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SNS規制の議論:「実名・顔写真必須」を考える

 最近、ある支援者系インフルエンサーが「SNS規制に反対する人間が正しいとは限らない。規制する必要はないが、せめて顔写真と実名登録を必須にして、責任の所在を明確にした方がいい」といった趣旨の意見を発信していました。この考え方には一定の合理性がありますが、実際に導入するとなると、さまざまな問題が生じる可能性があります。本記事では、「SNSの実名・顔写真必須化」について、メリットとデメリットを整理しながら、最適な対応策を考えていきたいと思います。

 まず、実名や顔写真の登録を義務付けることで期待できる効果として、発言に対する責任の明確化が挙げられます。現在のSNSでは、匿名性が悪用され、誹謗中傷やデマの拡散が後を絶ちません。実名制にすれば、こうした無責任な発言が減る可能性があります。また、アカウントの持ち主が特定できることで、問題のある投稿に対して迅速な対処が可能になるかもしれません。さらに、顔と名前が紐づくことで、ユーザーが自身の発言に慎重になり、ネットリテラシーが向上するという期待もあります。

 しかし、実名・顔写真の義務化には、それ以上に大きなデメリットが存在します。最大の懸念点はプライバシーと安全の問題です。SNSを利用する人々の中には、匿名でなければ発信できない事情を抱えている方も多くいらっしゃいます。例えば、LGBTQの方や精神疾患を抱える方、被害者支援に関わる方、会社の労働環境に問題を感じている方などは、実名を公開することで、差別やハラスメント、さらにはストーカー行為の標的になってしまう可能性があります。匿名だからこそ安心して声を上げられる方々の発信機会を奪うことになれば、社会的な問題提起や重要な情報共有が妨げられることにもなりかねません。

 また、実名制が導入されると、自由な発言が萎縮するという問題も生じます。人は、職場や社会的立場を意識せざるを得ない状況では、本音を語ることが難しくなります。特に政治や社会問題への批判、労働環境に関する告発などは、実名が明らかになれば不利益を被るリスクが高いため、発信自体が控えられる可能性があります。実際、実名登録が基本となっているFacebookでも、社会的な発言がしにくいという声は少なくありません。全員が実名・顔写真を公開するような環境になれば、こうした萎縮効果はさらに強まり、結果としてSNS上での多様な意見交換が損なわれることが予想されます。

 さらに、監視社会のリスクも無視できません。もしSNS運営会社が全ユーザーの実名・顔写真を管理することになれば、その情報の流出や悪用の危険性が高まります。特に国家が関与する形で実名制が導入される場合、言論統制の道具として利用される可能性も否定できません。表現の自由は民主主義社会の根幹をなすものであり、安易に実名制を導入することが、結果的に自由な議論の場を狭めてしまうリスクを考慮する必要があります。

 また、「実名制にすれば誹謗中傷がなくなる」という考えは、必ずしも正しいとは言えないでしょう。実名アカウントが基本のFacebookでも、誹謗中傷やデマが頻繁に発生していることからも分かるように、実名であっても攻撃的な言動をする人は一定数存在します。実名か匿名かという問題よりも、誹謗中傷に対する適切な対応策が整備されているかどうかの方が、はるかに重要なのではないかと思います。

 以上の点を踏まえると、「実名・顔写真必須」による規制はデメリットが大きすぎると言わざるを得ないと考えます。それでは、SNSの健全化を図るためにはどのような対策が適切なのでしょうか。一つの方法として考えられるのは、適切な通報制度の整備です。SNS運営側が、誹謗中傷やデマの拡散に迅速に対応できる仕組みを強化すれば、被害を最小限に抑えることができるでしょう。また、実名・顔写真の公開ではなく、「運営側にのみ本人確認を行う」形にすれば、プライバシーを守りつつ、無責任な投稿を防ぐことができるかもしれません。加えて、ネットリテラシー向上のための教育を充実させることで、ユーザー自身がSNSの使い方に対する意識を高めることも重要だと思います。

 SNSの匿名性には問題もありますが、匿名だからこそ救われる方々も多くいらっしゃいます。すべてのユーザーに実名・顔写真の公開を強制するのではなく、適切な規制や運営の工夫によって、責任を持ちながらも自由に発言できる環境を作ることが求められるでしょう。実名制ではなく、「匿名性を守りつつ、責任を持てる仕組み」を模索することが、より良いSNSの在り方につながるのではないでしょうか。


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