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葦原青
2021年4月28日 12:23
この話の1へ前の話へ 居住区第七層―― かろうじて中層に含まれ、一歩裏道に入れば多くの貧民の姿が目につく。 船尾に近づくほど治安が悪くなるという例に漏れず、七層の後方区画も危険な場所であった。 ギヨティーネの現当主、ロド・ギヨティーネはそこで生を受け、モールソン一家と張り合うまで組織を成長させたいまも、そこに邸を構えている。「ゴミ溜めくせえ一帯にしちゃあ立派なモンだよなァ」 こ
2021年4月15日 17:32
この話の1へ前の話へ いよいよ明日である。 異世界探索に加わるため、前借りした二回分の外出許可。 帰還後の二十一日間は、好奇心と行動力の塊であるニーニヤにとって、地獄のような時間だったらしい。「ああ、まったく。くる日もくる日も書物とのにらめっこ。むろん読書は嫌いではないが、それだけとなると話はちがう。退屈――ああ、まさにその一語。思い出したくもない難渋の日々。砂を吐くような気分で耐え
2021年4月8日 16:24
この話の1へ前の話へ 闇の中、蝶が舞った。 それと知れたのは、光を放っていたからだ。 青白い、燐光にも似た輝き―― 酔いどれるような動きで、それでもなお上を目指し飛んでゆく。 だが、ここは〈幽霊船〉の居住区だ。 目指す先に天はなく、かならず天井につきあたる。 進めない。先はない。 だが、闇を舞う蝶にそんなことはわからない。 わからぬまま、昇って昇ってその末に、儚く燐光を散らし
2021年4月1日 10:17
この話の1へ前の話へ 土下座のひとつやふたつは覚悟していたが、レムトは意外にもあっさりと了承してくれた。「ただし、ヒマなうちだけだぞ」 新しく世界やダンジョンが見つかれば、探索に駆り出されて修行どころではなくなる。それでも十分すぎるほど、ウィルにとってはありがたかった。 ニーニヤのときもそうだったが、このレムト・リューヒという人は、無理めと思うような頼み事でもけっこう簡単に引き受け