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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2019年9月の記事一覧

『バラックシップ流離譚』 羽根なしの竜娘・9

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 連れていかれたのは串焼きの屋台。
 なんだか、好みがセレスタに近いなと思ったら案の定、彼に教えてもらったのだとフローラは答えた。

「ちなみに、わたしが知ってる中でも最悪に不味い店だから」
「なんで!?」

 皿に乗せられた串焼きは、えぐみを伴った異臭を放っていた。
 大きさも種類も適当な甲殻類(?)が数匹ずつ串刺しにされ、特製のタレをたっぷりつけたうえで焼かれている。

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『バラックシップ流離譚』 羽根なしの竜娘・8

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 盛大なくしゃみとともに、リーゼルは目を覚ました。
 鼻の奥がむずむずする。どうやら、寝床の藁が刺さっていたらしい。
 寝藁は温かいし、柔らかくて寝心地もいいのだが、ときどきこういうことがある。
 あと、身体についた藁はよく落としておかないと、服を着たときにチクチクする。

「やっと起きたか。でかけんぞ!」

 朝からセレスタの大声は脳ミソに響く。なんでそんなに元気なんだ

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