そう思うと見慣れた天井があり、窓の外では配達業者が台車を鳴らしながら走っていた。

起きてから、小考。

多分、あのターミナルにいた人たち全部自分なんだなということに気づいた。様々な側面の自分がたくさん居すぎて
主人格としてはなんとも感情の整理がおいついかない。


これは朝から大変だぞ。と思った。
この感情の名前は未だに無い。

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