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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2019年4月の記事一覧

『バラックシップ流離譚』 蓑皿・1

序文へ

 昨晩の仕事終わり。一緒に働いている友人から、明日の朝自宅に来てくれと言われた。
 珍しいこともあるものだ。僕も彼も、居住区の下層の住人だ。
 貧乏暮らしで、お互い家にあるのは最低限の家財道具くらいのもの。
 客に出す飲み物の類にも事欠く有り様なうえ、掃除も行き届いていないので、会うとなれば大抵外でというのが通例だった。
「オルムス、来たよ」
 入口に立って呼んでみたが、反応がない。
 

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