『赤目』ってどんな劇?その1
「明後日の方向」のnoteにようこそ!演出助手の植田です。
本日より本公演の演目『赤目』について、2本立てでご紹介します(時々私情が混ざります)。
最初は『赤目』という戯曲そのものについてのご紹介です。
作品について
作者は『上海バンスキング』などで有名な斎藤憐。初演は自由劇場(1967〜68年)です。自由劇場の公演記録によれば「劇団新人作家・斎藤憐の書き下ろし創作劇の第一作」とのこと。
白土三平
この作品には「白土三平『赤目』より」という表記があります。主人公の三郎は『カムイ伝』『サスケ』などでおなじみの白土三平をモデルにしており、この戯曲も白土三平の漫画『赤目』をベースにつくられています。漫画の『赤目』もとても面白いので是非手に取ってみてください。
余談ですが去る2021年10月8日、白土三平さんの訃報を耳にした時は稽古場・スタッフが騒然としました……。ご冥福をお祈りします。
「赤目」とは?
さて、赤目、赤目とずっと言っておりますがそもそも赤目ってなんだ?って思いませんか?
「赤目」とはウサギ🐰のことなんです。この「赤目」が作品の中で大きな役割を果たします(最初徹夜続きの人の話かと思ったなんて言えないけどあながち間違ってないかもしれない)。どんな作品か気になった方、あらすじをチェックしてみてください!
<あらすじ>
1958年、戦後復興真っ最中の東京。
画家を志す紙芝居画家の三郎は、それまで描いていたギャグ漫画ではなく、本当のことを描くために時代劇『赤目』を描き始める。
——時は江戸、上野沼田領の百姓達は領主信直の圧政に苦しんでいる。妻を惨殺された松造は復讐の時を待つが……——
急速に普及し始めたテレビに押されて苦しい紙芝居から次々と仲間が去っていき、友人小野からは人形劇*に誘われる。そんな中でも三郎は小野の人形劇団仲間である早苗の協力を得て、『赤目』を描き続ける。しかし、友人たちの助言や度重なる改訂を経て、三郎は次第に自分の描きたいものは紙芝居では表現できないことに気づき、劇画**として『赤目』を描きあげる。
3年が経ち、売れっ子漫画家になった三郎。早苗は三郎の秘書業務、小野はテレビで引っ張りだこになっていた。
しかし三郎は一度書き上げたはずの『赤目』のラストシーンに違和感を抱えていた。「本当のラストシーンなど書けないはず。」三郎は『赤目』に一人、向き合い続ける。
「松造、狂え!狂うんだ!」
松造に自身を重ね合わせた三郎が見たものはなんだったのか……
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*人形劇:戦後、人形劇は各地で盛んになり、1953年のNHK・日本テレビ、1950年代後半の各地方民間テレビ局の放映開始に伴って一気に広まった。1953年にNHKで初の連続人形劇が放映されるなどの盛り上がりは1964年開始の『ひょっこりひょうたん島』に繋がっていく。
**劇画:1950年代に誕生したマンガの一種。それまでの「漫画」は風刺やユーモアなどの笑の要素を取り入れていたのに対し、よりリアルな物語の描画を目指すもの。描写も漫画と比べてよりリアルになっており、対象も子供のみならず青年・大人にも広げていった。
【『赤目』ってどんな劇?その2】はこちら👇
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次回更新もお楽しみに〜!
(演出助手・植田)
参考:現代人形劇と映像(STUDIO NOVA)、NHK放送史、夏目房之介「マンガ学入門」(ミネルヴァ書房、2009)
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「明後日の方向」行き先を探すための公演『赤目』
2021年12月29日(水)〜31日(金) 花まる学習会王子小劇場(配信あり)
作=斎藤憐 演出=黒澤世莉
出演=蔭山ひさ枝(静岡)、上条拳斗(福岡)、菅野貴夫、國松卓、高田遼太郎(新潟)、直江里美、野村亮太、百花亜希、渡邊りょう
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