ドラマの台本を担当するという夢。
仙台の俳優も出るテレビドラマ。 T さんが、
「こんな本では出られません」
と去り、ざわっとする。監督も、
「うーん」
と唸っている。
ホテルの2階、エスカレーターの隣の角部屋、大会議室に集まり右往左往している。台本を直す、書き直すということにまで発展している。
自分としては、まあ仕事だしエキストラなんてそれやってなんぼでしょと思っている。
「台本、書けるじゃないですか!?」
と、鳥屋にも出てくれている若い俳優が切り出す。
「台本って演劇のだよ、それも人気ない小劇場の!?」
「だって今、そのカバンに入ってるじゃないですか!?」
「そりゃそうだよ稽古期間中だもの…」
もうその若者は鞄から台本を出している。
「これ見せてもいいですよね、いや見せてくださいよ」
監督は黙っている。自分も黙っている。シナリオライターとして食ってるわけでもない自分なんてと思っている。それにそんな仕事、制約だらけでつまらないに決まってる、決してやりたいと思う仕事じゃない。 T さんも降りたくらいだし…。
そうこうしていると監督が重たい口を開く。
「見せてもらっても…」
「ああ。はい」
じっと監督が自分の台本を読む。周りではスタッフ、出演者が静かにそれを見守る。
「おいおい何の芝居だよ、キリキリ面白いじゃないか」と、夢見る本人は思っている。この辺りが夢の面白いところ。
監督が台本を読み終わり、深い息を吐く。そしてやおら右腕を突き出し、握手を求めている。こういうとき、人は自然と手を出すようにできている。思わず握り返してしまった。
「忙しいところでしょうが、ここ三日で書き上げ、後の3日で撮り終えなくてはなりません」
「そんなの無理ですよ、バイトもあるんですから」
「そこをなんとか、いつもやっているでしょう、お金はできるだけ出しますから」
と、いつもより0の多い額を提示する。私は思わず、手を強く握り返した。
その瞬間、無理だという弱気と、自分の台本これまでの仕事を評価されたような心地がして自意識が高まり、0が増えたのを確認したところで、破滅への道に自ら歩み出してしまった…。
夢の続きは見たいような見たくないような…。