ビッグバンドビート、終わるってよ。
「ビッグバンドビート、終わるってよ」
大学の研究室でゼミを終え、ディズニー好きの先輩に突然告げられた事実に、返す言葉が見つからなかった。
そっか、BBB、終わるのか。
そっか、そっか、つまり東京ディズニーシーは、そういう場所になったんだな。
私の中で、東京ディズニーシーに設けた個人的な「堪忍袋の緒が切れる」限界のラインが、BBBのDPA導入だった。
BBBという素晴らしいショーが、ゲストに平等に提供される。
それがある意味、改悪に改悪を重ねたディズニーシーに残された最後の砦というか、希望だった。
ー結局、そんな私の淡い期待などあっさり裏切られたようで、ご存知の通りBBBにもDPAが導入されることになった。
死体蹴りのように情報は錯綜し、決算説明会の質疑応答で「ファイナル施策を行うことで集客効果が高まることは確信できた*¹」という回答から、BBBの終了を"利用して"夏の集客を行う(+DPAへの付加価値を付ける)意図が透けて見えてしまい、多くのディズニーファンが激怒している状況ではある。
要するに、ディズニーファンの気持ちに応える企業から、ディズニーファンの気持ちを利用する企業になってしまった、という話。
…まあ、フォローを入れると、オリエンタルランドの社員が「Dオタちょろw」みたいなノリで施策を打ち出した訳ではないと思う。
あくまでビジネスとして考えた時に、まあ夏の集客問題は大きな課題になっているわけで、その中でDオタにフォーカスした施策が上手くいった、というのは事実ではある。
問題なのは伝え方だった。
たぶんファンの多くはTDRとの情緒的なつながりーmbtiでいえばF型ーを大事にしていて、一方で決算説明会というビジネスの場では論理的な説明ーmbtiでいえばT型ーが求められていて、この両者の相性はまあ壊滅的に悪い。
例えるなら、共感を求める女性に対して、解決を提示してしまう男性のすれ違いみたいな感じ。
ジレンマだよね、これって。
「ファイナル施策を打ち出したら集客効果が高まった」という言い方が、ファンからすればちょっと上からだったんだと思う。
「高温により集客が難しい季節ではあったが、東京ディズニーリゾートに好意を持つ層がアトラクションの終了を見届けてくださったお陰で、入園者数を維持することが出来た。今後もファン向けのコンテンツを積極的に導入し、東京ディズニーリゾートがいつまでも愛される場所であるように尽力していきたい」みたいな言い方ならまだマシだったんだろうけれど、ステークホルダー向けの回答として適切かと言われれば難しい。
まあだから、「BBBファンの気持ちを利用するのか」みたいな気持ちは、心の中に留めておこうと思う。
それでも私は、BBBがないアメフロが、東京ディズニーシーが、未だに想像できないし、信じられない。
私がDオタで、ショーパレが好きだと公言すると、少数派だが茶々を入れてくる人が居る。
「キグルミのおままごとを見て何が楽しいんだ」と。
そんな人に対しては、「いいから黙ってビッグバンドビート見ろ」なんて心の中で、時に言葉で返す。
BBBは、コロナ禍以降かつての輝きを失ったとはいえ、それでもショーとして洗練されていた。
音楽、演奏、ダンス、ステージ、照明、衣装、外観、ファンの連帯感、アドリブ、毎日報告される怪文書…。
その全てが、「なぜディズニーファンがショーパレにハマるのか」を完璧に説明していた。
だからこそ、BBBが無くなり、更にハーバーグリーティングという名の「おままごと」を今後も継続するのならばー私は先の苦言に返す言葉が無い。
正直言って、悲しかった。
BBBが終了するという情報を耳にして、心に痛みを覚えるという事は、私はまだ東京ディズニーシーを愛していたのだと思う。
ーいや、そうじゃない気もする。
次世代にBBBを届けられない事が、何よりも悲しい。
「東京ディズニーリゾートには、この世界には、こんなに素晴らしいエンターテインメントがあって。だからこそ、人生は生きるに値するのだよ」という自分にかけた言葉が、今日までの私を支えてきたし、かつての私のような存在に何らかの形で伝えることが、私の人生のテーマだった。
BBBがなくなった東京ディズニーシーを、私はどう愛せば良いのだろうか。
この葛藤は、2025年9月30日まで無くなることはない。
おわり
*¹ 株式会社オリエンタルランド. 2024. 「2025 年 3 月期 第 2 四半期決算説明会 質疑応答」
https://www.olc.co.jp/ja/ir/latest/main/00/teaserItems2/00/linkList/04/link/qa2025-02.pdf (2024年11月閲覧)