一片:二月十一日 昼
配達の完了通知の音で目が覚める。
無事家財のお届けもできたらしい。
薬が効いていたせいか、ぼーっとする頭のまま起床した。
やはり、歪に広いこの部屋には違和感があった。
悲しくはあれども大きくはなく、ただ胸がちくちくと刺さってくる。
裸で針山に囲まれている状態なのだろう。
一歩歩けば突き刺さる。
さて、今日はどこに足を向けよう。
口から放る紫煙はゆくあてもなく、ただただ漂って霧散する。
何の気の迷いか、1年ぶりくらいのピザを出前するものの
今の自分に食べきれるわけもなく、冷えていくピザは味気なくなるばかりだった。何がしたいんだろう。自分は。
このまま家にいるのは良くはないのだろう。
今日の予定を立てる。ただあてもなく歩くこと、歌うこと、
そして、帰りに花を買って帰ろう。
空っぽの花瓶が可愛そうだ。
今これを書いている自分はちぐはぐな服の組み合わせなのだろう。
着終わったあとに姿見がないことに気がついた。
これも購入項目だ。
不思議なもので、今まで喫茶店に価値を見いだせなかった自分が
今は居着くことができて、こうやって文章に費やすこともできている。
すでに自分の中での変容があるのだろうか。
ただ、煙草が吸えないのだけはいただけない。
もうアイスティーも飲み終わる。このあとはどこへ行こうか。
花瓶にさす花はまだ決まっていない。
今日は空が青い。ただ、気分は冴えない。
花瓶にさす花はまだ決まっていない。
思考が出来ているようで、思考は止まってる。