見出し画像

【ASE-Lab.メンバーの声】 #9 〜テキサスA&M大学 垣内啓邦君 編〜

海外や全国各地から宇宙好きメンバーが集うASE-Lab.
都内に拠点を置かない団体の活動にメンバーは実際どのように参加しているのでしょうか。
運営メンバーの濵田が調査してまいりました!

待望の海外メンバーインタビュー企画第2弾!
今回はアメリカのテキサスA&M大学に通っていて、火星ローバーコンテスト参加を目標に動く国際開発チームKARURAのリーダーでもある垣内啓邦(かきうち ひろくに)君に取材しました!
宇宙工学に本気で取り組みたいという熱意から渡米を決めた垣内君。工学に本気で取り組む一方で、渡米前は法学部にも通われていたといいます!
彼の目指す将来像と、それを見据えたチャレンジングで着実な行動力を是非ご一読ください!

自己紹介


濵田
:初めに所属大学や大学で勉強していること、ASE-Lab.以外で入っているサークル、趣味について教えてください。

垣内:はい。Texas A&M大学の工学部1年生です。進振りのようなものが1年生の終わりにあるので、学科はまだ決定していないのですが、第1志望は航空宇宙工学科で第2志望は機械工学科です。1年生のうちは工学部の基本的な内容を勉強しています。

入っているサークル・団体について


垣内:サークルに関しては、自分が主導しているKARURAプロジェクト[1]というものに入っています。あとは大学でSAE[2]という車を作ってレースに出る団体のソーラーカーの競技に出場するチーム[3]に所属しています。SEDS[4]という全米にある大きな学生団体があるのですが、その大学の支部[5]のようなところにも入っています。そこでは毎月一回、宇宙業界で働いている人のお話を聞いたり、学生を含め色々な人とコネクションを作ったりしています。あとは大学内で日本のルーツを持つ人が集まるサークルにも入っています。

[引用]
[1] 5カ国の学生からなるチームによる国際ローバー開発のプロジェクト。日本とアメリカを拠点に活動が行われており、2024年に開催される University Rover Challenge に出場予定。
公式HP:https://karura.space/#/
Twitter: https://twitter.com/karura_urc

[2]公式HP:https://www.tamusae.org/

[3]Texas A&M Solar Car Racing Design Team
公式HP:https://www.tamusae.org/solarcarabout

[4]公式HP:https://seds.org/

[5]SEDS at Texas A&M university 
公式HP:
https://sites.google.com/chapter.seds.org/tamuseds/home?pli=1

濵田:SEDSというのは大きな団体で、その中にテキサスA&M大学の支部があるということですか?

垣内:そうですね。大体どの大学にも支部があります。

濵田:そして、大学に講師がいらっしゃるんですね。

垣内:そうですね。例えば1月には女性で初めてミッションコントロールセンターで働いていてアポロ計画に携わってた方のお話を聞くことが出来ました。とても貴重な体験でした。アメリカにいないとアメリカで活躍してた人と繋がるのは難しいですし。

濵田:そうですね。日本でNASAで働いてた方のお話を聞くってなかなかないんですもんね。

垣内:そうですね。

濵田:日本人が集まる団体っていうのは、宇宙分野関係なく集まっているんですか?

垣内:そうですね。大学にいる日本人の人と繋がることができます。うちの大学は白人が多くてアジア人が少ないので、留学生としてきてる日本人がほとんど居ないんです。大阪大学からの交換留学生は年に1人2人いるんですけど。まだ同じ学年で日本から留学生としてうちの大学にきている日本人とは出会ったことがないんです。そういうところに行かないと日本人と会うのは難しいんです。

テキサスA&M大学について


濵田:なるほど。ところでなぜテキサスA&M大学を選んだんですか。

垣内:海外大を受験するときに宇宙工学を本気にできる大学がいいなと思っていて、なおかつ日本だと東大とか東北大とか有名だと思うんですけど、日本ではできない経験がしやすそうなところがいいと思っていて。うちの大学はテキサスにあり、卒業生とのつながりがすごく強いんです。

濵田:卒業生の方で宇宙系の企業に行っている方が多くいらっしゃるんですか?

垣内:そうですね。あとは施設の規模も大きくて。大学が結構田舎の方にあるので、土地があり余っているんです。アメリカで最大規模の風洞を持っている大学って2つあるんですけどそのうちの一つなんです。多分、東大の風洞とかだと模型をそれなりに小さくして風洞に入れないといけないと思うんですけど、うちの大学だと小さくしなくてもそのまま入れられたりするから便利ですね。

濵田:リアルなサイズで色々作れるってことですね。

垣内:あとは軍とのつながりもそれなりに強いので、空軍とかからも宇宙系の研究室にファンドが行ってたりしてたりもします。それが選んだ理由です。

海外大学進学のきっかけ


濵田:海外大学に進学したきっかけは何だったんですか。

垣内:僕は高校までは中高一貫校の広尾学園という日本の学校に通っていて。この学校は普通の日本の大学受験するコース、中高6年間で理系の研究をするコース、インターナショナルコースっていう海外大を目指すコースの3つに分かれているんですね。自分は小学校4年生の時に半年だけ親の都合でドイツのインターナショナルスクールに行ってたってことがあって、それもあり中学受験でインターコースに入ったんですね。中学校3年間は日本語で授業を受けて、帰国子女も同じクラスにいるという環境でした。編入試験のようなものを受けないといけないんですけど、それを受けたあと高校3年間は、授業が全部英語で行われるコースに入りました。

濵田:なるほど。小学生の頃に海外に行ったのもあり、海外大を視野に入れていたってことですか?

垣内:そうですね。視野に入れていました。

濵田:その時に大学を見据えてたのが凄いですね。

垣内:親の影響が大きいですね。選択肢を広げてもらったなと思ってます。

濵田:宇宙系の分野には親に視野を広げてもらったおかげでこの場所に立ってると仰っている方が多いので小さい頃の経験の影響は大きいんだな、と思いますね。


幼少期の垣内君


垣内:そうですね。あとは理系ではないんですが、親が研究者というのも関係しています。

濵田:なるほど。

垣内:日本のアカデミアにいて自分が宇宙の研究をしたいと思った時に、日本だとあんまりファンディングとか貰えないのかなというふうには思ってたりして、海外のアカデミアに興味がありました。

濵田:確かに研究に関するお金の問題とかも色々ありますもんね。

垣内:そうですね。


大学の授業について


濵田:話は戻りますが、今大学は日本でいう微分積分、線形代数、4力学(熱工学、流体力学、材料力学、機械力学)のような内容を勉強しているんですか?

垣内:機械工学にはまだ入っていないのですが、数学に関してはそうですね。あとはPythonを使ったプログラミングや物理・化学といった理科の基礎分野を勉強しています。

濵田:進度や内容について日本の大学の一年生と何か違う点はありますか?

垣内:日本で慶応に半年くらい在籍していたのですが、法学部にいたので理系の進度についてはわからないです。ただ数学は青チャートを勉強してたんでそれなりに範囲がわかるんですが、問題の質が青チャート等とは異なるような気がします。問題自体はあんまり難しくないんですよ。あんまりこねくり回してないというか。

濵田:応用はされていないというような感じですか?

垣内:そうですね。基礎のコンセプトがわかっていれば解ける問題が多めなのかなと思います。これは1年生からだからかもしれないんですが。それなりに簡単に感じている理由がもう1つあって。先ほど進振りがあるっていうふうに言ったと思うんですけど、GPAが3.75以上あれば希望学科に自動的に編入できるんですね。

濵田:高いですね。

垣内:はい。なので数学2・3など1回高校でやった科目をもう1度履修しているんです。

濵田:数2・3みたいな科目が大学にあるんですか?

垣内:そうですね。高校の話に戻るのですが、アメリカの高校にはAPという制度があって、数学のなかにレベル別でAPとhonorsと普通のクラスがあるんです。APが一番難易度が高くて大学の教養課程レベルの内容を扱うんですね。APでは高校の最後に試験を受けて5段階評価が付くんですが、その試験で例えば4以上とかだとそのまま大学の単位に変換できるんです。なので、卒業はやくしたいのであれば、APの単位を使うことはできるんです。ただ自分は日本人なので英語や歴史などの教科で良い成績を取れるわけではないんです。数学とかで成績を上げようと思って、基礎からやり直しました。

宇宙分野に興味を持ったきっかけ


濵田:垣内くんが宇宙とか航空に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

垣内:これは難しいですね。この質問の答えには2通りあるんですが、大学の先生とかと話す時など真面目な場では、2014年に幕張メッセで開催された宇宙博っていのをきっかけとして答えますね。

濵田:ありましたね。私もいきました!

垣内:宇宙博に連れて行ってもらったときに、ジェミニ計画を見たんですね。あれって巨大なロケットの先端に宇宙飛行士が乗ってるじゃないですか。カプセルみたいなのが展示されていたんですが、あれだけ大きなスケールなのに中は物がぎっしり詰まっていて。それを見て技術者達が精一杯力を合わせて1から作り上げたんだと。小さいカプセルの中にも宇宙飛行士を生かすためにスペースを余すことなく色々な配線や基盤が組み込まれてるところに感銘を受けました。フランクな理由では、銀河鉄道999とか宇宙戦艦ヤマトとかを見ていて、自分の中で宇宙に憧れがあってっていうのが大きいような気がします。

濵田:わかります。工学系の方は宇宙兄弟で憧れを抱いたって方も多いですよね。アニメとか本とか小さい頃に触れたコンテンツがきっかけになっている方は多いですね。

垣内:そうですね。

濵田:宇宙博に行ったことあるっていう方に初めて会ったので、勝手に盛り上がってしまいました。

垣内:あの時宇宙博にでてる展示してあるものが書いてあるカタログのようなものを買って帰ったんですよね。

濵田:私も持ってます。

垣内:ほんとですか。あの銀色の。

濵田:紙の質もいいですよね。

垣内:そうなんですよ。だからアメリカの大学に出願するときにエッセイを提出しないといけないんですが、宇宙系に進むことを真剣に目指し始めたかっていう理由を考える際にあの本を引っ張り出してきて、何が自分の中で1番インパクトが大きかったのかというのを振り返っていました。

濵田:確かに宇宙博は米露の冷戦の歴史など海外の内容が多かったので、興味を持って貰えそうですね。

​​濵田:これまでの話を聞いていると、工学寄りの見方だなと思いますね。私は、ロケットとか工学の内容については元々あまり詳しくなかったので、でっかいキュリオシティ(NASAの火星探査車)を見ても、「でかくてかっこいい〜」くらいしか思わなくて。そういった視点で見ていたがすごいなと思います。


ASE-Lab.に入ったきっかけ


濵田:ASE-Lab.に入ったきっかけや、ASE-Lab.を知った経緯について教えていただけますか?

垣内;僕は、 高校の頃からSDF(宇宙開発フォーラム実行委員会)[6]という学生団体の活動に関わっていました。大学に入ってから正式にSDFのメンバーになった時に、あべまさん(代表の阿部舞哉)に出会い、彼に、ASE-Lab.に入ってみないかと誘われたので、加入してみました。

濵田:それは時期的にいつぐらいでしたか?

垣内:去年の5月ですかね。

濵田:結構、早い段階から加入されているんですね。

[6]SDF(宇宙開発フォーラム実行委員会)のHP:https://www.sdfec.org/

ASE-Lab. での活動


濵田:ASE-Lab.内で、行っている活動や気になる活動はありますか?

垣内:今やっているのは、塩田さんと一緒に「宇宙飛行士を目指す会」での活動をやっていて、具体的には日々の運動の報告などをしているんですけど、勉強系のゼミには中々入れてなくて。

濵田:時差もありますしね。

垣内:そうなんですよね。あとは、他でやってる自分のプロジェクトのミーティングとかもあるので。

濵田:「宇宙飛行士を目指す会」では、みんな日々報告を更新しているんですか?

垣内:そうですね、それなりに。毎日更新しているわけではないですけど、意外とみんなの報告見ててそんなにスポーツやってるんだみたいに思うこと多くて面白いです。

濵田:へ〜。私はちょっと運動音痴なので、入りはしないんですけどちょっと覗いてみます。面白そうだな。

垣内:いや全然運動音痴でもできると思いますよ。継続してやっていくということが目標なので。スカッシュをやっているメンバーがいることに驚きました。

濵田:確かに、やった事のないスポーツをやってみる機会にもなりますよね。

垣内:そうですね。

KARURAプロジェクトについて 


濵田:ASE-Lab.以外での活動についても詳しく教えていただけたらなと。特にKARURAの活動はどのようなきっかけで始まったのですか?

垣内:僕とASE-Lab.に元々いた瀬戸君っていう子と2人で始めました。それを始めたのが自分がすでにアメリカにいた時で、あべまから、URCの大会に出たい子がもう1人いるという連絡がきて、じゃあ一緒にやろうかなという風になったというのが、本当の馴れ初めです。URC[7]を目指すことになったきっかけは、高校の時から宇宙系の出場可能な大会を探していて、火星ローバーを作って、そのローバーで宇宙飛行士を補助するっていうコンセプトの大会って他に無いじゃないですか。なので、これに出たいなという風に高校の時から思ってたって感じですね。


KARURAメンバーとローバーの設計について議論をする垣内君

[7] University Rover Challenge 公式HP: https://urc.marssociety.org/

濵田:高校の時からそういう想いがあったのがすごいですね。

垣内:そうですね。やっぱり海外大の受験って日本のAO入試みたいな感じで、結構課外活動を評価することが多くて。課外活動について考えなきゃいけないなという気持ちもあったので。

濵田:見据えなくちゃいけない現状があったと。

垣内:そうですね。

濵田:そこで、KARURAっていうグループを作ったと。最初の頃、どういう風にメンバーを集めましたか?

垣内:最初は、人づてでした。ある程度4、5人集まったらあとはその人たちが所属している団体で募集をかけるという感じでした。なので、ASE-Lab.でも募集ありましたし、SDFとかTELSTARとかWASAとか、多分名の知れてる関東圏の宇宙系の団体やロボコン関係の学生団体に募集を流して、今に至るっていう感じですかね。

濵田:なるほど。少人数の時期からKARURAって今みたいにengineering(工学)、science(理学)、そしてbusiness(ビジネス・渉外)の部署に分かれていたんですか?

垣内:そうですね。大会ではローバーでこなさなくてはいけないミッションが四つあるんですけど、三つはエンジニアリングメインの内容で、一つは土壌のサンプルをとって化学薬品とか顕微鏡とかで調べて、生命の痕跡があるかどうかとか、どういう構成になっているかとかを調べて審査員にプレゼンをするというミッションがあるので。それらの4つのミッションに対応するために3つの部署が元からありました。あとは、businessが独立した部署としてある理由としては、この大会って自分たちで資金獲得をしないといけなくて、その資金獲得のプランとかも同時に審査されるんです。

濵田:そこも審査に入るんですね!

垣内:そうです。なのでbusinessの部署があるんです。

濵田:ただ資金を獲得するだけでなく、どういう風に資金を獲得するかプランを念入りに考えないといけないから、それ専門の部署が必要になってくるんですね。

垣内:他の部署との兼任で行うというのはかなり大変なので。

濵田:今KARURAとしてはどういう風な活動を行っていますか?

垣内:今は、ほぼ最後の人材募集をしているって感じですね。日本側で一番最初にやった人材募集で、プロトタイプを一台作ったんですけど、そこで分かったことを元に本大会に向けての機体を作っていくというところで、その大会に望むメンバーを日本とアメリカで同時に集めています。

濵田:今全体としては何人くらいで動いていらっしゃるんですか?

垣内:現時点では20人ぐらいです。

濵田:垣内君はengineering部署のメンバーですか?

垣内:そうですね、engineeringのメンバーとしては活動してますけど、やっぱりこの指示出しとか他のタスクもあるので、エンジニアの中では1メンバーとして動いている感じです。

濵田:プロトタイプが今1台作ってあって、今後あとどれくらい作る予定なんですか?

垣内:あと2台作る予定ですけど、まだ不確定な要素があって。日本とアメリカでそれぞれ一台ずつ作るのかとか。人材とあとは予算と調整してという感じはなると思うのですが、仮に予算を無制限に使えるということになれば、日本とアメリカで一台ずつ作って最後の機体を一台アメリカで作って計3台といった形になるかもしれないです。現実的にはあと二台くらいかなという風には考えてます。

濵田:確かに、部品をお互いに輸送したりするのかなと思っていたんですけど、そういうわけじゃないんですね。アメリカで作るんだったらアメリカで作るし、日本で作るんだったら日本で作ると。

垣内:部品を輸送したりしても良いんですけど、タイムラグがあるので、何もできない空白の期間が出来てしまうというのと、同じ機体が日本とアメリカで1台ずつあれば、エラーとかが出た時に、そっちの国でも対処したりアップデートしたりできるという利点はあるとは思っているので。そういう意味で、日本とアメリカで一台ずつ作って、最終的なものは日本で作るパーツも出てくるかもしれないんですけど、大きい本体とか駆動系っていうのはアメリカで作ろうかなっていう風な感じでやってます。

KARURAでの今後の目標


濵田:KARURAとしての活動をやっていく中での垣内君の目標について、もしあれば教えてください。

垣内:KARURAのプロジェクトのビジョンの中に、宇宙開発の国際協力モデルを作るというのがあるんですけどこれに関してアメリカに来て気づいたことがあって。自分は宇宙に憧れて、宇宙開発大国であるアメリカに来て宇宙工学科に入れば、日本の宇宙開発を一気に活性化できるし、自分も成績さえ良ければというかちゃんとやっていることをやっていれば、一線で貢献出来るみたいな。アメリカンドリーム寄りな思想で飛び込んだんですよ。ただ、実際卒業生とか企業のリクルーターとかが来るフェアで宇宙系とか航空業界の人と話すと、やっぱり国籍がないとそもそもインターンとかで雇って貰えないんですよね。なので、アメリカにいるだけとか勉強しているだけでは、国際的な連携をしていくという関係性は築いていけないんだなという気づきがありました。だから、他のプロジェクトを日本とアメリカで同時進行でやっていこうという風になったというのがあるんですね。なので、このプロジェクトとしても個人としても、KARURAを通して学生同士が国にとらわれないで宇宙開発をやっていくというモデルを作って機会を作っていくというのが目標です。


濵田:聞いていて、ASE-Lab.の理念にちょっと近いなと思いました。ASE-Lab.も情報格差がないように地方にいても宇宙に接せられるという目標があって。KARURAの目標を考える上で、ASE-Lab.の経験が活きてたりするんですか?

垣内:考え方は、ASE-Lab.に入る前の高校生の段階で、自分宇宙系の学生団体を一回立ち上げていたことが活きているんだと思います。その団体の目標は中高生に宇宙を広げるという目的だったんです。なので、これもまたASE-Lab.と似てるとは思うんですけど。宇宙を目指したい中高生から、宇宙について何の勉強をすれば良いの?とか、ロケット作って何するの?と言われる機会が多かったり。あとは宇宙を勉強したいって思っても、実際何を勉強していくのかって中高生にあんまりわかりやすくないなと思っていて。JAXAとかイベントありますけど、大体そういうイベントって小学生向けのイベントか、大学生向けのイベントかみたいに、両極端なイベントがメインになっているんじゃないかなという風に思っていました。なので、その立ち上げた団体では、モデルロケットを自分たちで作れるワークショップ、ライセンス講習会、日本にある宇宙ベンチャーの人による講演会などを企画するということがメインでやっていた活動です。そう考えると、自分がやっている活動というのは、一貫したものがあって、宇宙開発を多くの人に広げていくっていう部分が共通していると思います。

濵田:ご自身で団体を立ち上げたんですね、団体のお名前教えてもらえますか?

垣内:0 GTAVITYという団体です。団体としての引き継ぎができてはないんですけど。ただ、自分がいた中高で高校の先生も取り込んで出来ていた団体だったので、下の学年でもちゃんとモデルロケットをまだまだ飛ばしてくれているというのが、功績だとは思ってますね。

濵田:たまたまではないですけど、垣内君の考え方がASE-Lab.ともマッチしていたんですね。

垣内:自分がASE-Lab.に入ったのは、自分が法学部にいたっていうのもあって、大学に入って宇宙系の勉強が出来てなかったので、自分でも宇宙系の勉強する機会が欲しいなと思って。自分で学習進めて成長したいという気持ちが加入する上で決め手となりました。

慶應義塾大学の法学部を選んだ理由

 
濵田:大学の学部についてですけど、現在垣内君は慶応の法学部に通われていますが、なぜそこを進学先に選んだのでしょうか?

垣内:これは親の影響があるんですよ。高校で進路について色々と悩む中で、宇宙と法の関わりに対してそれなりに関心があったんです。慶応大学に宇宙法で有名な青木先生[8]という方ががいらっしゃるんです。その先生は、宇宙条約とかの策定や解釈の改定とかに、一線で関わっていらっしゃる方なんですね。そういった先生がいらっしゃるということがまず理由としてあって。あと、慶応大学法学部の中に宇宙法研究センター[9]というのがあるんですよ。なので、そういう環境に身を置いてみたいなと思いました。あとは、親が身近で法律に関わっている姿を見ていたこともあり、法律自体にも興味があったので、法学部に入りました。

[8]青木節子先生
研究室について:https://www.sfc.keio.ac.jp/introducing_labs/002870.html
[9]宇宙法研究センターHP: http://space-law.keio.ac.jp/

濵田:そこで法学について学んでみて、やっぱ工学だなと思って、大学を変えたんですか?

垣内:というよりは、工学は絶対やりたいなと思っていて。将来的に宇宙法分野で何かをするにしても、基礎的な宇宙工学とか工学的知識はあって損じゃないというか、むしろ技術者と話をするときに、工学のバックグラウンドがあるとスムーズに話が進められると思うので、学部4年間では工学を勉強しようとは思っていて、それでアメリカの大学を受けることは決定していたので、そうすると3月に卒業してから8月下旬に入学するまで期間があるじゃないですか。なので、そこで何かしたいなと思って。考えられるのは、日本の大学に入って何を勉強するかっていうところだとは思うんですけど、そこで僕AOで慶応のSFCと早稲田の理工と慶応の法学部を受けていて、全然理工学部に行くっていう選択肢もあった中で行かなかった理由としては、基礎的な科目を数ヶ月やっても凄い新しい知見とか新しい人の層に会えるということは無いだろうなと思って、法学部に行ったという感じですね。

濵田:凄い人生設計が一貫しているなと。きっちりしていらっしゃるなと思いました。確かに、大学に最初の半年行ってやるような基礎科目って、言ってしまえば独学でも出来ますよね。そこで法学部を選択したというのは、事実だけ見ると特殊な選択のように見えますが、話を聞いてみたら筋が通った選択だったということが見えてきて、聞いててすごく腑に落ちました。

垣内:ある可能性を掴みに行きたいなと色々やってたら今に至るっていう感じではあるんですけど、後々考えると良い判断だったかなとは思います。

濵田:とても良いと思います。法を語るときの技術の知識もいるし、技術について語る時にも法の知識がいるので。

ASE-Lab.に入って良かったと思うこと 


濵田:ASE-Lab.に加入して良かったなと思う点を教えてください。

垣内:やはり1番大きいのは、宇宙が好きな人と繋がれるということだと思いますけど、それってSDFでもそれなりに出来ることではあるんですよ。SDFなら尚更文系の人もかなり多いので。そういう意味ではSDFの方が、ASE-Lab.に入っていない当時はそれなりにバラエティに富んだ人が所属していたとは思うんですけど、ASE-Lab.がいいなと思うのは、サークルとしてカチカチやっているわけじゃないじゃ無いですか。なので、高校生とかも入ってくるし、物理的な距離の制限も無いから、日本中の人がいるし、トロント大学とか海外のメンバーもいるし。東京にいるだけだったら会えない人と繋がりを持てるというのは1番大きいと思います。

濵田:これから海外メンバーも増えていってくれたら、英語で学ぶゼミとか、海外の時間に合わせたゼミとかもどんどん立っていってインターナショナルになって良いなぁと個人的に思っています。

垣内君が尊敬する人 


濵田:憧れの人や刺激を受けた方、いらっしゃったらその人について教えて欲しいです。

垣内:自分が宇宙系の活動をやっていくにあたって3人挙げられます。

まず1人目は、自分の後押しと興味があるんだったらやってみなさいという風に背中を押してくれた親です。自分が高校生の時に、宇宙系やりたいけど結局何すればいいかわかんないし、課外活動とかもどういうのがあるかわかんなくて迷っていた時期があったんです。本当に宇宙をやりたいのかとか、やったとしたら何をすることになるのかとか。たまたま母親の職場があったお茶の水に当時JAXAのオフィスがあって。そこで航空部門のシンポジウムがあったんですね。そこに高校の授業が終わったあと放課後に行くと大学生や院生向けに進路相談コーナーが設けられていたんです。ただ、シンポジウムは業界の人が多くて、JAXAの方々がその辺で手持ち無沙汰していたようでした。そしてそこに行ってお話ししたのが、今はもうJAXAを退職されて理科大で研究されている松尾裕一先生[9]という方でした。その方はJAXAで航空部門で空力のシミュレーションソフトの開発とか行ってた方なんです。松尾先生と喋って、「宇宙に興味があるんだったら、とりあえず何かやってみたら?」と言っていただいて。例えばモデルロケットとかやってる団体もあるからその辺の活動から始めてみたら、という風な話をさせていただいたんですね。自分が授業や勉強以外で宇宙に関わっていくきっかけをくださったのは松尾先生でした。

あとは、高校の時に東京理科大学がやってる宇宙教育プログラムに参加していたんですけど、その時に木村先生[10]に出会って。木村先生から宇宙をやるっていうのは、宇宙工学を勉強するだけじゃないんだなということを学ばせていただきました。木村先生は学部時代は薬学部にいて、動物の筋肉の動きとかそういうことを研究されていたらしいんですね。そういう分野の研究内容って情報伝達のシステムとかがメインじゃないですか。でも就職をするときに、たまたま行きたい研究室が満員で、他の法学系の研究室に話をしに行ったときに、宇宙分野に関わってみないかという話を受けて、宇宙への道が始まり、今でははやぶさ2のカメラを作るとか、そういったことをされているそうです。木村先生は、宇宙の仕事に関わる上で必要なのは宇宙工学科でする勉強だけでは無いということを気づかせてくれた方でした。

[9]松尾裕一先生: https://www.tus.ac.jp/ridai/doc/ji/RIJIA01Detail.php?act=pos&kin=ken&diu=735d
[10] 木村真一先生: https://www.tus.ac.jp/ridai/doc/ji/RIJIA01Detail.php?act=pos&kin=ken&diu=52d7


垣内君の将来の目標 


濵田:最後に、垣内君の夢とか将来の目標について教えて欲しいです。

垣内:自分がやってきたことと繋がってくると思うんですけど、宇宙に行きたいとか住みたいって思う人が行けるようになる社会を作り上げることですね。将来の目標だと思います

濵田:インフラ整備寄りのことってことですかね?

垣内:多分どちらかというと、社会の形成にはなるとは思います。工学部で勉強していく中で、自分が特別工学部の中で理系的に天才的に優れているというわけでは無いので、技術的にパラダイムシフトを起こせるとは自分自身の力だけでは難しいかなと個人的には思っていて。だから、宇宙法の分野だとか整備とかそういう社会的な何かを反映できれば良いなと現時点では思っています。

濵田:どちらかというとバリバリ工学面でというわけではないのですね。

垣内:そうですね、それが現時点では考えていることで。その夢に向かってどうやってチャレンジしていくかは今後変わっていくとは思うんですけど。研究内容とかその研究をどう活かしていくかはこれから考えていきますが、現時点では社会形成に着目していきたいなと思っています。

濵田:本日はありがとうございました! 

垣内:KARURAプロジェクトは学生主体の宇宙開発の推進のために活動を行っていきますので引き続き応援をよろしくお願いいたします!


垣内君!素敵なお話ありがとうございました!


この記事を読んで私達の活動に興味を持ってくださった学生さん!是非弊団体のウェブを覗いてみてください↓ こちらから参加登録も出来ます。
団体ホームページ

取材・文:岐阜大学 工学部 電気電子・情報工学科 応用物理コース3年
     濵田莉来 (広報部メンバー)
文・編集:国府台女子学院高等部3年 家本康ゆに (広報部メンバー)

編集・監修:早稲田大学 先進理工学部 物理学科3年 舟坂柚香


いいなと思ったら応援しよう!