見出し画像

「自分はゲイだけどやってる店はゲイバーじゃない」を選んだ理由

(ノンケという言葉あんまり好きじゃ無いんですが、わかりやすさ重視で多用してます。ご了承ください。)

15年前、新宿2丁目の公民館で写真展をやった時に来てもらった人に素朴な質問という感じでこんなことを言われたことがあります。
「カメラマンさんはゲイなんですか?ゲイなのになんで子供とかご老人とかを撮ったりしてるんですか?」と。
この時は、なんて返したかは覚えてないんですが、そういう意見をいう人もいるんだなぁと新鮮な気持ちになったのを覚えています。

僕は自分がゲイだということを隠す事は最近はほぼなく(家族にはカミングアウトしてないですが、もう大分歳の両親に言ってびっくりさせるのも違うかなぁという思いもあります)、昔は色々な悶々を抱えた上で今自分自身がゲイを隠さない環境でいられてるのは本当にありがたいと思ってます。
最近のLGBT関連のニュースで色々な感情を持ったりもします。ただそういう話は店で直接お客さんやスタッフと色々な意見を語れたりするので、こういう場所やSNSにはあまり書かないようにしています。

世の中には色んな人がいて、色んな価値観がいて、色んな環境な人がいて、色んな意見の人がいます。だから僕の言うことは、沢山いるゲイの中の1人がこういう考え方なんだなくらいな感じで読んでもらえたら嬉しいです。

話を戻します。

僕が趣味で写真をはじめて、カメラマンとして活動をはじめた時に、自分がゲイだということで写真を撮り始めたわけではないです。色んな風景やまわりの人を撮る上で、新宿2丁目で飲み出した時に、2丁目で知り合った色んな人を撮らせてもらいました。

写真展をはじめた時に、勿論その流れで2丁目で仲良くなったゲイの人も撮らせてもらったし、それ以外にも昼の職場や昔から知ってる人、ノンケ友達や子供たち、自分の家族など、自分の周りにいる人たちを撮らせてもらいました。ゲイなのにどうして子供や老人を撮ってるの?と言われたら、自分の周りの人たちを撮ってるからです。と今だったら答えるかなぁと思います。これがキャッチーな答えでは無いのもわかってます。

それこそその後お仕事でGOGOボーイさんの美しい筋肉写真や、ゲイビデオのスナップ撮影、エロ系のゲイイベント写真の撮影なんかもさせてもらってます。
とてもいい経験だったし、これは自分がゲイだからこそ撮れたり、こう撮ったらエロいかもなんてことを活かせる写真だったりして、それは自分がゲイということのアイデンティティーを活かせた撮影なんだとも思ってます。それが僕の写真活動の1部には間違い無くはあります。でもそれが全てではないってことです。伝わりますかね…?

カメラマンをはじめてから、新宿2丁目で知り合った音楽をやってる人、バイト先で知り合った音楽をやってる人や役者さん、昔からファンだった林レイナさんを招いてライブイベントをはじめました。

写真展同様に僕のイベントは色んな人が出てもらえました。そしてその時は来てくれた人に「あなたのイベントに出てる女性の歌手の人はレズビアンなの?」と言われたこともありました。ゲイがイベントをやるならLGBTの人だけ出る、と思う人がいるんだと思い知らされました。僕のイベントは僕が好きな人たちを呼ぶ、というそれ1本だけでやってきました。だからこれもわかりやすいテーマでも無いんだと思います。

新宿2丁目でゲイバーというもの雇われ店長としてやらせてもらいました。最初はたしかミックスバーという名義でやろうとなってたのですが、気づいたら僕自身、ゲイバーと名乗ってた気がします。それは、新宿2丁目という場所でやると決めて、集客だったり、自分の力量ではゲイという肩書きに頼らないと店のコンセプトを上手く活かせないとか色々と葛藤した上でした。僕の友人の女性やノンケの友達には来てもらってました。ただ、ゲイバーと言っていた時点でその友達たちは、ゲイバーに来てるゲイじゃない人、になってしまいました。

新宿2丁目のゲイバーを経て、高円寺でお店をはじめました。自分で経営をはじめるというけじめとして、呼ばれ名の「とら」を名前に入れる「とらんぽりん」という店にして、ゲイバーではなく「誰でも入れるカフェ&バー」という肩書きにしました。これもまたキャッチーな肩書きでは無いと思います。

店をはじめて最初の頃、女友達が連れてきた男性のノンケお客さんに、僕がゲイだということを伝えると「え?なんでゲイバーって言ってないんですか?絶対その方が金額設定も高くできるしいいじゃないですか!」と言われたことがありました。多分その人はゲイバーと言ってたら来なかったのに、という意味で言ったのかなぁなんて思ったりもしました。色んな価値観の人がいるから、仕方のないこと、の1つ。

とらんぽりんは女性のスタッフもいて、これも最初の頃にきたお客さんに「お姉さんはレズなの?」と聞かれたりもしてました。ゲイがやってる店にいる女性はレズビアン、という先入観を持つ人もいるのかぁと勉強になりました。(ちなみにとらんぽりんはノンケの女性もレズビアンの女性も働いています。皆最高です😊)

高円寺でお店をやった理由の1番くらいに、以前飲みに行った高円寺の居酒屋で話の流れで「僕ゲイなんです」と言ったら「そうなんだ!高円寺多いよねぇ」と言われてそのまま他の話になった事があって、この街の人はゲイで興味持ったり、込み入った話をするような人が多くないんだなぁと安心した事があります。それもあって好きな街になりました。

ゲイバーとこちらから絶対言わない理由の1つは、新宿2丁目時代に来てくれたノンケの友達に、自分がその店の来て欲しい趣旨とは違う人間という引け目を感じて来てもらってたのが本当に申し訳なかったっていうのがあります。自分が好きな人たちにその思いをしてほしくないです。

色眼鏡で見られるくらいならゲイというのを隠す手もあるなんて言ってくれた人もいますが、僕自身ゲイだから出会えた人、仲良くなれた人がいたりしてます。だから自分がゲイだということを隠す気はありません。

ゲイという肩書きとともに、新宿2丁目から「とらの店はデブ専バー」という肩書きを背負ったりもしました。僕自身がずっと100kg超えだったから仕方のないかもしれませんけど、僕自身来る人の線引きをしたくないから、どんだけ、自分はデブですけど来る人の体型とか関係ないですよ、と伝えても「自分細いから絶対無下にされると思ってました」と言われる事も多かったです。ゲイバーでも大きい人があつまるバーでもない、誰でも来てもらっていい店という肩書きがわかりづらいんだと同時に、人はカテゴライズするのが好きだし、その方が安心できるのかなぁという学びも得ました。

それでも、頑なにゲイバーじゃないです、セクシャリティーにも体型にも拘ってません、来たいと思ってくれる人は皆来て欲しい!と言い続けてもうすぐ6年。来てくれる人には多分その趣旨は伝わったりもしてます。それでも他の店に飲みに行くと「とらんぽりんってデブ専バーでしょ」「内輪ノリでしょ」「ライブやったりアーティスト志向でハードル高いのよぉ」みたいな事を言われます。それに対して昔はちょっとムキになってそんなことないです!みたいな返しもしてたんですが、最近は「そうでもないと思うんで一回来てもらえたら嬉しいです〜」くらいに返したりしてます。それは自分が自分のポリシーにようやく自信をつけれたんじゃないかなと思ったりもします。ゲイだから集まってるんじゃなくて、気が合ったり一緒に話したい事があってなんとなく心地よさを感じて集まってる、そんな店だと思ってくれてたら嬉しいです。

色々書きましたが、僕がやってる写真だったりイベントだったり店にはゲイだということを根本としてやってるわけではないという僕個人の価値観をつらつら書いてみました。色んな考え方の人がいて、色んなやり方の人がいるってことの1つの意見として見てもらえたらなぁと思いました。

ゲイという自分のアイデンティティーを自分の活動に活かしてる人もいます。すごく格好いいと思います。

自分が自分のやりたい事をやれる世の中であって欲しいと思っています。そして、色んな目標を掲げる人を応援できる側の人間でありたいです、その一部に「とらんぽりん」を使ってくれる人がいたら嬉しいなぁと思ってます。

私からは以上です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?