年末の大型フェス、今と未来を生きる人が見る夢
やれコロナ禍だ、やれ規模縮小だ、と言っているうち気付けば4年ぶりになった年末の幕張メッセだ。COUNTDOWN JAPAN23/24は、12月30日と31日の2日間に足を運んだ。
2023年の終わりと2024年の幕開けを高らかに告げた年越しのアクトは、中学生、高校生から15年以上憧れ続けてきたELLEGARDENだ。「きっと今、自分は巨大なスクリーンに映し出された何らかの映像を観ているに違いない」そんな感覚に陥った公演は生まれて初めてだった。終わってみれば、感想として残っていたものがほとんど無い。何を感じていたか思い出せないが、本当に夢の中にいたような感覚で、夢中とはこういうことを言うのかと、変に自らを客観視していた。あれだけ贅沢な夜は、もうしばらくは訪れないだろうと、年が明けてから何度も思い返している。
12月30日公演で観たMy Hair is Badも、なんだかんだで4年半ぶりか。曲間ではいつまでも1年前に出られなかった時のことを話し、必死に何かを取り返そうとしている椎木を観て、「いいから今をやれよ」と感じる。なんだか味のしないガムを噛み続けているような、行き場のない気持ちになった公演だった。特にライブが良くなかったという話ではなくて、なんとなく今の自分が見て熱くなれなかったというか。それでも、ぼやけた未練たらしさが椎木という男をこのステージに立たせたようにも思えたし、一緒に行った友人達にはきちんと届いていた(刺さっていたともいえる)ようだったので、受け取り手の感情ひとつで180度変わるようなライブだったと思う。
その同日に素晴らしいパフォーマンスを見せたのは、トリを務めたクリープハイプだった。こちらももう最後に観たのは何年ぶりだろうか。尾崎世界観の現在のビジュアルは、尾崎世界観らしくてとても良い。リハーサルの"大丈夫"も良かったし、"ナイトオンザプラネット"はその1曲で会場の雰囲気をその隅まで余すことなく彼らのものに変えてしまった。季節外れの"ラブホテル"は真冬の幕張の湿度をひどく高めたようにすら感じたし、彼らに詳しくない人でも耳にしたことがあるだろう"栞"のあとに、"イノチミジカシコイセヨオトメ"を持ってくる曲順も憎い。
そんな中、2日間を通じていちばん良かったのがConton Candyだったかもしれない。COUNTDOWN JAPANを通過点にすると言い放って披露されたファジーネーブルは、2023年の顔とも言えるような楽曲で、その説得力の高さにぎゅっと心臓を掴まれたような感覚があり、少し泣いてしまった。
年末にこの目で見た好きなアーティスト達の演奏、その記憶や感情は、自分が死ぬ瞬間に消えて無くなるのかもしれないし、自分よりも先に好きなアーティストが亡くなってしまうケースだって当たり前に起こり得る。それでも何かの形で残り続けるなら、きっとその先の未来を生きる人にまた新たな光をもたらすのだろう。それは変わり続ける世界を生き続けていくうえで、ひとつの安心材料になるのかもしれない。自分が生活の中で撮ったものは、未来でどうなるんだろうか、というあまりにも小さく現実的な不安も感じつつ。
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