マガジンのカバー画像

小説

87
異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
運営しているクリエイター

#ゲーム

勝手にルーンナイツストーリー 『啓蟄』

プレイ日記 プロローグへ
『盤上の夢』前編へ

 生まれる前から背負わされていた。
 かくあるべしと定められていた。
 この――掌中にある短剣《ダガー》と同じだ。
 ある目的のために考案され、そこに向かって鍛えあげられた。
 打たれ、研がれ、磨かれ続けたふたつの道具は。
 異物であった魂同士は。
 いつしか溶け合いひとつとなった。
 己の意思と感覚が、鋭くとがった先端にまで伝わっている。
 獲物の

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『ザイに吹く風』

プレイ日記 プロローグへ
『黒血の拳』へ

 黒い点――列を成し、地面を這いまわっている。
 広場の石畳が尽きる土の上を。
 陽に灼かれても。風に吹かれても。
 飽くことなく。倦むことなく。
 なにかに突き動かされるように、この生き物――アリたちは、ただひたすらに進み続ける。
 屈んで眺めていたルドは、なんとはなしに、石を手に取った。
 子供の手のひらには収まりきらないほどの大きな石だ。
 それを

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『黒血の拳』

プレイ日記 プロローグへ
プレイ日記 第12話へ

 十数年ぶりに訪れた故郷の村は、記憶にあったそれよりも、はるかに小さく、侘しく、煤けて見えた。
 帰ってみようと思ったのは、ほんの気まぐれだった。
 任務で傷を負い、静養するよう言い渡され、するべきことも特になかったせいでもある。

「おお、おお! よくぞお越しくださいました――いえ、お戻りになりましたというべきですな、ラーゴ殿」

 出迎えてく

もっとみる