本を捨てるひと
少しずつ、本を捨てている。従兄弟にあげたり、ブックオフに行ったりだとか。親を頼りたくないので、自転車を使って。
本は私にとって淋しさを埋めるための仮の友人で、私は今、たくさんのひとに囲まれている。本を読む暇なんてない。大学生になったらしばらくの間またひとりになるのだろうけれど、4月からの人生は私のものではないので本なんて買ってられない。スマホも修理しなきゃいけないし、交通費もコンタクト代も服代も何もかも自分で稼がなきゃいけない。ましてや、本なんて。
私は本をあまり読み返さないたちだ。付箋もつけない。私はどこかで聞いた、忘れたんじゃない。思い出せないだけだ、みたいな言葉が大好きで、本もそうなんじゃないかと思い込んでいる。そんな明確に覚えていなくていい。じゃないと脳みそがパンクする。本はあくまで逃避であり趣味であり仮初の友人であり、現実じゃない。
未だ本棚の中は本がいっぱいだけれど、いつか空っぽになる日がくるのだろう。そんな私を読書家と呼ぶひとはきっと、いつの間にかいなくなっている。それが夢だ。私は読書家などという高尚な生き物ではない。