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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2021年8月の記事一覧

『バラックシップ流離譚』 キミの血が美味しいから・20

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 ゆらり、ゆらり、と身体を揺らして、ラ=ミナエが近づいてくる。
 両腕もだらりと下げ、剣を引きずっている状態だったが、ウィルにあえてこちらから仕掛ける勇気はなかった。

「弟子を取った、といっていたな……張り合いがある、とも……そうか、お前か。お前だったのか」
「こいつ、レムトさんと知り合いなのか?」

 虚ろな目を宙に向け、ラ=ミナエは「ああ……」と息をついた。

「だ

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『バラックシップ流離譚』 キミの血が美味しいから・19

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 その背中が、いまは遠く感じた。
 艶やかな黒髪を揺らし、先を往く彼女《ニーニヤ》を、いつだってウィルは、必死になって追いかけていた。
 文句をいい、無駄とわかりつつも時には叱り、危機が迫った際には前に出て庇った。
 すべては彼女のため――などというつもりはない。
 結局のところ自分のため。
 彼女を守ることで、居場所を守っていたにすぎないのだから。
 ならば、彼女がどう

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