マガジンのカバー画像

その他

25
運営しているクリエイター

#ルーンナイツストーリー

勝手にルーンナイツストーリー 『黒血の拳』

プレイ日記 プロローグへ
プレイ日記 第12話へ

 十数年ぶりに訪れた故郷の村は、記憶にあったそれよりも、はるかに小さく、侘しく、煤けて見えた。
 帰ってみようと思ったのは、ほんの気まぐれだった。
 任務で傷を負い、静養するよう言い渡され、するべきことも特になかったせいでもある。

「おお、おお! よくぞお越しくださいました――いえ、お戻りになりましたというべきですな、ラーゴ殿」

 出迎えてく

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『ザイに吹く風』

プレイ日記 プロローグへ
『黒血の拳』へ

 黒い点――列を成し、地面を這いまわっている。
 広場の石畳が尽きる土の上を。
 陽に灼かれても。風に吹かれても。
 飽くことなく。倦むことなく。
 なにかに突き動かされるように、この生き物――アリたちは、ただひたすらに進み続ける。
 屈んで眺めていたルドは、なんとはなしに、石を手に取った。
 子供の手のひらには収まりきらないほどの大きな石だ。
 それを

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『灰よりふたたび』

プレイ日記 プロローグへ
『ザイに吹く風』へ

 ため息が出る。
 キャンバスを前に、朝から座り続けていたが、いっこうに筆が動く気配はなかった。
 まっさらな、乾いた布地。
 まるで私の心のようだ――ティルダは口許に自嘲の笑みを浮かべた。
 布地ごしに見えるのは、失った輝き。
 いまはもう手の届かない、愛した獣たちと過ごした日々。
 あの頃は、なにもかもが美しいと思えていたのに。

 おなじ姿勢を

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『Chase! Chase! Chase!』

プレイ日記 プロローグへ
『灰よりふたたび』へ

 マナ・サリージア法王国の都市、ベスティリス。
 ミレルバ諸島連邦との国境にほど近く、平時にはポートサイドから流入する物資や人を送り出す中継地点となり、戦時には首都ザイの東の守りを固める重要拠点となる。
 人の入れ替わりも激しいが、留まる者もまた多く、常に賑わいを見せる大都市――その裏道を、一人の男が必死の形相で走っていた。

「はぁっ、はぁっ……

もっとみる

勝手にルーンナイツストーリー 『盤上の夢』前編

プレイ日記 プロローグへ
『Chase! Chase! Chase!』へ

「ねえねえエルザお姉ちゃん」

 執務室の机にあごを載せた体勢で、シュガーが話しかけてきた。
 眉間にしわをよせて書類と睨み合っていたエルザは、顔をあげると同時にため息をついた。

「シュガー。仕事中は騒がしくしないでっていってるでしょ」
「根の詰めすぎはよくないよー。お姉ちゃんが倒れたら、共和国軍はお終いなんだから。ほら

もっとみる