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『花は窓』坂本沙季25.「東京」

はじめて東京に住んでみてる。これを書くときにそれを思い出した。生まれも育ちも東京近郊なだけで東京じゃない。でも、まあ東京にはよく来ていたしそんなに変わらないか。


東京は集約してる街。いろんな感情や人の記憶がある。星は案外見ようとすれば見える。

踏切で見るホームの電車のすれ違いをみて、私まあの地元には踏切がなかったことに気づいた。電車は地下や橋の上を走るから踏切がない。

わたしはこのことを、出ていくまで気づけないでいた。地元じゃない場所に住むという最初の経験がたまたま東京になっただけかもしれないけれど、この場所はどこよりも存在を肯定し、自分を街に紛れさせることができる。知らない場所が増え続けてる。

家の近くに新しい綺麗なマンションができた。平たくて何にもなかったのに、すごく綺麗で整ったマンション。

地元でも同じ景色を見てた。誰でも住みやすそうなどこか別の場所で育てられた細い植木がその周りを囲んでる。

満員電車も駅から駅までを歩けることも、実は日本の街はどこに行ってもそんなに代わり映えしないことも結構前から知ってる。

あれこれ考えるものや見るものはどこにいたって自分自信にかわりないから同じものを考えてしまって、ちょっとした違いだけが大きく変えているんだと思う。

はじめて東京に住んでみてる。これを書くときにそれを思い出した。生まれも育ちも東京近郊なだけで東京じゃない。東京と付くだけで少し広がるようにわたしの地元は地元でちょっとした違いを持ってる。どっちも住みにくいし、どっちにもずっとはいられない気がしてる。だから、まあ今はどこに行ってもそんなに変わらない。

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