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真骨彫ティガのリペイント方法を解説します!【塗装】

こんにちは アシム(ashimu_poke)です

先日、真骨彫ティガパワータイプをマルチタイプにリペイントして欲しいと依頼を受けました
その製作工程をご紹介します



塗装の流れ

単純に要約すると、
分解する➡︎洗う➡︎紫と赤を塗る です
以下に書いてあることは一見複雑そうに見えるかもしれませんが、上の内容に補足を入れてるだけのようなものなのでシンプルに捉えていただけたら幸いです

なお、この記事に書いてあるのはパワータイプから中村マルチへの製作過程ですが、応用すれば権藤スカイをはじめとする他の未発売形態にリペイントをすることも可能です
真骨彫ティガをリペイントしたい人の参考になれば幸いです




準備

【用意するもの】

①真骨彫パワータイプ本体
②資料
③ドライヤー
④塗料(ウレヒーロー)
ツヤ消し赤・青・白、強化剤、薄め液
⑤マスキングテープ
⑥中性洗剤


・資料
今回の作業ではモールドの無い腹部などを塗り分ける必要がある為、非常に重要です
講談社コクリコに連載されている記事の画像は無料で公開されている上に高画質なので参考になります
是非チェックしてみてください


・塗料
胸部・腹部・腰部に使用されている軟質素材に塗装を追従させるため、柔軟性の高い塗料であるウレヒーローを使用しました
癒着を軽減し塗膜強度を高める専用強化剤は、ウレヒーローの公式通販サイトでのみ購入できます




分解


ドライヤー、もしくは熱湯で温めながら慎重に分解します

画像ではバラしてませんが、股関節と肩のボールジョイントを外した方が作業しやすいです

【股関節の処理】
股関節パーツは腰部と干渉しやすく、塗膜が剥がれやすいので、ヤスリで表面処理します

点滅しているところはめちゃくちゃ干渉するので、低番手のヤスリでお尻を削り、クリアランスを確保しました
#2000まで全体をヤスり、塗装を食いつきやすくします




洗浄

食器用の中性洗剤を入れた水に
分解したパーツを一晩漬けておきます

一晩経ったらブラシでゴシゴシ
ダイソーの洗顔ブラシを使ってます





全体の塗装

ウレヒーローを塗布します

塗り分けを図にしたものです
マルチタイプへの塗装では紫色を塗るだけでなく
銀色の部分に赤色を塗り足す必要があります

パープルの塗装には赤・青・白を混色したものを使用します
調色レシピは斎藤塗料株式会社公式アカウントのウレヒーロー調色配合「青ムラサキ」を参考にしました
レシピ通りに混ぜただけでは暗い印象になってしまうため、赤少なめ・白多めに混色すればティガらしいパープルに近づくと思います
尚、レッドのラインはレッドをそのまま使用します


パープルは大量に使用するためスペアボトルに保管します


塗装にはエアブラシがおすすめです
筆で塗装することも不可能ではないですが、可動に適した平滑で薄い塗膜を実現するにはエアブラシを使用するのが最も手っ取り早いです

塗装する直前の段階で専用強化剤を混ぜるのですが、入れすぎに注意です
ほとんど入れないくらいのつもりで丁度いいと思います


最初にパープルのラインを塗装します
曲線が多いので、0.4mmや1.0mmなどの
細めのマスキングテープを使用するのがおすすめです

連続的に途切れないラインにするため、

リペイントしたいパーツをリペ済パーツに付ける

リペ済パーツのラインに合わせながらマスキング

ラインが途切れないようにマスキングできたらパーツを外して塗装する
……を繰り返します

ライン調整の際、膝から塗り進めるとやり易いです
膝➡︎スネ➡︎太もも➡︎股関節➡︎腰部➡︎胸部➡︎腹部➡︎腕
の順番で塗装しました
後述しますが、肘のみ特殊な処理を施す為、最後に塗装します


レッドのラインまで塗装が完了した様子です

悪くは無いんですが、腹部の紫の範囲をもう少し大きくしたいと思ったので、下の図のように追加で塗装しました

②塗装追加の範囲を細切りテープで調節
③塗り終えて紫の範囲が大きくなった様子

図のように、塗装が足りないと思った範囲は塗り足して調整し、ミスした所や塗りすぎた範囲をミスターカラー薄め液で拭き取りながら調整するのがコツです
※やりすぎると元の塗装を剥がしたり、ABSパーツの場合は割れたりするので注意

【赤成型色の透けが目立つ場合】
紫を塗ると製品の銀塗装が赤成型色を隠蔽しきれず透けて見えるのが目立ち、カッコ悪く見えることがあります

プロテクターと紫ラインの隙間に
赤成型色が透けて見える

目立つ場合はミスターカラーのガンクロームやガイアカラーのEXシルバーなど、“バンダイのシルバーに近い”と言われている塗料でリタッチすると良いでしょう



肘の塗装(POM焼付け)

肘の一部にはPOMという素材が使用されており、普通に塗装するだけでは簡単に剥がれてしまいます

1年前に塗装した中村マルチ
POMの部分に塗装ができず赤成型色が露出している

これを打開するため、「POM焼付け」と呼ばれる方法を用いて塗装します
簡単に説明すると、POMに特定のサーフェイサーを吹き、それを熱すれば通常の塗膜強度で塗装できるというテクニックです
プロモデラー林哲平氏のツイートを参考にしました


この塗装を実践するには、肘を分解します

露出する下のジョイントのみを分解する

金属ピンで接続されているため、取り外す必要があります
この作業をする際、パーツを破損させる危険性が大きいため十分に注意し、慎重に作業しましょう


予めパーツを熱しておき、金属ピンの径よりも少し細めのドリルを装着したピンバイスを差込み
垂直に力を加え金属ピンを押し出します

金属ピンの分解しやすさには個体差があり、なかなか押し出せないこともあると思います
その際にはシリコン潤滑剤を用いてピンの摩擦を軽減するのが有効かもしれません

肘を分解した様子
金属ピンは無くしやすいので注意
取り外したジョイントをヤスリで削り、クリアランスを確保しつつ塗装の食いつきを良くします

タミヤのスーパーサーフェイサーを吹き、
それをドライヤー(ヒートガン)で1分ほど加熱します

Amazonにて1500円程で購入した
ヒートガンで熱しています

紫を塗装し、組み立てれば完成です
気をつけるポイントとしては、塗装済み肘パーツに塗膜分の厚みが発生してしまい、金属ピンを挿し込む際に大きな負荷がかかるので、肘を組む前にピンの刺さっていた穴をドリルで拡張しておくと良いでしょう

可動時に塗装が剥がれるのを防ぐため、
ジョイントにシリコン潤滑剤を馴染ませておきます




完成

 S.H.Figuarts 真骨彫製法
ウルトラマンティガパワータイプリペイント
マルチタイプ(中村浩二ver.)

無可動スタチュー原型:成田穣








非常にカッコよく塗装できたと思います
バンダイからは真骨彫グリッターティガが権藤体型で発売されてしまい中村マルチの発売が危ぶまれているので、このリペイントには大きな価値があると思います



ウレヒーローの難点・弱点

軟質に追従できるという唯一無二の特性を持ったウレヒーローですが、問題点もあります
3点ほど説明させて下さい

その①【癒着がある】
ウレヒーローの塗膜と触れ合うパーツは癒着を起こし、張り付いてしまいます
専用強化剤を添加すればある程度は軽減されますが、軟質素材に塗装したウレヒーロー塗膜同士が触れ合うとどうしても癒着が発生します
真骨彫ティガで言うと腹部と腰部の触れ合う部分に癒着が発生しやすいです

【今回の作例で施した対策】
腰部のフチのウレヒーロー塗膜を拭き取り、塗膜同士が触れ合わないように対策しています

さらに腹部の両脇腹に水性トップコートを吹き、乾燥後にシリコン潤滑剤を塗ることで最大限の癒着対策を試みています

この対策にはデメリットがあり、軟質追従力が水性トップコートの塗膜に依存するため、微細クラックが発生します
しかし塗装範囲を限定したため、目立たない程度に抑えられたと思います
腹部の軟質可動の際に大きくたわむのが中心付近に限られるため、大きく可動しない箇所へ局所的にトップコートを塗布する分には綺麗に仕上がります

微細クラックの様子

詳しくは斎藤塗料株式会社のブログツイートをご確認ください

その②【製品塗装に比べて彩度が落ちる】
権藤マルチとの比較を見て頂ければ分かると思いますが、ウレヒーローを混色して作った紫ではどう頑張ってもバンダイの塗装と同じ彩度で塗装できません

⇧権藤             中村⇧

これらの特性も斎藤塗料株式会社公式ツイッターで触れられているので、詳しくはそちらをご覧下さい

その③【製品塗膜よりも強度が劣る】
これはウレヒーローに限った話ではありませんが、リペイント品が製品レベルの塗膜強度を持つことは難しいです
強化剤を添加したウレヒーローの塗膜は他の塗料と比較して相当タフですし、その特性を最大限発揮できるよう塗装したつもりですが、完成品フィギュアの販売元がその製品の特性に合わせて工場で塗装した塗膜と比較すると強度は劣ります
あくまでリペイント品は製品レベルと比較するとデリケートではあるので、ノンストレスにガシガシ遊ぶのは難しいということです

尚、TPEへの塗装については斎藤塗料株式会社公式ツイッターで詳しく記載が有るのでそちらをご覧ください

これらの問題に対する改善案や打開策があれば是非コメントを頂きたいです



権藤マルチ➡︎権藤スカイ

ここまでの内容を応用すれば、あらゆる未発売形態をリペイントで再現することができるはずです
併せて、1年前に塗装した権藤スカイタイプのリペイント時に工夫したポイントをご紹介します

その①【既存の紫を残さない】

ウレヒーローの紫は既存の紫よりもトーンが落ちるので、赤色部分を紫色に塗っただけでは色の違う紫が2色隣り合うことになり、
違和感があります
既存の紫塗膜の上にも塗装するのがベターでしょう

その②【銀色を塗り足す】

マルチタイプの時に赤色に塗装されていた点滅部分は、銀色に塗る必要があります

しかし、ここでウレヒーローのメタリックシルバーを使用すると、粒子感が強すぎて違和感が生じます

メタリックシルバーを使った様子
製品のシルバーよりも粒子が大きい

そこで、シルバーの塗装にはウレヒーローメッキシルバーにツヤ消しクリアーを混ぜたものを塗装することにしました
メタリックシルバーよりも粒子感がマッチします

その③【後頭部の分解について】
頭部パーツと後頭部パーツは接着されていますが、取り外すことが出来れば塗り分けが容易になり作業効率が上がります
しかし、リスクがあります
熱湯かドライヤーで温めて取り外すのですが、個体差が大きく、外しやすい個体とそうでない個体があります
大人しくマスキングで塗り分けた方が、
かえって効率的になる場合もあるので注意です

23年11月再販分のこの個体は
後頭部の接着が強力で
取り外そうとしたらPOMのダボがねじ切れました


その④【余ったゼペリオン光線エフェクト】
これは余談ですが、スカイタイプにリペイントする際ゼペリオン光線エフェクトが余るので、依頼者様とも相談し、パワータイプのゼペリオン光線エフェクトに塗装しました

光線はガイアカラーの蛍光オレンジ
赤はウレヒーローのレッド
銀はガンクローム

真骨彫のパワータイプに換装できるのか試していないですし、アクター骨格から造形する真骨彫製法のコンセプトとミスマッチであることをご留意ください

完成した権藤スカイは非常にカッコよくできたと思います
画像はテスト時に野外で撮影したもので、
お気に入りです


頭部のリペイントについて

「真骨彫ティガのリペイント方法を解説」とまで記事タイトルに書いてしまったので、Twitterなどで散見される、
・目を電球色に塗装する
・覗き穴の形を追加塗装で表現する
などのリペイントについてもご紹介します
別記事にて、自分なりのアイデアをぶつけた作例を紹介しています
ちなみに依頼品とは関係無く、個人的に塗装したものです
良かったらチェックしてみてください
短いのでサクッと読めます





以上が、僕から提示できる真骨彫ティガのリペイント方法です
長々と書きましたが、おもちゃ塗装の世界に「これが正解! 」とするものはありません
ここに書いてあるのはあくまで1つの可能性に過ぎません
もしこれを読んで真骨彫ティガのリペイントやおもちゃ塗装に興味を持ってくれたら、これをすべて参考にしても良いし、できる範囲で実行するのも良いです
おもちゃ塗装は、それ自体がとっても楽しいです
愛を持って塗装された作例はそれだけで唯一無二の価値を持ちます
是非、塗装にチャレンジしてみてください!

おわり

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