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終活のお願い ---子世代から---

父と母を見送った。
遺品整理は私ひとりでやった(終わってない)。
近い将来、子供のいない叔母夫婦を見送ることになるだろう。
終活を考えている人に、子世代としてお願いしたいことを書いていきます。

1 エンディングノートをつけてね

  1. 1人1冊、市販のエンディングノートを買ってください。
    エンディングノートにはご家族にとって必要な項目が網羅されています。
    あなたがご自分で考えるよりも、市販のエンディングノートの項目に則って粛々と書いてくれるほうが漏れがなくて助かるのです。

  2. 買ったエンディングノートには書き込まないで。PCに入力するか、ルーズリーフなどの冊子やノート状ではないものに記入してください。
    (理由)冊子状のものに記入されると、あとで処分が大変なのです。エンディングノートは個人情報満載の内容になります。確実に丁寧に処分できるようお願いします。

2 名簿と写真を厳選してね(キーワードは「紙」)

  1. 紙の名簿から必要な人のものだけを抜き出して、あとは処分してください。
    あなたの旅立ちを誰に知らせればいいのか、子世代は把握していないかもしれません。大量の住所録・名簿をシュレッダーにかけるの大変なんです。

  2. 遺影にしてほしい写真はわかるようにしておいてください。
    急なお別れに、仕事のやりくりをしたり葬儀の打ち合わせをしたり親族に連絡したり。遺影にふさわしい写真を選びたくても時間がありません。もっといい写真を探したかったと私はずっと悲しく思っています。「遺影はこれにしてね」と綺麗な箱でもジップロックでも、写真を数枚、できたらUSBかPCにも保存して、わかるように置いておいてください。

  3. 紙の台紙に貼ってある写真は取捨選択して処分をお願いします。
    紙の台紙から1枚1枚はがすのも、重いアルバムをゴミに出すのも大変なんです。
    ・写真をはがす
    ・1枚ずつシュレッダー
    ・アルバムを数冊ずつゴミ置き場へ
    子世代が現役、あるいは遠方だった場合は特に考えてあげてほしいです。

3 葬儀で流してほしい曲をぜひピックアップしてね

あなたの旅立ちをあなたの好きな曲で見送りたいです。
会うのは数年に一度、海外暮らしも長かった叔母夫婦、どんな曲が好きなのかもうわかりません。どちらも認知症でほとんど意思疎通ができないから。
小さい時にかわいがってくれた叔母夫婦をどんな曲で送ったらいいのか悩んでいます。

4 大切な品物は由来を書いてね。そしてそれをどうしたらいいか教えてね

・旅先で買ってきた雑貨
・先祖から伝わる物
・特別に誰かにあげたい物
・どこかに寄贈したい物

叔母の夫である義理叔父は、ある分野の研究をしていました。施設に入ると決めた時、重要な文書等は大学に寄贈の手続きをしてくれていました。叔父の研究の成果が、誰かの研究をお手伝いできるなら嬉しいことです。叔父の研究物を価値も知らない私が可燃ゴミに出さなくて本当によかったです。

5 公正証書遺言を書いてくれると嬉しいです


私には兄がいます。父母の老後は兄妹平等に負担すべきですが、父母の近くに住んでいた私が100%担っていました。父、母の順で亡くなったのですが、母は公正証書遺言を作ってくれていました。「息子には不満かもしれないが、自分たちの世話をしてくれたのは娘である。娘も仕事をし、自分の家庭のことをしながら自分たちのこともやってくれた」と書いてくれたおかげで私はずいぶんと報われました。
あなたの老後を見てくれた人は誰でしょうか。長男だから、長女だから、という考えは捨ててください。あなたの世話をするために、世話をしてくれた人は見えないお金を遣っています。交通費だったり差し入れのための食材費だったり。通院への付き添いのための駐車料金やガソリン代。そして時間。どうぞ、最後に寄り添ってくれていた人に想いを返してあげてください。


6 キーマンを指定してね

特に子供がいないご夫婦にはお願いしたいです。
公正証書遺言を作ったりエンディングノートを書いてくれたりしても、それらが必要になるのはほとんどの場合、死後のことなのです。それまでの間、老人ホームに入っても、ホームのスタッフにとっては、キーマンが必要なのです。

「高熱が続いていて往診医が入院をすすめているがよろしいですか」
「冬物のパジャマが足りない」
「トレーナーとスウェットを買ってほしい」などなど。

叔父も叔母もそれぞれに税理士と弁護士に財産管理をお願いしていました。
だからいろいろな支払いはお任せしていました。
でも、弁護士や税理士は叔母によさそうなスウェットを買ってきてくれるわけではありません。契約上も財産管理業務になっているそうです。治療の同意などは親族がいるなら親族にやってほしいそうです。もちろんそうですよね。
今は私がキーマンとして病状の説明や治療の同意をしています。
子世代(この場合は甥姪世代)にとって、自分の生活、自分の親の世話や見送りがのしかかっています。近くにいればまだしも、遠方の親族のことはどうしても後回しになってしまうのです。
みんなが気持ちよくあなたのお世話できるほうがいいと思うのです。
老人ホームや病院との連絡係、どうぞ誰かにお願いしてね。

7 本籍地の履歴を残してね

私もエンディングノートを書いています。
市販の物を買って、そこに書かれている項目を順にPCに入力し、印刷してファイルにしています。ほとんどのことが網羅されていますが、意外なことに、私が買ったものには「本籍地の履歴」の項目がありませんでした。ぜひ欲しい項目だと思っています。家族の死後に必要な書類はたくさんあります。死亡届を役所に出せば「今後必要な手続き一覧」「今後必要な書類一覧」をもらえると思います。そこに載っているものを集めていきます。その中で、わりと厄介なのが戸籍謄本です。
生まれてから亡くなるまでの本籍地をすべてたどって、抜けがないようにしなくてはなりません。
私が母の死後に集めた戸籍謄本は下記の6種類です。
  1  母が生まれた時の本籍地・・・A区
  2. 母が子供の時に祖父が家を建てて、そこに本籍地を移した・・・B区●町
  3. 父母が結婚した時の本籍地(父が筆頭者)・・・C区
  4. 父母が家を建てて、そこに本籍を移した・・・B区■■町
  5. 父母が私の近くに引っ越してきたため本籍を移した・・・D市
  6. 父が亡くなって母が筆頭になった本籍・・・D市
5と6は同じ市のものですが、筆頭者が異なるので必要です。

多くの人が、出生時の本籍地→死亡時の本籍地まで、何回か本籍地を移していると思います。遠隔地でも郵送で請求できます。あらかじめ郵便局で多めに定額小為替を購入して、それぞれの役所に申請します。往復とも郵便になり、なかには「うちの自治体内でも1回本籍地を移しているみたいで、定額小為替があと700円必要です」ということもあり、わりと時間がかかります。
1枚でも抜けていると相続等はいっさい進みません。
謄本をあらかじめそろえておいてくれる必要はないです。
ただただ、なにかの紙に「これまでの本籍地」というリストを作っておいてくれると心の余裕が違います。忘れないでくれると嬉しいです。

余談ですが、私は自宅から職場の間に郵便局がなく、定額小為替を買うことがわりと苦痛でした。平日しか買えない。購入できるのは窓口で16時まで。ただでさえ親の入院手続き、見舞い、忌引き・・・とたくさん休んでいます。今後も相続手続き等で平日に銀行等に行かなくてはならない、有休は足りるのかという不安もあります。定額小為替での請求というしばりはどうにかならないでしょうかね。

8 あなたの異変に気づいてもらえる可能性を広げてね

新聞をとるとか。
宅配弁当をとるとか。
マンションの管理人さんと毎日同じような時間に顔をあわせるとか。

あなたがひとり暮らしであったら、なおさら「ちょっとした異変にモヤモヤしてくれる関係」を作ってほしい。

叔母がホームに入ったあと、叔父(当時80代後半)は4年くらいひとり暮らしをしていた。
見守りカメラとか、一定時間操作がなかったら家族に通知してくれる家電製品とか、すすめたかったけどできなかった。私は義理の姪だ。叔父の兄弟、直接の甥姪がいるのに出過ぎたことだと踏み込めなかった。
ある日、叔父は室内で倒れているところを発見された。
1日1食、宅配弁当をとっていて、不在の場合は玄関ノブにかけてくれるらしい。前日の弁当がそのままになっているのを見た配達のかたが、マンションの管理人さんに連絡してくれて、一緒に玄関を開けてくれたらしい。
「おかしい」と思ってくれた配達のかたには、どんなに感謝してもし足りない。
ひとりで廊下に倒れたまま、どんなに不安だったかと思うと本当に悲しい。

新聞や弁当などの配達している方にとって、「新聞(弁当)が取り込まれていない」と気づいて管理人さんに連絡するというのは、余計な負担だと思う。そのあとの配達もあるだろうし。管理人さんがいなかったら更に面倒だと思うし。
だから「気づいてくれて当然」「連絡してくれて当然」などと思わないで、「気づいてくれて、誰かに知らせてくれたらラッキー」くらいの気持ちでいいからさ、小さな関係をたくさん持ってほしいです。


9 最後のお願い

どうか一人で旅立たないで。
「これをやっておいて」「こういうの、子世代は大変なんだからね」ということばかり書いてきました。
エンディングノートも、時間や気力がなかったら、誰に知らせてほしいかだけでもいいから。
できたら、親族の誰かが来るまでちょっとだけがんばって。
どうかお見送りをさせてください。

ここまで読んでくださったかた、ありがとうございました。
スキを押してくださったかた、コメントくださったかた、フォローしてくださったかた、感謝しています。
これから終活を始めるかたに、「ああ、そういうこともやっておいたほうがいいか」と気付くきっかけになったらいいなと思います。

叔父(叔母の夫)の入っているホームから入院の連絡がありました。
年内にも旅立つかもしれません。
治療の意向を聞かれ、積極的治療は断りました。
痛みや不快感をなるべく取り除いてあげてほしいとだけ答えました。
「おじさん、香帆来たよ!これまでありがとう!またね!」って言いたいです。間に合うといいのですが。

書き忘れていたことがあったら再開するかもしれませんが、「終活のお願い --子世代から--」はいったん終了します。
お互いによい終活をしましょうね!





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