本記事では、国会議員・政治家を刑事告発するときの事例をとりあげます。特に、告発書を出したあとに、
・検察がどのような態度をとってくるのか
・そしてその態度に対して、国民としてどのような対策ができるのか
を見ます。
告発とは、次のことです。
告訴・告発をすることができる者または義務がある者として分類されています。
・告訴をすることができる者:告訴する権利がある者(告訴権者)。被害者等。
・告発をすることができる者:人でも、犯罪があると思うときは、告発をすることができる(刑訴法239条1項)。
・告発する義務がある者:公務員は職務上、犯罪を認知したときは告発義務を負う(刑訴法239条2項)。
検察庁に関しても確認しておきます。
検察庁のホームページでは次のように説明されています。
告発状、通知書、告発状補充書
今回扱う事例としては、コロナワクチンのものです。
「菅内閣、岸田内閣の各閣僚ら」を、「殺人罪、殺人未遂罪等」で東京地検に「刑事告発」するというものです。
3月21日時点では、次の流れとなっています。
・令和4年2月10日 告発
・令和4年2月28日 東京地検特捜部からの通知書
・令和4年3月07日 告発状補充書
各PDFは上記URLからダウンロードできます。
まずは、告発状です。1ページのみ載せています。
続いて、通知書です。こちらは1ページのみです。
次に、告発補充書と呼ばれるものです。4ページあります。こちらは全ページ載せます。
告発補充書の中の論理と検察の態度
告発補充書をもとに、国民に対して、検察がどのような態度を取るのかを確認していきます。最後に、そのような態度に対して、国民としてどのような対策ができるのかを議論します。
上から順番に見ていきます。
上記に対しては、次のように反論がされています。6つの項目に分けられています。太字は検察の通知書からの引用箇所です。
次のように分解できるでしょうか。3つの事実に対応します。
・告発状内容的には完成度の高いものであり、「犯罪構成要件に該当する具体的な事実」は充分に特定されている。
・「殺人罪や公務員職権濫用罪の実行行為に該当する具体的な事実」は、特定されている。
・全ての「具体的な被害に関する事実」を特定することは作業的に不可能を強いるものである。
用語として良く分からなかったのは「道具理論による間接正犯形態
による実行行為」です。刑法での基本用語でした。「実行行為」から。
続いて「間接正犯」です。
「道具理論」についてもwikipediaより。
ついでに「犯罪構成要件」です。
補充書に戻ります。いずれにせよ、3つの事実に関して検察との食い違いが出ています。
・犯罪構成要件に該当する具体的な事実
・検察:特定されていない。
・準備書面:充分に特定されている。
・殺人罪や公務員職権濫用罪の実行行為に該当する具体的な事実
・検察:特定されていない。
・準備書面:「多くの国民に対して、情を知らない医療関係者を利用して接種を行はしめ」として、道具理論による間接正犯形態による実行行為として特定されている。
・具体的な被害に関する事実
・検察:特定されていない。
・準備書面:特定することは作業的に不可能を強いるもの。
検察側に悪意があるとして解釈します。
1つ目に関しては、検察は特定されていないとしていますが、何が不十分なのかは述べていません。
2つ目に関しては、「道具理論による間接正犯形態による実行行為」として解釈できるのにも関わらず、検察にとって不利になるような解釈はしてくれません。
3つ目に関しては、作業的に不可能を強いるものであるのに、特定が必要だとして、ごまかそうとしています。
補充書での反論を続けてみていきます。
ここから検察の態度が読み取れます。
・オウム真理教のサリン殺人事件のような事例が存在するのにも関わらず、告発段階で充分に特定されていることをあえて要求し、告発は有効であるのに、受理しない。
刑事告発は、弁護士でなくともできますが、上記のような検察の態度が素人には有効だと言えそうです。一言で言えば、
・こちらの無知を利用する。
ということかもしれません。これに関する対策としては、以下が考えられます。
・弁護士に頼る。
・通知書と補充書を国民で共有し、各国民が反論を行いやすくする仕組みを作る。
検察は、
・公務員職権濫用罪(刑法第193 条)に該当する行為である、告発人の告発をする権利の行使を妨害する行為
を行ってきます。
つまり、検察の態度は、
・こちらの無知を利用して、犯罪行為に該当する行為も平然と行ってくる
ということです。これに関する対策としては、以下が考えられます。
・実際に公務員職権濫用罪が適用されるのかを試す。あるいは、試した事例があるのかを調査する。
検察は、
・適正な事件処理を行わない。
といえます。
つまり、検察の態度は、
・こちらの無知を利用して、不充分と思われる点を具体的に指摘するようなことをあえて行うつもりがない
といえます。これに関する対策としては、難しいかもしれませんが、まずは次のような調査が必要かもしれません。
・不充分と思われる点を具体的に指摘することを、検察に要求できる仕組みがあるのかどうか
・仕組みがないのであれば、どうすればそのような仕組みを作ることができるのか
検察は、
・公務員職権濫用罪に該当する、職権を濫用して人に義務のないことを行わせる行為を行う
といえます。
つまり、検察の態度は、
・こちらの無知を利用して、義務のないことを行わせる
といえます。これに関する対策としては、難しいかもしれませんが、まずは次のような調査が必要かもしれません。
・「追加の補充書等の提出を求めて追完させること」を検察に要求できる仕組みがあるのかどうか
・仕組みがないのであれば、どうすればそのような仕組みを作ることができるのか
上記に関しては、反論ではありませんので次に進みます。
つまり、検察の態度は、
・刑事訴訟法上、義務にないことを義務があるように誤解させてきます。
・「通常の手続」に馴染まないものかどうか、といった判断を行いません。
参考として、告訴・告発の受理機関に関してです。
告発に対する検察の態度
ここまでで、告発に対する検察の態度が明らかになりました。特に、弁護士でない場合に、告発するときに障害になりそうな点から整理します。
・こちらの無知を利用してくる。
・刑事訴訟法上、義務にないことを義務があるように誤解させてくる。
・オウム真理教のサリン殺人事件のような事例が存在するのにも関わらず、告発段階で充分に特定されていることをあえて要求し、告発は有効であるのに、受理しない。
・公務員職権濫用罪(刑法第193 条)に該当する行為を行う。
・告発人の告発をする権利の行使を妨害する行為を行ってくる。
・職権を濫用して人に義務のないことを行わせる行為を行ってくる。
・適正な事件処理を行うつもりがない。
・不充分と思われる点を具体的に指摘するようなことをあえて行うつもりがない。
・「通常の手続」に馴染まないものかどうか、といった判断を行わない。
つまり、国民側の心構えとしては、検察側が国民の側に立ってくれると仮定してはいけないということです。
検察との戦い方
では、このような検察の態度と行為に対抗して、国民としてどんな取り組みができるでしょうか。基本的な要件は、
・告発を受理させるための負担を減らす
と言えそうです。第一関門となりそうなのが受理をさせるということのためです。
もちろん、弁護士に頼むことで負担は大幅に減ると思われます。しかし、国民としてノウハウを貯めることで、弁護士の負担も減ると思われます。
負担を減らすためには、次のような取り組みが必要です。
・理解を伝える:検察の不適切な態度を、多くの人に伝え、注意喚起する。
・国民としては犯罪があると思い告発するわけですが、検察側は、告発して欲しいとは思っていないような態度を取ります。国民の期待と実際の検察の態度とのギャップは、あらかじめ知っておくほうが望ましいと思われます。
・理解を共有する:検察に対抗するためのノウハウを国民全体で共有できる仕組みを作る。
・たとえば、検察への反論集、のようなコピペで使い回せるような情報を作成する
・予防する:検察が不適切な態度を取れないように法律を整備する。
付録:国民にとって必要な知識と経験
今回の記事を通じて、次のような知識やノウハウが必要だと思いました。
<法律知識>
・刑法
・刑事訴訟法
<実践経験>
・告発の経験