セルサイドとバイサイドの違い。年収、仕事の満足度について。
まず、初心者向けの話をしますと、証券アナリストには、「セルサイドアナリスト」と「バイサイドアナリスト」がいます。
セルサイドとは、証券会社のことです。バイサイドは、機関投資家(アセットマネジメント会社、信託銀行、保険会社など)のことです。
証券会社は、「証券」を機関投資家に「売る」ため、セルサイド(Sell-side)といいます。
機関投資家は、「証券」を「買う」側ですので、バイサイド(Buy-side)です。
関係性としては、常に買う側が上なので、バイサイドがお客様扱いされます。
バイサイドアナリストの中にも優秀な人はいますが、日経ヴェリタスなどのアナリストランキングに出てくるのは、セルサイドアナリストのみです。
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セルサイドからバイサイドへの転職が増加
現在、セルサイドとバイサイドの取引関係に影響を与えているのが、2018年1月から欧州で施行されているMiFID2(ミフィッド・ツー)という規制です。
従来は「ソフトダラー」という形で、セルサイドアナリストのサービスは、慣習的に証券会社への発注手数料の中に含まれていました。バイサイドは、セルサイドのリサーチサービス、営業の対応力、企業とのミーティングアレンジなどを定期的に得点化し、それに基づいて発注シェアを決定しますが、そのシェア配分は実際は大雑把なものとなっています。
このMiFID2の規制により、バイサイドの「取引執行コスト」と「リサーチコスト」等を分けて開示することが求められた結果、バイサイド側は、セルサイドのリサーチサービスに対して支払うコストを下げる方向にあります。
今のところ、日本の証券会社(セルサイド)は欧州顧客の割合が少ないため、実際の影響は限定的です。ただ、セルサイドがグローバルの顧客を公平に扱うために、今後は日本でも影響が出る可能性があります。
結果として、セルサイドの実入りが減ることになるため、特に外資系のセルサイドアナリストが人員削減の対象となり、一部でバイサイドへの転職が起こっています。
これは、「俺はバイサイドアナリストだから大丈夫」という話ではありません。
今まで、何らかの形でセルサイドアナリストに依存していたバイサイドアナリストが多いと思います。運用会社側も、「同じセクターの優秀なセルサイドアナリストが雇えるなら、うちの(バイサイド)アナリストの存在意義ないよね」ということになります。
セルサイドアナリストとバイサイドアナリストの年収の違い
アナリストの年収は、以下の3つの属性によって異なります。
1.セルサイドか、バイサイドか
2.日系か、外資か
3.ジュニアか、シニアか
ものすごく大雑把に括ると、年収のランクの順位は、以下のようになるイメージです。勿論例外もあります。
・トップレベルのセルサイドアナリスト
・外資系大手・ヘッジファンドのバイサイドアナリスト
V
・セルサイドアナリスト(ジュニア)
・日系バイサイドシニアアナリスト
V
・日系バイサイドアナリスト
トップレベルのセルサイドアナリストの年収
トップレベルのセルサイドアナリストの年収は、2500万~5000万円と言われています(環境によっては、1億いくこともあるのかもしれません)
市場環境や、日経ヴェリタス・Institutional Investors等のアナリストランキングによって左右されますから、一概には言えません。
外資系バイサイド・ヘッジファンドのアナリストの年収
外資系バイサイドアナリストだと、例えば
ビズリーチでは、1000万円~2000万円の募集が多いです。
ただし、外資系大手運用会社やヘッジファンドなどでは、成果報酬が手厚い場合、アナリストでも3000万、5000万超となり、トップレベルのセルサイドと同等、実力次第でそれ以上になることもあります。
特に、欧州系よりも、米国系のトップティアの運用会社では、アナリストの年収は最低でも4000万、5000万クラスとなります。ここでいうトップティアとは、Capital、Wellington、FMRなどです。
また、トップレベルのセルサイドアナリストが、最終的に海外ヘッジファンドに転職することがあります。ヘッジファンドの方が、成功した場合のアップサイドが大きいことが理由の一つと思われます。
セルサイドのジュニアアナリストの年収
ジュニアレベルのセルサイドアナリストだと、1000万~1500万、よくて2000万円だと思います。
日系証券会社のセルサイドアナリストの年収
日系証券会社のセルサイドアナリストだと、経験によりますが700万~2000万くらいです。
日系アセットマネジメント会社のバイサイドアナリストの年収
日系アセマネのバイサイドアナリストだと、経験によりますが700万~1500万くらいです。2000万円を超えることは稀だと思います。
「セルサイドの年収の方が、バイサイドより2割くらい高い」と言われており、確かに普通はセルサイドの方が高いと思います。
ただし、外資系バイサイド・ヘッジファンドでは実績次第で報酬が大きくなるチャンスがあります。
一方、日系運用会社は、銀行・証券・保険の子会社が多く、親会社の給与体系に影響を受けることもあり、成果報酬でそこまでいくことはありません。
セルサイドとバイサイドの仕事の満足度の比較
仕事の満足度は、バイサイドの方が高いと言われています。
転職サイトDODAが2015年に実施した仕事の満足度調査によると、「運用(ファンドマネージャー/ディーラー/アナリスト)」が全100職種の中で総合満足度1位となりました。(※22歳~59歳のビジネスパーソン男女5,000名が対象)
「アナリスト」にはセルサイドもバイサイドもありますが、「運用」に関わるアナリストなので、ここではバイサイドアナリストを意味していると考えられます。
運用職(バイサイド)は、「仕事内容についての満足度」も1位、「給与・待遇」については2位となりました。
いつまでも続く保証はない
このように比較的満足度が高いと言われているバイサイドのファンドマネージャー・アナリストですが、長い目で見れば、競争はますます激しくなっていくと思われます。
まず、アクティブファンドの高額手数料への風当たりは以前より強くなっています。
そして、人材市場では、今後はセルサイドアナリストとの競争も高まります。
将来的に、財務モデル作成の効率化が進めば、1人で複数のセクターをカバーすることも可能になり、人員削減につながります。
さらに国内では、2016年にみずほ系が統合してアセットマネジメントOneとなり、2019年に大和住銀とSMAMが統合するなど、大手運用会社の合併が相次いでおり、アナリストが溢れやすい状況にあります。
一方で、エッジの効いた海外の独立系運用会社による日本への進出もあり、そこでは日本株経験の長いアナリストが依然として求められており、年収も高い場合があります。
そのような独立系、外資系運用会社への転職は、アセットマネジメント業界においては、成功パターンの一つです。
<出典>
ファンドマネージャージョブネット
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