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葦原青
2019年1月30日 19:18
前の話へ 保管庫前の通路は、一面血の海だった。 むせかえるような臭気が鼻を突き、修羅場には慣れているはずのクロフでさえ、一瞬嘔吐感をおぼえたほどだ。 散乱している傭兵たちの死体には、どれも上半身がなかった。 巨大な武器で殴られたのでも、爆風かなにかで吹き飛ばされたのでもない。 なにか、ものすごい力で内側から弾け飛んだというような有様だ。 いったいどんな攻撃をされたら、このような死体が
2019年1月23日 10:54
序文へ「痛てて! 畜生ッ、放せ!」 クロフが男を組み伏せると、彼はぶざまに足をばたつかせた。 ヤルキッシュ・ファミリーの縄張りで、無許可で盗品を売り捌いていた男だ。あたりには、どこで発掘されたかもわからない壺や本、装飾品やらが散らばっている。「やれやれ。つまらヌことで手を煩わせないでほしいものデス」 カツ、カツと靴音を立てて、クロフの背後に男が現れた。「抵抗しても無駄デス。その男はク
2019年1月16日 17:33
この話の1へ前の話へ きっかけは、いつものようにニーニヤの読書に付き添っていたときだった。 読み終えた本を書架へ差し込んでもどってくると、ニーニヤが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。「キミは、本の場所をすべて暗記しているのかい?」 読書の際、ニーニヤは本を十冊単位で持ってきて席につく。 装丁はどれも似たり寄ったりで、古いものになると書名がかすれて判読しづらくなっていたりする。
2019年1月9日 17:00
この話の1へ前の話へ ジャングルの夜は、思っていたよりも肌寒かった。 しかも、地面は湿っていて、横になっているだけでも体温を奪われる。 もっとそばに来て寝たまえよ、とニーニヤが提案してきたが、それは断固として拒否した。 ついさっきあんなことがあったばかりだというのに、ミツカの誤解をさらに深めてどうするのだ。 しかし、いまはすこし後悔している。 深夜、尿意をもよおし、目が覚めた。