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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2020年5月の記事一覧

『アンチヒーローズ・ウォー』 第一章・6

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 チューリップのように三又にわかれた先端。反対の手で柄をにぎって取り出すと――いったいどうやって収まっていたのやら、全長二メートルはありそうな長柄武器《ポール・ウェポン》が現れた。

『二郎刀《アルタンタオ》――三尖刀とも三尖両刃刀とも呼ばれる。それこそが、キミの代名詞だ!』
「あたしじゃあなくて、元ネタのでしょ!」

 反転。飛来するビスの群れ。まっすぐに突っ込む。二郎刀

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『アンチヒーローズ・ウォー』 第一章・5

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「ふええ、ここって地面の下なんだよねえ?」
「さ、今日の戦闘訓練は実戦形式でいくよ」

 トレーニング・ルームのさらに下の階層には、様々な戦場を再現したフロアがある。
 ボガートに連れてこられたのは、そのひとつ、雪山エリアだった。
 一面の銀世界。目印になるような樹木や岩はほとんど見当たらず、距離感がおかしくなる。
 注意深く目を凝らせば、かなり起伏に富んでいることがわかっ

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『アンチヒーローズ・ウォー』 第一章・4

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 その戦いの記録は、ボガート・ラボの怪人《ノワール》全員に共有されていた。
 さる九月九日。オルキスタンはザガンの森。
 隣国トラーダの軍に加わっていたシュガーとヘルラは、オルキスタン所属の英雄《ブラン》、グラウンド・ゼロと交戦し、撃破された。
 以降、ヘルラに関する情報は更新されていない。
 それ以前の記録も、彼女の製造段階まで遡って調べることは容易だった。
怪人《ノワー

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『アンチヒーローズ・ウォー』 第一章・3

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「さあさあ。さーあさあさあ。お腹もふくれたろうし、いつもならお昼寝タイムに入るとこだけど、予定も押してるからね。さっそく始めるとしよう」

 ボガートに連れていかれたのは、研究所内にあるトレーニング・ルームだった。
 ルームと言っても、ひとつの階層を丸々使用しているほどの広さがあり、各種運動器具の他、重機じみたよくわからない装置がいくつも置かれている。
 任務のない怪人《ノ

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