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直木賞選評のことなど

 いらしてくださって、ありがとうございます。

 オール讀物3・4月「直木賞発表」合併号、今回も発売日(2/22)に求めてまいりました。

 第170回直木賞の選評と、受賞されたお二方(『ともぐい』河﨑秋子:新潮社/『八月の御所グラウンド』万城目学・文藝春秋)の対談やエッセイ、受賞作(前半の抜粋掲載)などを中心に、直木賞作家読切特集では米澤穂信、唯川恵、中島京子氏ら豪華作家陣の短編、さらにはアニメ化が決まった『八咫烏シリーズ』について著者と出演声優さん(七海ひろきさん、本泉莉奈さん)が語り合う座談会などなど、今回も盛りだくさんの内容でした。

 選考委員の方々の選評全文を読みましたが、今回もそれぞれの好みの違い、読み方の差異がはっきり出ていて面白かったです。
 とくに河﨑秋子さんの『ともぐい』は、選考の場で他者の評を聞いたことで作品の新しい評価を獲得された作家さまもいらっしゃいました。
 
 オール讀物に掲載されている選評は、選考会後(数日後?)に各作家さまが文章にしたものを文藝春秋さんにお渡しになっていると思われますが、その分量にも差がありました。原稿用紙換算で3枚以内の方もあれば、6枚近い文章でつづられた作家さまもおられまして。

 毎度思うのですけれど、誰かを評価すること、とくにダメ出しや苦言を呈することはとても勇気がいるだろうなと……。誰しも恨みは買いたくないでしょうから、いいところを必ず挙げてから、ここはちょっと、という部分にも触れておく。あるいは先達のプロとしての矜持から、後進への直言として、毅然と「ダメなところはダメだ」と申し上げておく、というスタンスもおありでしょう。
 この選考委員さまは何を考えてこの選評をつづられたのか、そうしたあれこれを想像し、さまざまな感慨を抱きつつ、短編1本分(原稿用紙換算30枚ほど)にもなる全選評を読み終えたのでした。

 ときに、今回の直木賞ノミネート作品のいくつかは、新聞各紙等に掲載されたさまざまな方々による「書評」を複数読んでいたのですが、それらは選考委員の作家さま方とはまた(ずいぶん)違う評価もされていて、どういう読み方をするかについても考えさせられました。

 過去記事でもご紹介しました、教え子二人が芥川賞同時受賞された名指導者・根本昌夫氏『【実践】小説教室』(河出書房新社)に書かれていた「小説には四種類の読みと四回の読み」という言葉を思い出し。

著者の読み方→著者の狙い、訴えたいことを著者の立場に立って読む
自分の読み方→「自分は」この作品をどう思ったか
マーケットの読み方→売れる、売れないに主眼を置いた業界の人の読み方
賞の読み方→芥川賞はこの作品がとるだろう、この選者はこう読むだろう

 書評を書く方がどの立場で書いておられるのか、それら含めて感想も人それぞれということですけれど、「この方のオススメする本は自分には合わない」ことが確定したりもしたのでした。
 さらに言えば今回の選評についても、どこをどう切り取って紹介するかにも差があって、いいところ「だけ」切り取るのが得策と理解してはおりますが……それを言うなら書店に並ぶ本の帯の惹句もおなじこと(「全米が泣いた」「号泣」「感動の」的な)ではありますが、期待のハードルを上げられて買って読んで二度とその作家さまの本は読まな(以下略)。すみません、言わずもがなでございました。

 河﨑秋子さんは桜木紫乃さんと、万城目学さんは森見登美彦さんとそれぞれ対談されていますが、いずれの対談も、プロ作家同士の本音があふれていて、読み応えあり、笑いありでとても楽しめました。

 とくに万城目学さんは、前号(2月号)でのエッセイも秀逸でしたが、今回六回目のノミネートで直木賞受賞となった経緯について語るエッセイがとても面白かったのです。飄々ととぼけた風でありながら、ノミネートされ、言いたい放題選評され(汗)落選し、をくり返した先の栄誉には『プリンセス・トヨトミ』(文藝春秋)以来のファンとしてはもう、感無量でありました。

 ちなみに、直木賞の発表を待つまでの通称「待ち会」の様子は、以下の森見登美彦氏のブログ『この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ』の2024.1.19付記事「万城目学氏、直木賞を受賞する」にて詳細が読めます。


 オール讀物直木賞発表合併号、楽しみにしている連載『PRIZE─プライズ─』(村山由佳)では主人公・天羽カインの作品が直木賞にノミネートされたという連絡が来て、ますます今後の展開から目が離せません。とはいえ、昨今の時勢でもある女性問題がらみの内容は、正直、同性としてちょっとしんどくもあり……報道で日々見聞きし続けている現状に、フィクションの世界でさらにというのはさすがに重たくて。現実とリンクし過ぎるのもときにはキツイものだと感じております。

 また、砂原浩太朗氏の短編『藩邸差配役日日控 揺れる槌』は、しっとりとあたたかな筆致が冴えわたっておりました。が、このところエンタメ系小説ばかりを読んでいたためか、展開がかなりスロー過ぎるようにも感じられ。そこが優しくも美しい描写をなさる砂原作品の良さでもあるのですけれど、今回の短編は物語の展開が冒頭から読めていただけに、少々もどかしくもありました。ゆったり落ち着いた気分のときに再読したいと思います。

 今号も豪華執筆陣のお作品満載でさまざまに楽しめるオール讀物、直木賞の選評だけでも(そんなこといわず隈なくお読みください)読み応え十分ですので、どうぞみなさまもお手にとってみてくださいませ(´ー`)。

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 小説の書き方記事にて以前にもご紹介しましたが、「公募情報をまとめて公開」してくださっている公募ガイド社さまの季刊雑誌『公募ガイド』、こちらのオンライン版からは、とても参考になる【過去記事】を読むことができますので、あらためてお知らせを。

 以下のリンクから公式サイトに入っていただき、トップページの上段「記事を読む」をクリック。表示されたタイトル下部のタグ「バックナンバー」をクリックすると、小説やエッセイなどをこれから書こうと思っておられる方にはとても役立つさまざまな項目が表示されます。
 こちら、ありがたいことにすべて無料で読めるのです。
 たとえば以下のようなお役立ち記事が。

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 ご興味を持たれた方は、ぜひご覧になってみてくださいませ。私もこれから気になる記事を再読、熟読したいと思います。
 


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 最後までお読みくださり、ありがとうございます。

 今年最初に挑戦するはずだった公募がネット応募できないことに気づき(プリンタが故障して早三年目。いまだ買替できる経済状況ではなく)数日落ち込んでおりました。なんとかどこかで結果を出してプリンタと(挙動がずいぶん怪しくなっている)パソコンも買替せねばなりませぬ。
 手書き可とネット応募可能な公募に挑戦するべく気を取り直し、ちまちまと書き進めているのでした。

 当地は花粉に加え寒暖差も激しく、体調も低空飛行気味ですけれど。
 みなさまもくれぐれもご自愛くださいませね。
 今日もみなさまに佳き日となりますように(´ー`)ノ

 

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