シェア
葦原青
2021年8月23日 12:12
この話の1へ前の話へ ゆらり、ゆらり、と身体を揺らして、ラ=ミナエが近づいてくる。 両腕もだらりと下げ、剣を引きずっている状態だったが、ウィルにあえてこちらから仕掛ける勇気はなかった。「弟子を取った、といっていたな……張り合いがある、とも……そうか、お前か。お前だったのか」「こいつ、レムトさんと知り合いなのか?」 虚ろな目を宙に向け、ラ=ミナエは「ああ……」と息をついた。「だ
2021年8月12日 12:42
この話の1へ前の話へ その背中が、いまは遠く感じた。 艶やかな黒髪を揺らし、先を往く彼女《ニーニヤ》を、いつだってウィルは、必死になって追いかけていた。 文句をいい、無駄とわかりつつも時には叱り、危機が迫った際には前に出て庇った。 すべては彼女のため――などというつもりはない。 結局のところ自分のため。 彼女を守ることで、居場所を守っていたにすぎないのだから。 ならば、彼女がどう