コーチングと言語化
“ランクマで三桁を達成することを目標としたDiscord窓”の設立が話題になっている。
ランクマッチにおける最終三桁のラインはカジュアルなプレイヤーにとっての一つの指標だ。自身はランクバトルでの最終二桁順位は未達成のため二桁を継続的な目標に据えつつ、置きに行く時の最低目標としてここを掲げているものの、結果的に達成できないシーズンもちらほらある(*1)。
そんな三桁順位を目指すプレイヤーたちに対し、多くのプレイヤーが「試合数を稼げば簡単に達成できる」と言っているのを見かけたことをきっかけに、常日頃から考えていた“ポケットモンスターのコーチング”と“上位プレイヤーの思考の言語化”の二点についてを中心にこの記事では取り上げていく。
まず、「試合数を稼げば三桁は達成できる」という意見だが、これはあまりにも無責任で現実を見ていない発言だ。この発言の意図は複数あり、試合数を稼げば自身の反省点が見えてくるだろうということや、勝率が五割を超えればレーティングの仕様上順位が無限に上がり続けるので最終的に三桁に辿り着くということなのだろうが、こちらの画像を見てほしい。
シーズン内に1ROMで300試合行い、勝率五割を“優に”超えている結果だが、シーズン22においては最終日の二日前の時点でこの戦績では15000位だった。このことから、勝率五割を維持して最終三桁を達成することのあまりの非現実さが理解できると思う。
(実際に、勝率五割で三桁順位に行くためには何試合必要なんでしょうか)
これは単純に“アシキchが弱すぎる”という話でもあるが、三桁に到達することすらできずコーチングやコミュニティを求めている人は“アシキch以上に弱い”人たちなので、ただ試合数をこなして最終三桁を目指すという方法はあまりにも非現実的で、“勉強すれば誰でも東大に入れる”というのと同じようなアドバイスだ。このような意見は、コーチとして落第だ。
逆に、理想的なコーチとはどんなものかというと、『最小』の試合数で『最良』の結果を達成させられる人だろう。500試合で三桁に導くコーチと100試合で三桁に導くコーチであれば前者のほうが明らかに劣っているし、100試合で三桁に導くコーチと100試合で二桁に導くコーチであれば後者のほうがはるかに優れている。
コーチングをする側として真剣に親身に検討した上で根本の話題に触れている人がどの程度いるのかは定かではないが、もしも真剣に検討したうえでの三桁に達成するための方法が「試合数をこなすこと」なのであれば、上位プレイヤー自身も、自身の勝因について正しく分析・言語化できていないのではないだろうかという疑問が浮かぶ。
ポケットモンスターは、他の競技的なゲームと異なりトッププレイヤーと下位プレイヤーどころか、幼児とトッププレイヤーがまったく同じプレイングをすることが可能だ。これはFPSやMOBAのようなゲームとは明確に異なる部分で、さらに言えばこのゲームはターン制のコマンドバトルなので全てのターンの行動を筋道立てて言語化しアウトプットして他人に伝えることが可能だし、それを聞いた人間がまったく同じ操作を再現することが容易だ。
将棋やチェスなどのボードゲームも同じようなことが言えるが、一ターンに取れる行動選択が六通り(テラスタルを含めても十通り)しかないポケモンというゲームにおいては、より現実的である。
そして、それを行う場としてよく見かけるのがシーズン終了後の構築記事にある「構築経緯」や「基本選出」の欄で、ポケモンSVに入ってからは特にこの項目を立ててくれる方が非常に増えていてとてもありがたい話なのだが、一部の方の記事ではこの項目が非常に拙いことがある。
選出は相手に応じて臨機応変に←いやその臨機の仕方を書いてくれ
これも極端な例ではあるが、丁寧に文章量をかけた記事を読み解いても実際に選出画面に直面すると対応しきれないポケモンが現れることが多い。ポケモンは自身の行動は各ターン六通りしかないが、対戦相手の使用ポケモンの幅は百通りを超えるのでそうなると将棋やチェスの専門書でも不可能なように逐一カバーしきれない場面がでるのも致し方ない。
(レギュレーションHにおける使用率101番目はガラルマタドガスなので現実的に百通りを余裕で超えている)
……と割り切るのは簡単なのだが、構築単位で百通り以上のポケモンをカバーできていないのであれば仕方ないものの、実際にはそれらのポケモンを使用者は対応可能なものとし、その構築で勝利しているからこそ結果が伴っているはずなので、そこまで含めた言語化が可能なのではという疑問が、常々ある。
いわゆる「基本選出」では無理なポケモンに対して、系統別に対応方法をある程度示すことができるのではないだろうか。
当然ながら「ポケットモンスターが上手であること」と「日本語が上手であること」はまったく別の能力であるため、上位のプレイヤーの記事が必ずしも誰しもに読み解きやすいものになっているわけではないと長年の経験上割り切ってはいるものの、共通部分に該当するプレイヤーたちは現状よりも深い言語化ができるのではないかと期待していると同時に、なぜそうしないのだろうという疑念を常々抱えていた。
これに関し、自身の従来の考えは「具体的に完璧な言語化を行ってしまうと自身のコピーを量産することになり自身の価値を貶めてしまうため避けている」のだとばかり思っていたが、まさに今、現在進行形で考えを改めつつある。
というのも、ある専門分野について書かれた資料があった時、単純に「文章読解能力」だけがあるのでは、その分野で「実際に経験がある人」よりも精読で遅れを取るということだ。
要するに上位勢の記事は上位勢にしか理解できないという救いのない解釈。
実際、今回の窓の話についての話題を追っているうちに「五桁で停滞しているので環境に多いカマスジョーの対策を教えてくれ」みたいな発言を見かけることもあったが、上位勢はそもそもカマスジョーとシーズンを通して戦っていないことすらありうる。
つまり根本的に、やっているゲームが異なり、抱えている問題が違うのだ。
だとすれば、上位の記事を読み解いて理解を深めたと思っても、それが通用しないということは十分にありえる。サッカーの専門書を読んで野球に挑むようなもので、それも専門書の質が高ければ高いほど表面上に共通する部分が出てしまうので、相互に正しくアウトプット・インプットを行っているのに中途半端にしか結果が伴わないという矛盾が生じうる。
ここまできて最初の問題に帰着すると、三桁を目指すプレイヤーに対し多くのプレイヤーが「記事や配信で勉強して試合数をこなせば普通に行く」と言っているのも、やっているゲームが異なるからとも言える。
そんな彼らもスタートはスパボ級のはずで、五桁はともかく四桁帯での対戦を経て三桁や二桁に達しているはずなので、やはりどこかで相互理解の不足はあるのだろうけれど、それでもこの解釈が一番無難で平穏だ。
独り言の結論が無難で平穏なところに落ち着く辺り、老化を感じる。
この記事に「最終三桁になるためのヒント」を得るために来た人がいたら可哀想なのでタメになることを書いておくと、ビギナー級のROMから始めるのが一番効率がいいと思う。
具体的に検証したわけではないが、ポケモンSVのランクマッチではシーズンが切り替わるごとに内部レートが1500になり、それは表面上のランクがスパボ級であろうとモンボ級であると変わらないみたいな感じなので、ビギナー級のROMから始めることで弱い対戦相手から比較的容易に勝利数を稼ぐことができる。
上位勢の勝敗数報告ツイートで極端に試合結果が偏っているものの一部分ではこの方法が使われていて、毎シーズンTNを変えている一部のプレイヤーもこの方法で序盤のレート稼ぎの手間を省略しているのは紛れもない事実として存在する。
もちろんこの方法でも最終日付近であると3~4敗程度でマスボ級に到達しても1000位~2000位程度にはなるが、4000位~10000位などで停滞することが多いであろう三桁目標者たちには有用な解決策になると思う。
カマスジョーみたいなのとは当たるから、2シーズン目以降の強い構築を真似できるシーズンにやるのがおすすめ。