一片:二月十四日 夜
日付を書いたときに今日がバレンタインだということを思い出した。
よくよく考えたらバレンタインにもらった数がゼロというのは
人生初かもしれない。これもまた経験だろう。
バレンタインという言葉の由来を調べようと思い、検索をかけたら一番に余ったらしい写真の数々が出て精神を抉られたので即閉じるボタンを押す。
これもまた経験だろう。
元々収集癖のなかった私の断捨離も半分ほど終わり、
家の中がだいぶスッキリしたきがする。
これはこれで住みやすいのかもしれない。
ただ、箇所箇所に残滓は色濃く残っているので些かの混沌感は否めない。
それは二月に降る紅葉のような、違和感と今までにない感覚と孤愁が無数に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。まるでサイダーの気泡みたいだ。
とはいえ自分で決めたケジメなのでこれはこれで受け入れる。
これもまた、経験だろう。
良いことなのか、良くないことなのかわからないが
可処分時間が過分にあるため、未だ使い道が十全には見当たらない。
一日に一回はこうやって物書きをしたり、意識高い系な良さげな飯を作ることは日課にしている。
今はまずは踊るための体力を戻したい。
季節外れの紅葉ははらはらと落ちて頬を撫でる。