サンタクロースは本当にいるのか?

僕は小学生じゃないのでサンタクロースが本当はいないことは知っているし、こんなことを軽率に言うと公認サンタクロースの話を持ち出してくる面倒くさい大人がいることも知っているけれど、今回疑問に思ったのはサンタクロースが本当に「居る」のかではなく、サンタクロースが本当に「要る」のかということだ。

サンタクロースは、クリスマスに子どもがプレゼントをお願いし、それを親(あるいは近しい大人)が届けることで成り立っている虚構なのだけれど、この文化って本当に要る?

子どもの頃、自分は小学校低学年ぐらいまでサンタさんからプレゼントをもらっていたような気がする。正直、いつサンタさんが来なくなったのか覚えていないのだけれど、周りの子どもと比べて、姉がいる分少し早めにサンタさんが来なくなったと思う。

その時、サンタクロースの真実を知って思ったのは「どうして自分をずっと騙していたのだろう」ということだった。サンタクロースは、家族どころじゃない国家単位で、子どもの目のつくところでは実在することにされている大がかりな嘘で、そんな嘘が存在することが、子どもの頃の自分には怖かった。

まあ、そんなことは当時は考えていないのだけど……。

だけど、基本的には嘘という罪悪で成り立っている文化を、継続する理由って何があるんだろうとは思う。子どもはいつか全員が騙されていたことを知るし、気づいたことと引き換えにプレゼントは貰える数が減るし、大人は罪を背負いながら、余計にプレゼントを用意しなくてはいけない。

この話は昔からされているようで、同じような疑問を抱えている人の意見を見てみると「イベントだから」「そういうものだから」という曖昧な解釈が多く、参考にはならなかったが一つだけ見るべきところのある見解があった。

サンタクロース文化で大事なところは「クリスマスにプレゼントがもらえること」ではなく「よい子にしているとサンタクロースが来てくれる」という部分だという意見。

要するに、プレゼントを貰える権利と引き換えに、子どもによい子にしているように促すことができる=悪いことをした場合、サンタクロースが来なくなるという脅しが教育に効くという意見だった。

自分で子育てをしたことがない以上、この辺りの教育的な効果に関しては実感する機会がないのだけれど、一理はあると思う。だけど、一理だけじゃない? 自分のことを振り返ってみると、「12/24のプレゼントのために、1/1からずっといい子にし続ける」なんてありえないと思う。この教育が効果をもたらすのは、12月に関してだけだ。

逆に、子どもを世界規模で騙している期間というのも、11月後半から12月末だけの期間でしかないとも言えるわけだけれど、たかだか1か月子どもを大人しくしやすくするためだけの嘘としては、手が込みすぎていないか。

商戦的な意味合いがあるクリスマスが実は子どもではなく大人向けのイベントなことはもはや否定のしようがないが、その中でも「サンタクロースがやってきて、子どもにプレゼントをあげる」という文化はやや浮いている。

だいたい、今の子どもってサンタクロースなんて信じ続けられるのか? これだけネットが普及して、真実のようなものにアクセスしやすくなってしまうと、サンタクロースの実在を信じ続ける子どもや、親に赤ちゃんの作り方を訊いて困らせてしまう子どものほうが、サンタクロースよりも非実在の存在になっているんじゃないのか?

特に答えは思いつかない問題だったけれど、それとなく考えていく中で思いついたのは「貧困家庭の子どもが、本当にほしいプレゼントを頼みやすい環境を整える」意味はあるのかなと思った。

最近の子どもは発育が早いという前提がずっとあるのだけれど、赤ちゃんの作り方を早いうちから知っている子どもは、自分の家庭が周りと比べて裕福なのか貧乏なのかなんてことも、早い段階から分かってしまうのではないだろうか。そして、そんなことに気づける子どもは、クリスマスという年に一度の機会ですら、ほしいものを親に素直に頼めないんじゃないだろうか。

そんな子どもが、仮に何とかサンタクロースという嘘に騙されてくれていた場合、唯一、純粋にほしいものをねだることができるのがクリスマスなんじゃないだろうか。

サンタクロースという未知の他人になら、無責任にプレゼントを求めることができる。賢い子どもがサンタクロースという嘘にどれだけ騙されてくれるかは分からないが、この視点は唯一、サンタクロースの必要性で納得ができた。


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