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2019年グローバル美術展ランキング ――東京はアートの中心地なのか

 美術館に出かけることもできずに悶々とした日々が続いておりますが、イギリスの月刊アート誌 THE ART NEWSPAPER で2019年の美術展・美術館人気ランキングがまとめられていましたので見てみました。

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 2019年の美術展、1日あたりの入場者数1位・2位はリオとベロオリゾンテそれぞれのブラジル銀行文化センターで開催されたドリームワークス展(スピルバーグらが設立した映画会社)でした。中国の現代美術家で北京オリンピックスタジアムの「鳥の巣」のデザインで有名なアイ・ウェイウェイ展を含めてブラジル銀行文化センターが3位までを独占していますね。一瞬通販会社かと思いましたが、すごいぞブラジル銀行文化センター。

 一日あたりの入場者数では1位のリオのドリームワークス展が唯一の1万人越えである11,380人。日本の駅ではJR青梅線の中神駅の一日あたり乗車人員(11,408人)に近い数字ですが、そういわれてもなんというかまったくピンとこないですね。両国国技館の客席数 11,098人、というほうがイメージわきやすいですかね。

 一方観客数が増えやすい無料の展示会を除いた有料部門の世界トップは東京都美術館で開催された「叫び」でおなじみのムンク展(全体では4位)。19世紀末ウィーンを代表する画家であるグスタフ・クリムトの没後100年を記念したクリムト展と合わせて都美の有料部門ワンツーフィニッシュでした。

 有料ランキングではムンク展・クリムト展の他にも東寺展・顔真卿展・三国志展・奇想の系譜展と東京の(というか上野の)展示会が目白押し。そういやどの展示会も混んでいたよなあ、という印象ですが、世界レベルで見ても混んでいる展示会だったのですね。

 では東京はアートの中心地の一つといえるか、というと断言しにくいところもあります。下の表は美術展ではなく美術館のランキング。1位はパリのルーブル美術館で、年間入場者数は960万人。週1日の休館日を考慮して年間313日で割ると3.1万人/日と美術展のトップすら寄せ付けない数字になっています。これはJR東日本でいくと熊谷駅(30,556人/日)、スタジアムでいえばZOZOマリン(30,118席)です。

 上位の美術館は美術展のランキングでは出てこない美術館で、これはつまり特別展ではなく常設展を中心とした美術館であるということがいえるでしょう。

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 ここから、ルーブル美術館を擁するパリのような欧米の主要都市は、その美術館が所蔵するアートを見るために世界中から多くの観光客が押しかけている一方、東京においてはヨソから借りてきたアートを見るために多くの東京界隈の人が押しかけている、という構図が透けて見えます。

 また、美術展ランキングを再び見てみると、東京以外の多くが現代アートの展示である一方、東京では中世~近世のアートの展示会が目につきます。よく日本人はメディアで取り上げられていたり他の人が美味しいというラーメン屋に並ぶのが好き、のような言われ方をしたりもしますが、同様にまだ評価の定まっていない現代アートよりも、美術の教科書に載っているようなアートの方を好むということもあるのかもしれません。

 上記はあくまで仮説ではありますが、東京は世界からアートファンが集う中心地というよりは、ミーハーなアート好きが多い街、ということなのかもしれません。東京五輪を機に日本のアートもより海外に発信していけるようになるとよいですね、――ということで今年はやたらあちこちで浮世絵展が企画されていたのだと思うんですが、なかなか思惑通りにはいかないものですね。いやはや。


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