ディズニーランドであった心温まる物語【第１回】
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これからも、あさ出版noteでは
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今週より、最近では入場制限がかかり、なかなか行くことが難しくなってしまった「東京ディズニーリゾート」であった、心温まる物語をお届けします。
記事を書くために再度読んでいるのですが、もう涙が止まりません。どうぞ、ハンカチのご用意も忘れずに…。
勇者になったおばあちゃん
ディズニーランドで仕事をする最後の日。
シンデレラ城ミステリーツアー（現在は終了しています）が、私の最後の担当アトラクションでした。
ディズニーの悪者たちに乗っ取られてしまったシンデレラ城を取り戻すため、ゲスト数人でグループ（ツアー）になってガイド役の私たちキャストと一緒にお城の中に入り、悪の大王ホーンド・キングと戦う参加型のアトラクションです。
クライマックスでは、光の剣を使って、お城を乗っ取った悪の大王を倒します。その光の剣は、勇気と善意と純粋な心の持ち主が握ると光が宿り、悪者をやっつけることができる。そんなストーリーです。
その日もいつものようにみんなで冒険してきました。あとは、クライマックスで光の剣を持って一緒に戦ってくれる人を探すのみ。
「光の剣はきっと次の部屋にあります。勇気と、善意と、純粋な心のある人なら、その光の剣を使えるはずです。どなたかいらっしゃいませんか？ 誰か力を貸してください！」
いつもなら「ハイッ」と誰かが手を挙げてくれるのですが、今日はどなたもいらっしゃいません。
うわぁ。どうしよう……。早く選ばないと時間が過ぎてしまい、クライマックスで助けてくれる人がいないままになってしまう……、と思いながら、ゲストを見渡すと、端っこのほうでおばあちゃんとお孫さんがモゾモゾ。どうやら、お孫さんが「おばあちゃんやってよ」と促がしているようです。ならば、ここはおばあちゃんに戦っていただこう!!と思い、すかさずそばに寄り、尋ねることにしました。
「あなた!!勇敢そうですね。どうかヒロインになって戦ってくれませんか？」
「え……、私がですか……」
驚かれたのでしょう。戸惑いの表情を浮かべられています。
「はい！ 悪者を倒せるのは、純粋な心と勇気と善意のある人だけです。お願いできませんか？」
するとお孫さんも、おばあちゃんの腕を振りながら応援を始めました。「そうだよ、おばあちゃんならできるよ！」
それを見ていた周りの人たちも、
「おばあちゃん、がんばって!!」
「応援してるよ!!」
「シンデレラ城を守って!!」
と声援を送ってくれました。
参加者のみなさんが一つになったのです。
「みなさんからの応援があれば、勇気百倍ですよね。一緒に頑張りましょう!!」
「……はい」
おばあちゃんは、みんなからの声援を背に、勇気を出してくださり、無事に光の剣を手にしてシンデレラ城を守ることに成功したのでした。
ツアーが終わり
みなさんをお城の外にお見送りしていると、参加者の方が口々に「ガイドさん、ありがとう。とっても楽しかった！」と言ってくださいました。
「幸せな思い出ができました。本当にありがとうございます」剣を持って戦ってくださったおばあちゃんがうれしそうに言ってくださったこの言葉に、ディズニーのキャストをやってきて本当によかったと、心から思いました。
そして充実した気持ちで最後の勤務を終え、帰路につくことができたのです。
翌日、後輩のキャストから連絡がありました。
私が帰ったあと、あのおばあちゃんとお孫さんが、再度シンデレラ城を訪ねて来てくださったそうです。
「今までも何度かディズニーランドには来ています。ミステリーツアーに参加したこともありますが、同じツアーのみなさんから応援されたり、一緒に喜びあったりするような、こんなに素晴らしいツアーは経験したことがありませんでした。
あのガイドのお姉さんにもう一度そのことを伝えたくて……。どうぞ彼女に心からのお礼を伝えてください。感動的な時間をありがとう、と」
涙が止まりませんでした。
残念ながら、私はもうディズニーのキャストではないけれど、ディズニーで習ったことを大切に、日常に活かしていければ、家族や周りの人々を応援したり、勇気をプレゼントしたりすることはできるかもしれない。
最後のミステリーツアーの勇者は、私にも勇気をくれたのでした。
by 元アトラクションキャスト
お話しはここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。他にも、全26のステキなお話を収録していますので、お手に取っていただけると嬉しいです。
来週の木曜日3月25日もティズニーランドのお話をお届けしますので、どうぞお楽しみに！