最終盤のメンバー限定配信などについて

アシキchではメンバーシップがあり、メンバーシップの特典として「終盤のランクマッチの配信」をメインコンテンツとして据えている。

昨今、ランクマッチ終盤になるとそこそこの頻度で「終盤のランクマッチの試合をメンバー限定コンテンツ≒有料コンテンツとして配信することの是非」を問う声を見かける。実際には数は少ないかもしれないが、自分が話したいのでそこそこ問題視されている内容だとして、話を進める。

そもそもポケットモンスターというゲームの性質、そのあり方などを問う話題になりかねないのでこの記事においては「使用しているパーティの情報を他者に知られることで、自身の最終的な実績が貶められる可能性がある」ゲームだと定義する(*1)。

ということで、『終盤のメンバーシップ限定ランクマッチ配信』の是非を問うていく。メンバーシップとは、Youtubeのサービスの一つで、課金することで特定のチャンネルの追加コンテンツにアクセスできるというものだ。要は、課金をすることでより高度な情報を知ることができるという形態で、ポケモンを専門とするYoutubeチャンネルの多くでは昨今、メンバーシップ限定コンテンツとして終盤のランクマッチ視聴の権限を掲げるチャンネルが多い。(これも実際に、相対的には数が少ないかもしれないが、自分が取り上げたい話題なので数が多いものとして話を進める)

先に、なぜこのようなチャンネルが問題視されるかという論点に触れておくと、ポケットモンスターというゲームがその性質上、使用しているパーティの情報を他者に知られることで、自身の最終的な実績が貶められる可能性があるゲームだからだ(*1)。実際に、ポケットモンスターのランクバトルやレーティングバトルにおいては、終盤の“オープン状態での”配信について、上記の問題を争点としてたびたび小競り合いが行われてきた歴史がある。

特に、画期的な構築システムを使うプレイヤーで、かつ界隈に影響力のある者が配信者の対戦相手として出演した場合、配信中に対戦相手自身が試合内容を公開しないように交渉したり、配信後に自身の構築を晒されたことを悲痛に(ないしはヴィラン的に)訴えることで配信のアーカイブを削除させるように促させたり、基本的には「偶然配信に出演し構築を公開されてしまった者」を守る風潮があったように思うし、彼らに関しては現代においても、一般論として保護されるべきものだと扱われているように思う。

要は「終盤に構築を晒されるのってかわいそうだよね」という意見が、界隈全体における基本理念だ。

それを踏まえて、昨今の「終盤のランクマッチの対戦を、メンバーシップ特典として有料コンテンツで配信する行為」の是非を考えていきたい。

終盤のランクマッチの対戦を視聴したいという気持ちでメンバーシップに加入する者の目当ては、上位帯での対戦内容を見ることで得られる様々な情報であることがほとんどで、配信者に対する支援が目的の者は少ないように感じる。

(Youtube全体を見た時に、一般的にメンバーシップに加入する人間は、後者が目的であるとデザインされることが多い)

ポケモンを主体にするYoutubeチャンネルのメンバーシップに登録する者たちが求めているのは、対戦相手が使うポケモンやパーティの情報、つまりその試合における対戦相手が、公に晒されるのを避けたいと思っている情報だ。そしてメンバーシップ配信で公開範囲を絞ることで、対戦相手の情報を保護するという目的は果たされている。

……と、現段階では定義されているからこそ、メンバーシップ限定コンテンツで終盤の対戦を配信することを現状は是とする見方があるのだろうけれど、実際には、その逆だと自分は感じている。

まず一つ、今までの、“終盤の対戦においてオープン状態での配信で構築を晒されるリスクを負った者たちに用意されていた「配信者に選出時間中に交渉をして、自身の構築が晒されないように配慮してもらう(*2)」「配信者の潜るタイミングを見て、マッチングをずらす」といった選択肢”が、メンバーシップ限定配信が主となると奪われてしまうのだ。理屈上、終盤配信を行うチャンネル全てに「金銭を支払って」確認をすれば防ぐことはできるが、そんなことは現実には起こり得ない。

そして第二に、「自身の構築が、他者に晒されたかどうかを確認することが難しい」という問題がある。自分としてはこれが非常に厄介だと感じているが、有料メンバーシップのコンテンツはどのチャンネルがどの程度の規模で行っているかの実態が掴みづらく、オープン状態での配信をされるのに比べて、どれだけ自身の構築情報が晒され致命的な状態にあるのかを自覚できないという問題が生じる。“人の配信に映っちゃったから、別案の構築を使おう(あるいは、今の構築を修正しよう)”という発想に切り替えることができず、気づかぬうちに自身の本来得るはずだった勝利点を敗北点に切り替えられてしまい、その実際的な原因に思い当たることが事実上不可能なのだ。

これは、ランクマッチをプレイヤーの実力の指標とする界隈においては、非常に不誠実であり、競技としても娯楽としても、健全ではない状態に陥っていると自分は感じている。

くわえて第三に、メンバーシップ加入者に特典として与えられる“高度な情報”は配信者自身ではなく対戦相手からもたらされるものであり、配信者側はむしろ自身の使用構築に関して得た情報の口外を禁止することで一方的に自身に利益をもたらし、他者に害を被らせているともいえる。

ゆえに、今後ポケモン対戦をメインにしたYoutubeチャンネルでメンバーシップ特典として終盤配信を行うことは避ける風潮になるべきだと思うのだが――そもそもこの「終盤のメンバーシップ配信」についての話題で保留にしている問題がいくつかある。

その最も大きなものが、“メンバーシップ配信を行うのは対戦相手への配慮ではなく、自身をスナイプ・ゴースティング行為から守るため”という見方だ。

ポケモン対戦では、構築の内容を知られることはもちろん、毎ターンの技選択を知られることが途轍もないリスクになり、“構築を知られた相手にスナイプをされる”ことや“毎ターンのプレイングをゴースティングで確認される”ことで、対等にプレイをすることは不可能になる。

なので、終盤の重要な時期にランクマッチを配信したいが、ゴースティングは避けたい…という逃げ道で用意されているのがメンバーシップ配信であるという見方もあり、多くの配信者自身はむしろこちらの理由を頭に据えているのではないだろうか。実際、自身のチャンネルではそちらを理由に、終盤のランクマッチ配信はメンバーシップで行っている。

すなわち、先ほどの「第三の問題」に挙げたような、自身の情報を他者から守りつつ利益を得ることを自覚的に行っている可能性が高いということで、その場合、善性に訴えるようにメンバーシップ配信がもたらす各種の弊害を論ったところで意味がない。


この辺りまで7月ごろに書いた文章なのだが、長々と語った結果が「終盤のメンバーシップ配信が増えている今の流れは悪いことだけど、自分を守るためにやっているのだから仕方ない」なのは、あまりにも味気なさすぎる。

自分はメンバーシップの配信者としてもプレイヤーとしても多くの影響を与えない範囲にいるからわりとどっちでもいいけど、真面目に競技としてポケモンをやっている人たちは、もっと大声で嫌がったほうがいいんじゃない?って話なんだけど、意外とプレイヤーの人たちは嫌じゃないのかな、メンバーシップで自分の構築が晒されて、それが対策必須構築みたいな情報として伝播されたり、“自分たちのような”上位プレイヤーの構築情報を目当てにして、他人がメンバーシップで小銭を稼いでいる事実。

大きい声で嫌がる人が多くいると、自分は健全ですよ~ってスタイルでやっている人たちは終盤メンバーシップ配信を避けるようになるはずだから嫌な人たちは嫌がり得だと思うんだけど、これが全然受け入れられてるんだったら、いない敵といない戦いの話を長々としていたことになり、ウケる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?