資産運用会社(アセマネ)の日系・外資系の違いとは
金融業界で外資系というと、真っ先に投資銀行がイメージされがちですが、実は資産運用業界にも多数の外資系企業が存在します。
しかし証券会社や銀行・投資銀行などと比較してマイナーな印象をお持ちの方も多く、「日系・外資系の違いがよくわからない」という声もよくいただきます。
そこで、今回は実際に資産運用会社で働いた経験のある方のお話も紹介しながら、日系・外資系の違いを「組織・案件数・取扱額」「案件への取り組み方」「年収」「働き方」の側面から紹介していきます。
組織・案件数・取扱額:日系はフルラインナップ、外資は効率的なビジネス組織
ここでは、日系と外資系の組織・案件数・取扱額の違いについて紹介していきます。
まず、組織の規模ですが、日系の場合は証券会社やメガバンクなどのフィナンシャルグループの傘下に入る資産運用会社が多いです。グループ全体でみれば数万人単位の社員を抱える大企業グループの一角を成すということになります。企業単体でも数百人〜1000人超の企業が多く、相対的に規模が大きい傾向にあります。一方、外資系の資産運用会社はフィデリティやブラックロックなどは日本国内で2〜300人の社員を抱えておりますが、これは大きい方で、日本支社は100人以下の社員で構成されていることも珍しくありません。
(ご参考)主要資産運用会社の社員数の例
●野村アセットマネジメント:900〜1000人程度
●アセットマネジメントOne:900〜1000人程度
●大和アセットマネジメント:600人程度
●フィデリティ:200人程度
●ブラックロック:300人程度
●モルガン・スタンレーAM:60人程度
組織構造については日系・外資系というより個社ごとにばらつきが大きいですが、平均的に見れば日系の方が資産運用に関する組織がフルラインで整備されており、かつ営業部隊に多くのリソースが割かれている傾向にあります。日系の資産運用会社の方が全国の投資家に対しきめ細かいサポートがしやすい体制になっているのです。
外資系については社員数に限りがあり、また本社が欧米の本国にあることなどから、日本で効率的にビジネスを行う体制になっていることが多いです。中規模以下の企業の場合は、限られた営業部隊と付帯的な部署だけが日本にあり、それ以外は本国や他拠点に集約されている場合もあります。
また、運用部門は日本に全くないか、あっても日本の資産を中心に見ている小規模スタッフで構成されていることも多いです。「いわゆるファンドマネジャーのような運用部門の人間になりたいなら、外資系では就業機会自体がきわめて少ない。よほど尖った実績や特徴がないかぎり、日系で職を探すのが現実的」というお話もありました。外資系運用会社で働きたいなら、営業関連の職で探していく方が、転職を実現できる可能性や高くなるようです。
続いて案件数・取扱額の傾向としては、最大手の野村アセットマネジメントの運用資産残高が50兆円を超えるのを筆頭に、組織の大きい日系の方が日本での案件が多く、取扱額も大きい傾向にあります。
尚、日本では資産運用ビジネスは主に投資信託と投資顧問に分けられますが、特に投資信託は規模の面で言えば明確に日系の方が大きく、多様な商品ラインナップの運用を行なっている運用会社が多いです。
外資系はそれぞれの特色や強みを活かして、少数の投資信託に絞り込んで効率的にビジネスを行っている傾向にあります。後ほど紹介しますが、日系の資産運用会社から委託を受ける形で間接的に投資信託ビジネスを展開する手法をとっている会社もあります。
一方、投資顧問については年金や機関投資家向けのビジネスが主になります。この分野では海外拠点と連携してより幅広い商品を用いた運用が可能な外資系運用会社もある程度比肩しており、投資顧問に限れば日系・外資系の差は小さくなります。
案件の取り組み方には大きな差はないが、外資はサブアドバイザリーでの関わりも多い
資産運用ビジネスの案件の取り組み方は、個社により強い分野・弱い分野があるものの、多くの部分では日系・外資系で大きな違いはありません。
より身近な投資信託ビジネスの場合、営業活動を行う対象は一義的には証券会社・銀行など投資信託を実際に販売する金融機関です。ただし、商品の販売促進や運用開始後のサポート面では、個人投資家の前に立ってセミナー・商品説明などを行う機会もあります。「立て付け上はあくまで販売する金融機関が資産運用会社のクライアントだが、特に運用額の大きい投資信託の販促なんかになると個人に営業しているのではないかと勘違いするほどセミナーや勉強会・イベントなどさまざまな場面で最終投資家との接触機会が増える」とのことです。
また、投資顧問ビジネスでは、個社により富裕者にあたる個人を相手にする場合もありますが、メインは機関投資家や年金・共済の運用団体です。こちらも日系・外資系で大きな違いはなく、営業部隊がそれぞれのクライアントに訪問して自社の運用能力をアピールしていくことで新規資金の獲得し、運用中の資金に関する定期的なレポーティングによって案件の維持・拡大を目指します。
「強いて違いをあげるとすれば、外資系の場合営業と情報提供を兼ねて本国の運用部門を現地出張にて紹介したり、電話カンファレンスなどをアレンジして運用手法や能力を積極的にアピールする機会が多いところ」という意見はありましたが、日系・外資系の差はマイナーなところに留まるようです。
案件の取り方で日系・外資系の間で違いがあるとすれば、先にも紹介した通り、外資系には日系資産運用会社からの委託を受けて投資信託の実質的な運用を行うビジネスモデルがある、というところです。
これはいわゆるサブアドバイザリーと呼ばれるものです。この場合案件の取り方は少々複雑になり、導入後の投資信託を実際に販売する金融機関・委託元である日系の資産運用会社の双方に営業活動を行うことになります。外資系の場合は組織が小さいことから、日本全国で販売活動を行う余地が限られているため、このようなビジネスモデルがしばしば採用されています。営業面は日系の資産運用会社にできるだけ任せて、運用の部分でグローバルな専門知識を活用するというスキームです。
年収は外資の方が高く、社員も少数精鋭
続いて転職する以上気になってしまう年収ですが「明らかに外資の方が高いだろう」とのこと。
日系の場合、全業種で見れば高給ではあるものの「金融機関自体が平均より高給なセクターなので、そのなかでは標準クラスではないか」との意見がありました。フィナンシャルグループ内でもお互いの給与事情は明らかにされない傾向にあるため「想像の域を出ない」としつつも「フィナンシャルグループ傘下にある資産運用会社の場合、同グループにある銀行や証券会社に給与水準が及ぶことはあまりない印象。良くて同程度。ただし証券会社との比較で言えば業績による賞与の連動性も小さく、給与は安定しやすい」とのことです。
ただしこれは「残業代の差が出ている部分も大きい」とのことで、ワークライフバランスとセットということで納得している現役社員も多いようです。概ね最大手クラスの一般的な社員で「30歳で1000万円」が目処ですが「業界全体でみれば、30歳ちょうどで1000万円に達する社員は多くないのでは」との見方です。
一方外資系の場合、こちらもドイチェアセットマネジメント、ゴールドマンサックスアセットマネジメントのように投資銀行ビジネスでも日本に進出している場合は「基本的に投資銀行の給与にはアップサイドのところで及ばない」とのこと。ただし日系と比較すると「明らかに高い」とのことです。
ある程度の知名度を持つ資産運用会社であれば「給与水準は日本の企業でトップクラス」であることには変わりないようです。中途が多いビジネスなので「年齢と年収が比例しにくい」との意見もありますが「そもそも最若手クラスにも1000万円近い給与を払っている企業もある」とのことで「30歳前後で1500万円くらいには達するだろう。後は出世次第だが40歳で3000万円くらいは充分目指せる」との意見もありました。
さて最後に能力面ですが、少数精鋭である分やや外資系の方が、能力が高いとの見方が一般的。一方で「日系の資産運用会社も1000人前後と決して大所帯なわけではないので、大量採用の銀行や証券と比較すると安定的に質の高い社員が働いている印象」とのことでした。それでも優秀な日系社員が外資系に転職する事例も多く「平均を取ると外資系社員の方が優秀ということになるだろう」という見方も。
外資系の方が常に新規ビジネスの獲得やビジネス領域の拡大を積極的に追求する傾向にあります。必然的に自分で筋道立てて新規ビジネスを構築したり、既存ビジネスを能動的に拡大していく開拓精神が旺盛な方が外資系運用会社では大成する傾向にあります。ビジネスの拡大機会について考えて主体的にビジネスに取り組む姿勢が、ビジネススキルの洗練につながっているようです。
「あとは英語。外資系の資産運用会社はネイティブ並みに英語ができる社員も珍しくないようだ。帰国子女や留学生も多数いる。この点で平均的に日系の資産運用会社が上回るのは困難」とのことでした。外資系の資産運用会社はビジネス上も日常的に英語を使うので、半強制的に英語力が培われていくようです。
働き方は投資銀行よりはマイルドだが、やはり外資系はハード
さて日系と外資系の働き方の違いを見てみましょう。まず前提として資産運用会社は金融機関の中でも比較的ワークライフバランスが維持されている傾向にあります。証券会社のように極端なノルマに悩まされたり、投資銀行のようにタクシー帰りが日常的に発生する企業は稀と言えるでしょう。
しかしながら、やはり日系と外資系を比較すると、外資系の方がハードワークな傾向にあるようです。
「日系は近年の働き方改革の話が出る前から、労働量は決して多いとは言えず、激務な業種も多い金融機関のなかでは楽な部類」という意見がありました。
また、「ファンドの運用残高に応じて定期的に収入があるビジネスなので、競争が厳しい感覚はあまりない」とのこと。運用部門の方でも「日系の場合はあくまでサラリーマンなので、ルールに従って運用を行うことが大事だし、ルールに従って出た損については極端に個人成績やボーナスなどに跳ねるわけではない」といいます。
一方で外資系の資産運用会社の方からは「資産運用会社=まったりと巷で言われていたりするが、外資系ではそのイメージで入社すると痛い目をみることもある。たしかに投資銀行のような働き方ではないにせよ、一般企業と比較すれば激務の範囲だと思う」という意見もあります。組織構造が個社によりかなり異なるため、日本支社のスタッフが充実している場合には外資でも楽な企業もある一方、ビジネス規模に比してスタッフが限られていると1人あたりのタスクが増えハードワークになるようです。
そのほか外資特有の問題として「時差」があります。欧米に運用部門や本社機能などがある場合、情報収集や営業活動の準備などで海外とコンタクトとったり協働したりする場面がしばしば発生します。
「海外と連携する案件の場合、基本的に本国の時間に合わせることになるので、必然的に深夜残業になる。忙しくないのに変な時間に働かなければならず、外資の資産運用会社が意外に激務な要因にもなっている」とのことでした。外資の方が夜間の作業量が多くなりがちなのは、資産運用会社でも変わらないようです。
<出典>
アクシス
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