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ある春の話

「5年間仕事したいって思ってるけど、ほんとにそれまで待ってくれるの?」

気づいた時にはもう口から出ていた。3月半ばのことである。新幹線に乗って初めて彼の家に行き、お互いの好きな曲を順番に流しながらドライブしてリスを眺めて自力で下山した日の夜だった。

え、さっき山下りながら「結婚したい」って言ってた年齢はあと2,3年後にきちゃうけどほんとに待ってくれるのか、焦ってもう寝ようとしてるのに口に出してしまった。

でもそこから話し合いができて、グッと話が進んだ。私が試験に合格したら(2月か3月)にパカっとしてくれるらしい。嬉しかった。だってこんな素敵な人、私には今後一生現れないだろう、絶対手放したくないなと思ったからだ。気が合って、しょうもない話もできて、気遣いをしてくれて、時間を使ってくれて、良いところをあげ出したらキリがない。

そこから、いつ引っ越すのかなどいろいろと話し合った。しかし私は関西で仕事を続けたく、彼は地元へ帰りたいという思いがあった。そこのすり合わせが少し難しかったが、彼の職場の目の前にあるコメダで話し合ってとりあえず3年後に私が彼の地元へ行くというところで落ち着いた。

その後、「私はいつパカしてくれるのー?」と何度も何度も聞いていた。形が似てるからとウニの殻でパカしないでねって言ったり、ほんならウニの日にパカしよっていって笑い合ったりしていた。あとは指輪のサイズがわからんからとんがりコーンではかろって話とかもした。まあ2月か3月くらいって決めたので、ゆっくり待ってるね〜とか言ってたけど全然待ちきれなかった。それはもう隠しきれてなかったと思う。

4月になって彼のお家へ行った。次の日が彼のお誕生日だったのでお花を持って行って。どうやって渡したら喜んでくれるか、あんなに新幹線で考えたのに結局普通に渡してしまった。なんかリアクションが思ったより落ち着いていた気がする。でも後から生けたら喜んでくれたので嬉しかった。

次の日、動物園へお出かけする予定だったので準備をした。全部準備し終えたのでさてもう行くのかな〜と思ってたら「洗濯おわるまでここで待ってて」と言われた。それならコーヒーかなんか飲みたいなって思って伝えたらお湯を沸かしてくれた。その間暇だったので、神社を眺めていた。くしゃみがとまらなかった。私があんまり元気ない時に彼氏が神社でお参りしてくれてたって言ってたので、お礼参りしないとな〜と思いながらずっとくしゃみをしていた。

名前を呼ばれ振り返ると、彼がピンクの八重桜の花束を持っていた。いや予定よりめっちゃ早いやんってびっくりして、えっまじでしか言えなかったし、恥ずかしくて花束を渡してもらった後、花束で顔を隠し彼の顔が見えないようにしてしまった。彼は私に結婚しようってパカしながら言ってくれた。キラキラした指輪がそこにはあった。嬉しいのと驚いたのとで、うん、しか言えなかった。手紙も渡してくれた。ずっと隣にいたい。

花束は、私が好きってたまたま言ってた八重桜を準備してくれた。お花屋さんに問い合わせをたくさんして、なかなか引き受けてくれるところがなく大変だったらしい。引き受けてくれたお花屋さんも頑張って探してくれたとのこと。ありきたりなバラではなく、好きなお花を準備してくれたのがとても嬉しかった。

関山桜

その後、一緒に写真を撮った。嬉しいような照れくさいような。写真を見たらなんか私は子供のときような無邪気な笑顔で、彼といる時はありのままの自分でいられるんだろうな、と気づいた。花束に青虫がいたのを2人で笑いながら発見できたことも良い思い出。

ふと、彼とこれから一緒にいれるのか、と思うと嬉しくて仕方がなくなる。素敵な人生が待ってるに違いない。たまには大喧嘩もするだろうけど、大変なことは一緒に乗り越えていけそうな気もする。さて、次は何が待ってるんだろうな。楽しみ。

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