小芝居「空席」(2009年2月15日開催風太郎企画一周年記念「み境なし 其の弐」内で披露)

「そこの席空いてますか？」

はい でも誰も座らせられません
この席に座る人は決まっています
でもその人はここを離れていきました

「どうしてその人は席を去っていったんですか？」

きっともっと良い席を見つけたんだと思います
僕が悪いんです 僕が悪いんです

「その心の隙間に入れませんか？」

多分 僕は入ってきた人を蹴飛ばしてしまいます
今ぽっかり空いた心の中にも入れるのは一人だけなんです
ただその人は離れて行きました
すべて僕が悪いんです

「どうしてそんなに悲しい目をしてるんですか？」

自分でもわからないんです
ただ僕は 今いちばん見たいものが見えていません
嘆いて嘆いてたら ますます見えなくなってきました

「その席に座っちゃだめですか？」

あなたにはもっとお似合いな席があると思います
あなたを困らせてしまうのが申し訳ないのです


「私はあなたの隣に座りたいです」

どうしてあなたは僕の隣がいいんですか？
こんな席のどこがいいんですか？
どうして他の席にいかないんですか？
僕は今 この席が空いてしまった事よりもあなたを失う事の方が恐いのです

「私はいなくなりませんよ あなたがそう願うのであれば」

なぜあなたはそんなに優しいのですか？

「あなたが優しいから 私も優しくなれるんです」

…ありがとう
よろしくお願いします

「隣に座らせてもらいます」

その人は名を“自信”と言った。

脚本:風太郎