通勤風景
暗い黄色の鞄に小豆色のスカート。
もう装いは秋めいている。
重くなりそうな色合いなのに、切り返しの多いスカートは動きがあってそうは見えない。
おしゃれだなあなんて思いながら、少し見ていると、
携帯で文字を打ちつつ、指先のネイルを交互にチェックしてる。
ネイルの何かが気になるみたい。
「週末に会うの、楽しみにしてますね」
『私も!待ち遠しくて、 新しいワンピース買ったんですよー』
「そうですか」
『…可愛いんですよ、ワンピース。秋色なんです。くすんだ感じが最近っぽくて、裾も広がってて、ひらってするんです』
「なるほど」
『…あんまり興味ありませんか…?』
「いえ、そういうわけでは。…そういったものに疎くって。すみません」
『…そうなんですか? …前回、ネイルを褒めてくれたので、細かく見てるおしゃれさんなんだと思っていました』
「残念ながら。前回は、あなたがしてたから見ていただけで。すごく似合ってましたよ」
『…ありがとうございます』
「いえいえ」
『…ワンピースも、見たら、可愛いって褒めてくれていいんですよ?』
「ええ、楽しみに見させてもらいますね」
「見なくても可愛いのだろうとわかってしまってますけど」
相手からメッセージが届いた後のお姉さんがとても幸せそうだったので、
携帯の画面は見えないけれど、こんな風だったらいいなっていう妄想。