見出し画像

沖縄とお線香2「宿とラップ音」

 沖縄に住む10年以上前、まだ沖縄初心者でスキューバダイビングが目的で来ていた。当時は、LCCなど格安航空会社もなく、JALかANA、せいぜいスカイマークぐらいでまだまだ沖縄までの航空チケットがかなり高かった。3泊4日の沖縄旅行の予算11~12万のうち7万円ぐらいはチケット代にもっていかれ、慶良間でのボートダイビングは、1日3本で機材フルレンタルだと約2万5000円だったので、残り1万5000~2万円で宿泊代や食事代を捻出していた。
 当然ながら、食事代ってそんなに大きく削れないから、安く泊まれるところを探すことになる。当時は、インターネットはあっても那覇での安宿情報はまだ多くなかったので、もっぱら沖縄旅行ガイドブックで探していた。

 一度、ダイビングの後に「今夜泊まるところはこれから探して、安いとこ見つからないなら野宿します」というと、ダイビングショップの人が「那覇でもハブがいるから野宿は危険だよ」と言って、泊港の隣にある沖縄船員会館を紹介してくれた。ショップが船員会館の組合員だったおかげで、1泊3000円で3人部屋のシングルユースで泊まれた。今は組合員でなくても泊まれるそうだ。
 別の旅行で那覇に着いた日、明日朝からダイビングに行く予定で、那覇市久米の「民〇光の家アネ〇クス」(現在も営業中)に1泊した。
  部屋は個室で、マンションのようにベランダがあって、シャワーとトイレは共同、クーラーはコイン式(1時間100円)だった。

15年以上経って今年ラップ音の宿に再発見した、こんなとこにあったのか。当日は那覇の地理が頭に入ってなかった

 安さ優先で選んだが、妙に寝苦しくやっと寝つきかけた時、
パーン!パーン!
と、まるで手を思い切り叩いたようなラップ音がした。1回ならいいが、寝ようとうとうとするとラップ音で起こされる。

 今でこそ、霊とか怖くないが、当時は幽霊を信じてないのに、その手の話は怖がるという矛盾を抱えていた。
 寝たふりをしたまま、音の正体を探った。音は、ベランダのほうから聞こえる。もしかしたらベランダが隣の部屋とつながっていて、誰かがいたずらでこの部屋のベランダまで来て手を叩いているのかも。
 が、それなら足音など他の音がするはずだが、一切せず、何よりも意識が落ちそうになるタイミングで音が鳴ることに説明がつかない。そもそも、深夜に宿で他人のベランダに来て手を叩く理由がない。逆に、そんな人がいたほうが怖い。幽霊じゃない方向でなんとか理由を探そうとして、ありえない可能性まで考えていた。いたずらじゃないなら、やっぱり幽霊か。でも、電気をつけて確認する勇気はない。薄目も開けるのも怖いから、狸寝入りでやりすごすしかない。ほんとに幽霊がいたらそれこそ怖くて立ち直れない。

 しかし、その後も意識が落ちそうになると、パーン!パーン!と拍手に似たラップ音は続いて、狸寝入りは通じなかった。料金が安いのは心霊宿だからか。節約しすぎでこんなことになるとは。廊下ですれ違った他の宿泊客は、見た目から道路工事とか仕事で泊まってる感じだったが、みんな平気なのだろうか。今のところ、他の部屋から悲鳴などは聞こえてこない。
 いい加減寝ないと、明日は朝6時半にダイビングショップの人が迎えに来る。世界的に美しい慶良間諸島(2014年に国立公園に指定された)へボートで移動して、一年に一回の楽しみのダイビングなのだ。寝かせてほしいし、睡眠不足も安全上もよくない。なんとしても寝るしかない。

 で、狸寝入りのまま50分ぐらい悩んでたら、ふと
「そういえば、(今はこんなに都会で発展してるけど)那覇も戦場だったんだよなあ」
と、思ったらその後のラップ音は収まり、そのまま朝まで眠れて無事にダイビングを楽しめた。ラップ音で朝まで眠れないかもって思ったのは初めてだった。この夜のラップのことは、ずっと心に残っててラップ音や何か合図があったら、意識を向けてほしい存在のいるのかもしれないと思った。

 それ以降、記憶に残るほどのラップ音には遭遇しないままだったが、2021年1月の名護市の一軒家のゲストハウスでは、ラップ音?とすさまじい眠気に襲われた。
 泊まった和室にはカーテンの代わりに障子だったが、朝日を浴びてるのに二度寝して、初めて泊まる部屋で自宅でもありえない午前10時や午後2時まで寝てしまい、起きてもまるで睡眠薬でも飲んだかのような眠気が4~5日続いた。ただ、安心感があって、長年の仕事の疲れが取れていく感じもしていた。
 その眠気は、後日東京に帰ってからアリサさんのチャネリングで精霊や英霊たちによるDNAチェンジだと言われた(沖縄とお線香「英霊と土佐之塔」参照)。

名護市の一軒家のゲストハウス 仲尾地区の御嶽がある森を望む。強い眠気の原因は部屋の先にあった拝所があったからかもしれない

 眠気と同時期に、今までのラップ音とは違った天井のドン‼、床の間のバン!という謎の音がした。それも昼間に叩き起こすかのようなタイミングでだ。ちなみに1月でコロナの時期だったのででかい一軒家で宿泊客は俺だけだった。
 天井のドン‼は、完全に頭の真上だし、床の間のバン!は朝8時の完全に明るくなってからで、その音で見事に起こされた。あと、宿の隣の敷地の駐車場からはバシャーン!というドラを叩いたような金属音も聞こえた。 もちろん、全てが不思議な音とは限らないし、駐車場の音は廃車とか粗大ゴミもあったので物理現象の音の可能性も高いと思った。

 だが、10年以上前に那覇の安宿でラップ音にビビってた時と違って、まったく怖がらず、東京から持ってきた沖縄線香を上げてみるとピタリと静まった。宿のオーナーの女将さんが同郷だったせいもあって、初日に「お線香上げるので香炉貸してください」と言うと、すんなり貸してくれた。そんなお客さん滅多にいないだろうけど。オーナーの一家は北海道からの移住組だったけど、理由も追及されずに貸してくれた。

 香炉を借りていたので、ラップ音がした後にお線香を部屋で上げておいた。旅行中にお線香を上げるのは、ホテルでは禁煙ルームなのでしないけど、久高島の民宿で仏壇の間で寝た時などに上げている。一応、那覇で神人のおばあちゃんから簡単なやり方は教わっているから慣れたものだ。

  ラップ音で起こされた日の昼間に、宿の女将さんに1階のリビングで
「ここは、ドォン!とかバン!とかなかなか変わったラップ音がしますねぇ。天井とか、廊下かと思ったら床の間から音がしたので、たぶん、お線香上げてほしいんだろうから、上げておきました」
と宿の女将さんに明るく話すと、
「もうっw6年ぐらい宿やってますけど、ラップ音とか言うお客さんは池〇さんが初めてですよ(笑)」
と笑われたが、その直後、泊まっている2階の和室から
バン!!
と、音がした。すごいタイミングだった。まるで
「嘘じゃないぞ!」
と言わんばかりだった。あれは、朝8時に起こされた床の間の音だ。
2階の俺の泊まってる部屋を指さし、「ほら」と言うと、女将さんは
「ほんとですね・・」
と、驚いていた。
   その後も会話していると、隣の敷地の駐車場から昨日聞いたバシャーン!との銅鑼(ドラ)を叩くような音がして、女将さんはお風呂場の窓から駐車場を確認しに行った。
「誰もいないです・・」
「そんなに気にしなくていいですよ。僕も高知の実家は古い木造なので、廊下が湿気の関係で夜中にボンッ!って鳴ったりするんですよ。全部が全部不思議な音ではないですから。物理的に鳴っている音もあるので。どっちにしろ、お線香上げてほしいんのならもう上げたから問題ないですよ」
と説明しておいた。

 これらのラップ音というか謎の音は、お線香を上げると鎮まって、二度と鳴ることはなかった。そして、1月24日に刻字の展示会のために那覇市に戻った時に、沖縄でお世話になっている赤田さんに床の間の謎の音について話すと、
「沖縄には、床神(トゥクシン)といってね、床の間に神様がいるのよ。家の男の人、大黒柱の男性を守る神様がいて、ちゃんとお酒とかをお供えして祭るものなのよ。ヒヌカン(火の神)ほど有名じゃないけど、検索してみて」
と、床の間の神様のことを教えてくれた。
ああ、その神様だろう。朝8時にバン!と床の間で大きな音出したのは。
この宿(ゲストハウス)は、県外からの移住者が経営しているから床の間の神様を知らないんだろう。沖縄に1年半住んでた僕ですらこの時初めて知った。那覇市で借りてた部屋には床の間なかったしなあ。
 
 結局、この宿ではお線香を初日にリビングで、翌日以降に泊まってる和室、屋上、最終日は移動した3階の部屋で計4カ所で上げておいた。理由はわからないけど、なんとなく上げたかった。屋上に至っては、なぜか海に向かって机とイス1つがきれいにセットされていて、まるでここでお線香上げてくださいといわんばかりだった。

天上でドン!となった屋上へ上がるときれいに掃除されていて、机とイスが羽地内海に向かってセットされていた。


 この宿を紹介してくれた画家の先生からは、「あなたは、その土地に元々いた存在と非常にうまくやったわね」と、教えてもらった。特にうまくやったという意識はないが、すごく居心地もよく、初めて泊まったとは思えないぐらいリラックスできた。東京の自分の部屋よりもよく寝ていた。
最後の1泊を除いて他にお客さんが来なくて、1人で一軒家を独占できたのもあるんだけど、初めて泊まった宿で10泊もするのは、ほんとに何かご縁が会ったんだと思う。
 

 あとで、宿のオーナーの奥さんに聞くと引っ越して1年目は毎月1、15日は火の神様(ヒヌカン)にお線香を上げていたが、煙で娘さんにぜんそくの発作が出たので、それ以来上げなくなったそうだ。
「だからかぁ、お借りした香炉の灰が固くなってて全然使ってないなぁと思ったんです」
「初日にリビングで池〇さんが上げたお線香は煙少なかったですよねぇ。煙が少ない沖縄線香もあるんだなあって驚きました」
「沖縄線香は、何種類かあって値段と性能が比例してるんです。一番高い読谷線香は、火が付きやすく煙も少ないんです。新垣線香所の沖縄黒線香は標準的で、値段も煙も真ん中です。中国製のは一番安いけど、煙は多いし湿気りやすく、なにより色も長さも違うのでオススメはしないです。なんていうか、海外で似せて作ったパチモンですね。実際、中国製のは、沖縄から宅配便で東京に送ったら湿気ってて使えなかったんです」
「お線香にも違いがあるんですねぇ」

「リビングで上げたのは新垣線香所の黒線香で、沖縄から送ってもらったのを持ってきたんです。泊まった初日に画家の先生に部間権現に連れて行ってもらってお供えしたんですが、風が強くて火がつかなかったのがあったので、せっかくなので持ち帰って上げたんです。僕のお線香は、ちょっと工夫しているので、波動が上がってるのかもしれないです」

 宿の奥さんは、僕に車を貸してくれた画家の先生の絵画教室に通っていて、僕が画家の先生のお客さんだということで色々と親切にしてくれた。滞在中、画家の先生とは付き合いが長いのですかと聞かれた。
「会うのは2回目ですね。去年の2月に偶然知り合いに先生のアトリエに連れて行かれて」
「えっ、そうは見えないです。もっと昔からのお知り合いかと」
「あっ、会うのは2回目でも電話で色々相談してますから」
 会うのが2回目なのに、北部滞在中に車を練習のために1週間以上貸してくれて、部間権現などパワースポットにも連れていってくれてるのだから、破格の扱いだ。

 東京に戻って、同期生のチャネラーのアリサさんに画家の先生の親切について質問すると
「人が優しくしてくれることに理由を探さなくてもいいんですよ、と言っています。彼女は愛が深い人で、何かしてあげたくてしたことだったので、ハートを開いてありがとうと言うだけでいいですよ、と言っています」
 との回答だった。
 確かに、画家の先生はお礼はしなくていいとよく言ってくれてる。沖縄に行くとありがたいことに親切をしてもらうことがほんとに多いので、遠慮なく好意は受けることにしている。いつかどこかでお礼が返せればいいと思っているし、沖縄に住むうちにそれが沖縄に残っている「分かち合い」の精神の一つでもあると後で気づいた。
 後に、画家の先生も僕とのご縁で陶芸家の島武己さんの形見分けをもらうことができたので、きちんと親切や好意が返っていると思った。

続きの記事:沖縄とお線香3「英霊と土佐之塔」|池さん (note.com)
前の記事沖縄とお線香1「神人の上原先生、神様の合図」|池さん (note.com)
沖縄関連記事:陶芸家 島武己さんの話|池さん (note.com)
沖縄とお線香「夕起子さんとの再会」|池さん (note.com)
龍の話「龍が体内に入る」(ちーちゃんとクーちゃん前編)|池さん
龍の話「クーちゃんの帰還」(ちーちゃんとクーちゃん後編)|池さん

沖縄の話「首里城火災とS川(前編)」|池さん (note.com)
沖縄の話「首里城火災とS川(後編)」インフィニーのチャネリング「首里城の記事、霊的な結婚」|池さん (note.com)

いいなと思ったら応援しよう!