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葦原青
2021年3月25日 14:48
序文へこの話の1へ前の話へ ――ウィル。ウィル。ボクのウィル。 キミと出会った夜を、ボクは昨日のことのように憶えている。 なんでもない夜に、ボクはキミを見つけたんだ。 ◇ ニーニヤ誘拐というアクシデントはあったものの、救出後はさしたる事件も大過もなく異世界ヤルヒボール5.3の探索は終了した。 ホドロ一味の生き残りは捕らえられ、帰還後、憲兵隊に引き渡された。住人同士の抗争に
2021年3月19日 18:07
この話の1へ前の話へ ひと息に吐き出した。 肺が空になるほどに。 その後の沈黙が、妙に恐ろしかった。 バレても構わない。そうなったら出ていけばいいだけ―― シャービィ自身、ずっとそう思っていた。 だが、いまは? 胸は苦しく、にぎったこぶしは震えている。 マキトは大きく目を見開き、ぽかんと口をあけていた。 無理もない。 ほとんどの住人にとって、正規クルーはなじみがなく、不気味
2021年3月11日 19:28
この話の1へ前の話へ〈幽霊船〉に住む竜族といえば、人のような竜――人竜族《ツイニーク》と、竜のような人――竜人族《フォニーク》がその代表だ。 本来群れることが嫌いな彼らだが、船内では〈竜の子ら《ドラゴニュート》〉なる集団を形成し、最強勢力の一角を担っている。 竜たちにとって鬼とはなんなのか。 なぜそう呼ばれるようになったのか。 そこまでは〈億万の書《イル・ビリオーネ》〉にも書いていな
2021年3月4日 10:51
この話の1へ前の話へ「お姉ちゃん、ここのエライ人と知り合いだったの?」 ひそひそとマキトが訊ねた。「偉いかどうかは微妙だけど、すごい人ではあるかもね、いちおう。あと、知り合いってのも微妙。向こうはたぶん、会ってもわかんなそうだし」「なにそれ、大丈夫なの?」 少年の不安顔は見ていて飽きないので、シャービィはだんまりを決め込んだ。 それに、わざわざ説明するのも面倒くさい。「こ