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【アセマネ基礎用語①】ADR

ADRとは?

ADRとはAmerican Depositary Receiptの略で、米国預託証書のことです。ADRは米国外の外国企業、あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て預かり証書のこと。ニューヨーク証券取引所に上場されているものもあり、通常の米国株式と同じように売買ができます。例えば日本企業の株式を買いたい米国人投資家にとって、日本の株式を直接買い付けるには不便が多いですが、ADRの形態を取ることで簡単に取引ができます。米国の株式市場では、日本企業のADRだけでなく、中国企業やインド企業のADRも取引されており、日本国内の証券会社を通じてそれらを売買をすることもできます。

日本企業のADRの場合、日本国内での株価を米ドル換算した価格に基本的に連動していますが、ADRの価格そのものが需給関係によって変動しているため、その時々によっては、日本国内の株価を米ドル換算した価格よりも割高になったり、割安になったりすることがあります。

ADRの基礎知識

ADRは米国市場で売買できる外国企業の証券のことで米国株式のように売買することができます。日本の投資家の立場から見れば「アメリカの株式市場を経由して第三国の企業に投資ができる」ということになります。

最近では、米国や中国など一部の国の個別株式を日本の証券会社から購入することができますが、国の事情や規制などがあり購入できる国は限られているのが現状です。例えばインドやイギリスなどの国の個別株式を日本の証券会社から購入することは難しいです。

しかし、日本から購入できない国の個別株式でも、その企業のADRが米国に上場していれば日本の証券会社を通じて購入することができます。ADRを保有することは、その外国企業の株式を保有するのとほぼ同じことになり、株主の権利である配当金も受け取ることができます。石油メジャーの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルのADRを保有することは、実質的に英蘭シェルの株主になることを意味します。この様に、ADRは、日本から買うことが難しい外国企業の個別銘柄を購入することができる便利なものです。

では、具体的にADRの仕組みを見てみましょう。ADRは、外国企業の株式を裏付けに米国で発行された有価証券を上場させたものです。現地で上場している既存の株式を買い付けた銀行が現地の別の銀行にその株式を預けます。買い付けをした銀行は、外国企業の株式を保有していることを示す証書を出します。この所有権を示した証書を米国で発行したものがADRです。日本の証券会社から購入できるADRはこのADRを米国市場に上場させたものになります。一方、非上場で店頭取引のADRもあります。

ADRには「スポンサー付き」と「スポンサーなし」の2種類があります。株式を発行する外国企業の同意があって発行されたものを「スポンサー付きADR」といいます。裏付けとなる株券を買い付けることができればADRを作ることが可能なので、発行会社の同意なくADRが作られることがあります。これを「スポンサーなしADR」と呼び、米国で非上場のまま店頭で取引されています。日本の証券会社を通じて購入できるADRは、米国市場に上場しているADRであり、「スポンサー付きADR」になります。

ADRのメリット・デメリット

メリット

ADRの魅力は、日本から直接購入が難しい国の個別銘柄を購入することができることです。イギリスやインドだけでなく、イスラエル、南アフリカ、チリなど世界中の外国企業に投資することができるので、国際的な分散投資にもなります。

配当に対して税金面でメリットもあります。米国や中国などへの投資は、配当を受け取る際、その国と日本、両方で配当課税があり二重で税金を払わなければならないという難点があります。しかし、ADRは銘柄によっては二重課税を避けることができます。イギリス、オーストラリア、インドなど配当に対する課税がない国にある外国企業のADRは現地での配当課税がないので、配当に対する税金は日本だけですむという利点があります。しかし、全てのADRがそうではありません。国によって配当課税の有無、税率も異なるので自分が購入するADRがどこの国にある外国企業で配当課税がどうなっているかを確認する必要があります。なお、ADRは米国で上場していますが、外国企業なので米国での配当課税はかかりません。

ADRを保有していなくても、ADRは日本市場の動向を占う上で役立ちます。日本企業のADRも米国で上場しています。前日のニューヨーク市場での日本企業のADRの値動きは、翌日の日本市場でのその銘柄の値動きの参考になります。例えば、東京証券取引所の取引時間が終わり、日本時間深夜に大きな売買材料が出たとします。アメリカ市場で売買される日本企業のADRの価格も大きく変動しますので、翌朝の日本市場では株価がどの水準から取引を始めるのかある程度の見極めがつきます。

デメリット

一方、デメリットもあります。ADRは管理手数料がかかる銘柄があります。配当金が支払われる毎に1株当たり0.05ドル前後の管理手数料が引かれる場合があります。銘柄によって手数料は異なります。

企業が現地の上場は維持するが、ADRの上場は廃止する可能性もあります。京セラ(6971)は2018年6月にADRの上場廃止をしています。

また、ADRは外国企業なので、決算情報やプレスリリースなどの開示資料、企業のホームページなど情報を入手するのに日本語だけでは足りないこともあるのは、人によってはデメリットかもしれません。

ADRはどうやって買う?

ADRは日本の証券会社から買うことができます。最近開いたネット証券口座であればたいていその口座から外国株式も売買することができます。ADRの価格は米ドルですが、ほとんどのネット証券では、買い付けに円貨決済か外貨決済を選択できます。

円貨決済を選択した場合は、ADRの買い付け時に、株数や指値、成り行きなどを入力すると予想受渡代金と参考為替レートが表示されます。余力をもって5%高めのレートで換算されることが多いようです。買付可能額の範囲であればそのまま注文することができ、足りない場合は資金を足すか株数を減らすなど調整が必要です。約定した翌日の日本時間の午前10時の為替レートで決済されます。

一方、外貨決済を選択する場合は、手持ちの米ドルを証券口座に入金する必要があります。その際、ネット証券によって米ドル入金は指定の銀行からと限定されることもあるようです。また、米ドルの入金以外に、証券口座内の日本円を指定された時間のレートで事前に米ドルに交換し、その資金で買い付けることができるネット証券もあります。

ネット証券のホームページなどにある取扱ADR一覧を見ると、どんなADRが購入できるか確認することができます。簡単な業務内容などが書かれている場合もあるので、見ているだけでもこの国にこんな企業があるのかと勉強になります。日本から購入できるADRは米国の厳しい上場基準をクリアしている優良企業が多いといえます。馴染みがあるところだと、新型コロナワクチン開発のニュースでよく耳にする英製薬大手のアストラゼネガや中国ネット通販最大手のアリババ集団などもADR銘柄です。

株価水準に比べて得られる配当が多いADRもあります。イギリス企業のADRは現地での配当課税がかからないうえ、高配当な銘柄が多く注目されています。英蘭シェル(B株)の2020年10月13日時点の予想配当利回りは5.7%、英たばこ大手のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)は7.8%となっています。ただ、配当は業績に連動することが多く必ず高配当が維持される保証はありません。投資をする際は、そのあたりも意識して銘柄を選定する必要があります。

まとめ

ADRは、日本から直接投資することが難しい国の個別銘柄を購入できる便利なものです。国際的な分散投資ができるだけでなく、銘柄によっては、外国株投資の難点である二重課税を避けることもできます。

<出典> 
QUICK Money World

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