# アニメ感想:「REVENGER」10話 ”Nowhere to Run”
いよいよ佳境、追い詰められていく五人の明日は果たしてどっちだの第10話です。
サブタイ訳は「逃げ場なし」。
詳細:アバンタイトル~OP
ダーツの的……。
「やってくれたなぁ」
い、い、漁澤さん!!!!
唐人街の件について、御奉行も「利便事屋を打ち首にしろ」とカンカンであると。
「全ては我々の仕業と?」幽烟、声低っく……素じゃん……。
「会所の宍戸様がタレ込んできやがったからな」
まあ、唐人街の上役をやっていたんだから会所独自の目撃情報とかそういう筋はあり得ますわな。
「繰馬雷蔵とその一派」が、坂田から奪った阿片を取り返しに来た劉たちを返り討ちにしたって流れか……なんで雷蔵が首魁扱いされてるのかって点ですよね……。
絵師としてまだ駆け出しの雷蔵、蒔絵師として多くの顧客を抱える幽烟を秤にかけた結果なのか、思惑がまだ残っているのか……。
「ずいぶんと見切りが早い」と幽烟。
唐人街という会所の管理下でメンツを潰されたも同然なのだから、真の下手人を明らかにするためにもっと慎重になっておかしくないのでは、という視点からの言葉でした。
「だってのに、会所は"お前さん達の仕業"で一点張りだ」
張ったヤマを現実にしようとしてるのが会所だもんね……。いやそもそも、ヤマを張ってすらいないのか。
ここ「ダーツ」「的」のやりとり、滋味があるな~~~~視聴者が既に知っている「核心」に幽烟の考察とダーツが少しずつ近づいていく所、めちゃくちゃ気持ちいいよ……。
「会所は、誰の仕業か知っている」(一番外)
「おめぇにしては甘ぇなぁ」
「長崎会所こそが、劉を殺し、唐人街を襲撃した張本人」(一回り内側)「そうこなくちゃな」
「阿片は会所にとっても脅威のはず、それを何故?」
「もちろん、会所の総意ってわけじゃなかろうさ。一人、勝手に動いた奴がいる」
「会所元方目付、宍戸斎門様」(真ん中一つ外側)
「おう。俺に言ってやがったぜ。唐人街の連中のために、小判を噛むってな」
南蛮坊主も抱き込んでお前さん達は尻尾切りってか?と漁澤、幽烟に十手を持つことを提案、い、い、漁澤さァ~~~~~~~ん!!!!
このシーンでこう……「この人に命吹き込んだのが子安武人でよかったなあ……」って思いましたね……。このキャスティングをしたのは誰だ!!!(ありがとうございます)
幽烟も結局はお断りせざるを得ないのですが、その声が柔らかくて、思惑があれど自分を守ろうとしてくれたこと自体は素直に嬉しかったんだろうな……って思いました。意地張りやがってって拗ねる漁澤さんSUKIだな~~~~~~。
ダーツ投げは再度漁澤さんの手番に。
元方目付となればいずれは長崎会所のトップになる立場、それがなぜ?という幽烟の疑問は至極もっともで、貞たちや劉がリベンジの原義を貫くものたちがいるとは思わないように、幽烟たちにも宍戸が持つ「商人」以外の顔はわからないんだよなあ……。
ああ……坂田に阿片を流したのも宍戸か……そりゃそうだ……。
「ボンボンの火遊び、つまらねえ小遣い稼ぎかとも思ったが……」
「見誤った」
そもそも刺さりもせずぽろぽろ落ちるダーツが、「見誤った」という責任を感じているシリアスな声と共にあさっての方向にある柱に刺さる、演出が上手すぎる、滋味のある演出なので健康になる。
宍戸は本気で長崎を阿片漬けにするつもりだろうがその真意は見えず、
「ならば、直接見極める他……なさそうですね」
ここで綺麗なブルショット、わかりきっていても気持ちいいんだから王道は王道たる所以があるんだよな……。
OP明け~アイキャッチ
い、一八の銃口から始めるのやめてもろて……。
打ち抜かれる町屋の窓障子、はなちゃんの声でとうとう恐れた時が!?と思ったら撃ち抜かれたのは惣二のダミーだった、よかった……。
即座に射手(一八)を追う雷蔵と惣二だが捕捉できず、どの道身元を知られたならば町屋には居られないため、二人は分かれて潜伏しようということになったのでした。
もう長崎会所が映るだけで身構えるようになっちまったよ……。
あ~~~茶席開くのお好きでしたねえ宍戸……主催の機嫌を取ろうとする人間が茶席の作法含めて右往左往するの見るのが楽しいんだろうねえ……。 しかし今回宍戸が出してきたものには戸惑いを隠せない商人たち、その中には幽烟も。なるほど、宍戸斎門の「目利き」に来たって事ですな。
器と呼べるかも怪しい、一言で言えば「壊れた」まま焼いたような焼き物を「かの天山先生の遺作にございます」としれっと出してくる宍戸……。 素人が作ったタルト生地みたいだね……陶芸家が出すもんじゃないですよ……。
これで天山先生を偲ぼうかと、と言う宍戸、いや茶を点てられたとしても、どこから口をつければいいのかもわからんが……。
「天山先生は奥方を亡くした気落ちがひどく、阿片に手を出した」と噂話をささやく商人たち。ああ……気落ちしていても納期はやってくるのだし、「痛みも悲しみも消せる」と言われたら手を出すよね……。
「人の儚さを形として残した」、ね……。そのテーマを本人がちゃんと認識していたかどうかも怪しいんだよな……阿片入れすぎて変死した状態で発見されて、焼く前の状態で残されたものに釉薬ぶっかけて焼いた可能性、あるよな……。
商人のみなさんが「そうして見ればまた趣が……」と本気なのかご機嫌取りなのかわからんトーンで褒めていく中、幽烟はしら~~~~~~~~っとした目をしているのでした。 「何が人の儚さじゃい、阿片で壊れた様を写したの間違いじゃなかろか」みたいな……。
は……?宍戸、幽烟に「この器に合う茶入れを仕立てて欲しい」……?
えっ何、つまり「お前もこうなる」と言いたいので……?何……?何もわからん……悪趣味という事だけがわかる……。
丁重にお断りする幽烟、あからさまに残念な顔の宍戸……子犬みたいな声出してくるじゃん……自分の顔と雰囲気と年齢も踏まえた「見え方」を熟知してる奴の声だ……。お前ほんとマジでそういう所だぞ……。
「理由を伺っても?」
「この作は天山先生にとっては、不本意なものでしょう。
同じ匠の道を志した者として、それを晒し上げるような真似は、できかねます」
あまりにも全うな理由を告げる幽烟の目、冷えきっておる。
「しかし、当人が駄作と投げ捨てた作が、
後世で粋人に見いだされた例など、事欠かないでしょう」
おま宍戸……せっかく幽烟が「不本意」で流した所にそういう食いつき方するか……。
後世で見いだされるのは「粋」の価値観が変わったことで起きることですけど、本人が亡くなった後で外野が言ってるだけだからなあ……。人の価値観がどう変わるかなんて作品を作った当人には予測しようがないし。
「阿片で肉体と精神に不可逆の変化を受けたこと」が「不本意」であろうと、生前の本人から心情を推測する幽烟に対して「そんなの関係ないですよ」って言ってるのと同じことで、その……ええ……?
「……これがそうだと?」
「ええ。先生は正に、この為に生を受けたのではないでしょうか?」
ギーーーーーーーーーッ!!!!!
お前の楽しみのためにこれまでの天山先生があったと言っ……醜悪すぎる……「自分の楽しみのために他人が存在する」、さてはコイツ殺生院キアラではないのか……?
なんなら天山先生の奥様が亡くなったのもこいつのせいではないのか……?というか「やりかねん」と思わせるキャラ、すごいな……ぶっちーと大樹さんの手腕だよ……。
そりゃ幽烟だってチベスナ顔になる。
何やら変な空気になる中、商人の一人が碓心の掛け軸を話題に出します。 宍戸が「苦労した」と言うんだからマジで苦労したんだろうな……そもそもの数が少ないしね。 うん、話題を変えたつもりのはずなのに変わってないな……おかしいね……。しかし絵の中のゆいは相変わらずの無表情なんだよな……。
「噂以上」「まるで生き写し」と囃す商人達、まさかゆいの顔を知っているのかと思ったけど、多分「写実的」って言葉が江戸時代にないからこういう言い方になってるんだろうなぁ。
「しかし、この者に絵筆を取らせた者は、とても残酷ですね」
「……どういう事でしょう」
絵の中のゆい、あの簪を挿してるんだな……。
「この絵に描かれた娘は、恐らく生きてはおりますまい。
愛する者を救えなかった無念と自責の念に苛まれながら、
身を切るようにこの絵を描いたに違いありません」
内情を知りすぎなんだよ……「絵師が生きた時代や人生を知るとより鑑賞の味わいが増す」ってよく言われるけどこう……それって「ただ目の前にある絵を見て欲しい」と絵師が思っていたとしたら、すごく残酷な事をしてるよね……精神の腑分けみたいなものだからな……。ほんと死人が墓から蘇ってこないのが(鑑賞者・研究者にとっての)救いですね。
ウキウキで語っていた宍戸、幽烟の
「悲しみと向き合う方法は人それぞれ。 碓心という絵師にとっては、それが"絵を描く"という事だったのでしょう」
という言葉で口角があからさまに下がる。
「ならば、この先が楽しみですね」
亡くした相手の姿をこうも鮮明に思い出せるなら、愛する者を無限に失い続けるに等しい、と宍戸は語ります。
うーん……よくわからんな……。「売り物」として手元から離さねばならない事を言っているのなら、そうかもしれませんね。少なくとも、この時代の武家社会において「女」が「売り物」だったという事実もありますし。
「この絵師はこの先、どうなってしまうのでしょう」
そこで「女を失った悲しみで阿片に走りまともに器を作れなくなった男の遺作」をアップにするなーッ!!!!
これ8話の酒場で使われた「杯(=心)」を踏襲してるんだろうなぁ……。
「悲しみに背を向けず、向き合い続ける事ができたなら、
やがて救われる日は必ず訪れるでしょう」
そう信じたいのは幽烟自身なんだろうなぁ……。
そうすれば悲嘆の雲は晴れ、やがて光が差すと?と聞く宍戸に対してもはっきり頷いていたし……。
「なんとつまらない。そんな凡庸なものが救いならば、この絵師には無用でしょう。
必要なのは、むしろその身も心も壊すほどの無限の苦しみ。 それこそが、素晴らしい絵を産むはずです」
いくら凡庸でありきたりだったとしても、個人にとってありきたりでないなら、求めるのは自然な人間の姿なんだよなぁ……。ほっといてくださいよマジで……。
所で「無限の苦しみ」の最後絶対♡マーク付いてたよ……ポンポさんでさえ「幸福は敵」レベルだったのに「無限の苦しみこそが素晴らしい絵の原動力♡」は開いた口が塞がりませんね……。
さて夕方、徹破先生の診療所でも患者を見送り晩ご飯の支度である。
徹破先生が厨で夕餉の支度に取りかかる中、将棋崩しで暇を潰す鳰と惣二が代わり映えしない夕餉の中身にうだうだ文句言う流れ、もう完全にご家庭の空気なんよ……。
「いつから君たちは、この家の子供になったのかな?」
言いつつまな板から菜っ葉を鍋に落とす流れ、あまりにもママ。流石にここはオギャらざるを得ない。マ、ママーッ!!!徹破ママーッ!!! それはそれとして尾頭付きの鯛、いいよね……。
惣二の町屋はいつ襲われるかも知れない、火攻めされたら先生の身体がいくつあっても足りんぜ、か……先生、「そもそも家賃を立て替えてるのは僕なんだけどね」って顔してますけども……。
鳰は鳰で、幽烟庵では雷蔵が一日しかめっ面しているので逃げ出してきた、と……。
だったらせめて手伝いぐらいしたらどうだい、と返すも
「俺は学がねぇから、蘭学なんざさっぱりだ」
「殺すのは得意だけど、治すのはな~」
と来れば、徹破先生もため息である。
「ねえ、新しいリベンジないの?」
という鳰の言葉と、将棋のコマが落ちる音と入れ替えでBGMを止める演出、いいな……。
「あるわけねぇだろ。俺ら礼拝堂にケンカ売っちまったんだぞ」
惣二の苛立ち混じりの声に、調理を続けながら淡々と答えたのは徹破先生でした。
「さてどうだろう。丁度、碓氷君が礼拝堂に行っている。
事と次第によっては、小判を持って帰ってくるかもしれないよ」
「旦那が!?」
劉の件も一区切りしたので報告するのが筋であり、大判も返さねばならないからねと「行った理由」を答える先生。
それが簡単に済んだら苦労はねぇだろ!と声を荒げる惣二。
「無事に戻って来れんのかよ、旦那は」
「……わからない」
「わからねぇって……それで黙って行かせたのかよ」
「しょうがないじゃん。幽烟ってば言い出したら聞かないし」
無事に返ってこれるかもわからない場に一人で行った幽烟、行かせた徹破、いつも通りの鳰、そして蚊帳の外の自分。
苛立ちに将棋の山を崩し、診療所を出ようとする惣二。
(鳰の「何すんのさーぁ!」、ンギャワイイ……延々リピートしていたい……)
「どこ行くんだい。もう飯が炊けるよ」
惣二からしたらいっそ腹立たしいぐらいにのんびりした声音の先生である。 徹破ママのご飯……いいな……(今回ばかりは徹破ママの幻覚を見ることを許して欲しい)。
「飯なんざ食ってる場合か!」
「僕らに出来るのは、待つことだけさ。今はね」
「惣二、どこ行くのさ」
「鉄火場だ鉄火場!」
あ~……礼拝堂へ向かいかけていた惣二を「今は堪えて礼拝堂だけは行くな」と言外に諭した感あるなコレ……初見で「ほんとに?礼拝堂行くんじゃないの……?」と思ったけど……。
「いつ襲われるかもって、自分で言ってたじゃん」
「こういう時こそ、運試しだろ!」
苛立ち紛れに閉める扉の音でアイキャッチ、堅実な演出が光る……。
正座しっぱなしの雷蔵、苛立って鉄火場に行く惣二……序盤のリフレイン入れてきてるんですよね。絵やシチュエーション自体は同じでも状況は全然違ってきちゃったねえ……。
アイキャッチ明け~ED
さて、運命の礼拝堂。
「劉を仕損じるとは、あなたらしくもない」
といいつつ、結果的には同じだから今回の件は不問にすると司祭。
所でシスターがいませんねぇ……何をしていらっしゃるんでしょうね……。
「劉の目的は、長崎に阿片をもたらすのではなくその逆だった。
阿片滅却の命を帯びた清国の密使が、リベンジに値するとされた理由は、奈辺に?」
そう訊きながら、大判を置いて返却する幽烟。
「恨噛みの黄金に色はなし。詮索無用と、貴方も心得ているでしょう」
のれんに腕押しの回答に、宍戸斎門の名を出す幽烟。
「ご面識があるのでは?」
「ずいぶんと唐突ですね。何故そのように思ったのです?」
大判に恨みを刻んだものが何故いないのかをずっと考えていた、と幽烟。
「宍戸斎門という者には、恨みはおろか、怒りも憎しみもない。
あるのはただ、人の生を狂わせる事への愉悦のみ」
「なればかの者は勿論、かの者の卑しき走狗と成り果てた者どもが、いくら歯を立てた所で……信仰に殉じた者たちの結晶たるこの一枚に、恨みなど刻める筈もない」
つまり幽烟としては「裡に抱いた恨みこそが小判に歯形を刻ませる」のであって、それがないものに「恨みの証」など立てられよう筈もないって事ですね……。
幽烟なりの答えに「賢しらに知恵を巡らせればかえって信仰から遠ざかる」と教えた筈、と返す司祭。いや……迷ったり遠ざかったりしながら心に根ざすのが信仰ってもんだし……。
目を閉じれば大判に込められた恨みを感じ取れるはず、とかフワフワしてんな~。
「劉の亡き後、宍戸はいよいよ松峰が阿片の毒をバラ撒くでしょう。
長崎を地獄に変える事がその恨みに応える事だと?」
「真に善き者ならば、阿片の誘惑になど屈することはありますまい」
あっ
キレちまったよ……久しぶりに……。
まずこの司祭に7話のコブラで阿片静脈注射してから考えようぜ……。
「左様、その宍戸なる者の企ても……あるいは、神の思し召しかもしれません」
「神の裁きは、時に苛烈なるもの。もしも日の本が阿片の毒によって地獄と化すならば、この国がそれほどの罪を犯したということでしょう」
カ~~~~~ッこのブリカスがよォ~~~~~~!!!! 苛烈なのは裁きじゃなくて試練だし、仏教圏の人間の罪を唯一神の尺度で裁けるとでも思ってるならそれは日の本の人間を獣と思ってるのと同義やぞ!!!!
いや、前からそれは言ってたな……異教徒など獣と同じだと……だから何だってんだ????ふざけないでくださる???
人は確かに簡単に過ちを犯す。だからこそ神はひとり児を遣わし、その救いすら届かぬ者のために、我ら利便事屋がいるのではと幽烟。
取り出したのは、ああ……劉の小判だ……。
「まこと深き恨みを感じます」
ほんとか~~~~?いや歯形を見れば解るんだけども……。
「劉が最後に刻んだ恨みです。
自らを謀り、仲間を奪った者。忌まわしき阿片を弄ぶ者への恨みです。
この小判に刻まれた証、復讐者として無視できる道理が、どこにありましょう?」
宣戦布告のように言葉を叩きつけ、ジェラルド司祭の言葉を待たずその場を後にする幽烟。
そんな彼の背に、感情の無い声で司祭は言うのでした。
「全ては、神の御心のままに……」
「宍戸斎門……それが劉を陥れた者の名か」
刀の柄巻いてる雷蔵、めちゃくちゃ作画がよく、かつ手にめちゃ力入ってるのでちょっとびびる。そもそもが滑り止めだからそういうものだとは思うんですけど……。
「利便事屋の所業……今日まで、心から得心していたわけではない」
それ自体はちょこちょこ零してたんだよね、雷蔵……。
「だが幽烟殿と出会わなければ、俺は自らが犯した罪すら解らぬままに死んでいた」
幽烟へ向き直り、頭を下げ感謝の意を述べる雷蔵。
「因果の糸をたぐり寄せたのは、あなた自身ですよ」
「ならば、繰馬雷蔵という愚かな侍のせめてもの勤め。
命と引き換えにでも全てを終わらせよう」
決意は固いな……それでも、命の使いどころを見定めることができるなら、それを自分で決めることが出来たのなら、それは他人が口を出せることじゃねえんだ……。
自害のためなら、短刀の柄を巻く必要なんかそもそも無いからね……。
「その後はどうされます?」
「潔く腹を切る」
エ~~~~ンそんな事だろうと思った……。
脳裏のゆいは背中を向けたまま……。
「……そんな侍としての死など、父上もゆいも許してはくれぬだろうが……」
さっきまで腹から出ていた雷蔵の声がここで肺から出てる……侍**「以外」の生き方をもう知ってしまっているから……。特に「許してはくれぬ」あたりになんか、「あの人たちは止めるだろうし、止めて欲しいけど、その人たちにはもう会えないし……」という、拗ねた子供のようなニュアンスを感じてしまって頭を抱える……。
向き直って作業に戻る雷蔵を引き留めるように、幽烟が言います。
「あなたには、もう一つの名前があります。
絵師、碓心という」
「そうだな……」
ここで短刀の刃がいっとき鞘に収まる、「侍」から「絵師」になる演出……。
「自分の犯した罪と向き合い続ける……それが俺にはふさわしいのかもしれぬ」
やだ、この子絵師の道を自罰の道だと思ってる……。
「絵師として独り立ちしていくなら、画題を広げるのも大切ですよ?」
幽烟が穏やかな声で軌道修正していく……。宍戸の言葉も相まって気が気じゃなかろうて……。
「それは無理だ……今はまだ」
「だが、もしかしたらいつか、いつの日か……
ゆいが微笑んでくれる日が来るのかもしれん」
重いよ……こんなの……こんなのどうしろってんだよ……。
一方の惣二、鉄火場はやけに盛り上がっており、どうやら流しの壺振りが来ている様子。
へえ~女じゃ……えっ……あの……礼拝堂のシスター様では……???コッッッワ……。
以前の町女は情報収集や連絡役として理解できたけどこれは……これは……。
不意打ちの接触にどう動くべきか判らず丁半もおろそかになった惣二、シスターに「丁方ありませんか?」と言われて丁に賭ける、結果は丁……。 場のほとんどが半に賭けていたため惣二が場を攫う形に。
いや……これは……気持ち悪いねえ……惣二に儲けを集中させて賭場の運営に「どう考えてもおかしい、さては組んでるな!?」って言われたら出禁コースじゃん……。
その後も惣二の独壇場が作り出され、まったく気づかずにはやし立てる賭場仲間をきつく睨み付ける惣二。
仕舞いには他の勝負人まで惣二のヤマを待つ始末となり――
「終えだ。俺ぁ抜けるぜ」
当然回りからはブーイングですが、「人の尻馬乗ろうとしやがって!それでも博打打ちか!」と一喝。したくもなるわよね、そりゃね……。
暗い帰り道をゆく惣二の口から零れるのは、「なんなんだよ……」という、先ほどまでの盛り上がりの中感じていた薄ら寒さでした。
「なんで礼拝堂の尼さんが、賭場で壺振ってやがる」
ここで酒を呷る惣二、気付け薬のニュアンスがあっていいな……。
「碓氷屋の旦那、どうなった……」
「儲けさせてやったのに、何が不満だ?」
うるせーッギャンブルは過程も含めてギャンブルだってことが解らねえなら賭場に来ないでおくんなまし!!!!
(それはそうと柳とススキが並ぶ川縁で出所のわからん声、という状況、怪談っぽさあっていいな……)
惣二、即応して鉄仕込みの花札を出そうとするも……ない!?
「商売道具を落としたか?なら代わりを……」
「くれてやる」
ウオーッここで声が背後に来て懐に手を入れられるの素直に怖ェーッ!!!
振り向いた先にいたのは巫女服を着て狐の面を被ったシスター、君……衣装持ちだね……。
惣二の懐に入れられたのは……阿片!?
と思ったけど追加で賽を投げてきた、あ~~~~磁石で惣二が賭けた方に出目を変えてたのか……。
これが「商売道具の代わり」ってことは……今後惣二にイカサマで食っていけと……!?根っからの博打打ちにそういう事言う~~~~~!?!!?
特注の商売道具をシスターに奪われた惣二、こんな不穏な男女の追いかけっこ嫌だよお~~~~惣二戻ってよお…………。
そうして、鳥居の並ぶ参道に辿り着かされた惣二。
「手付けだ」
「何のだよ!いつも通り旦那に、恨噛み小判を渡してくれりゃ……」
もはやそれはできない、碓水幽烟の処遇はお前次第だと語るシスター。
「碓水幽烟はなぜ繰馬雷蔵を庇う?」
はーーーーーい核心来た……「核心」……アバンのダーツ……。
そっか~~~~アレは宍戸の事だけじゃなかったんだなあ(大の字)。
繰馬雷蔵は本来薩摩の鶴丸城下で始末されていなければならなかった。なのに旦那がかばって……
「なぜだ」
「……ッ知るかよ!」
「ならば探れ。出入りできる賭場のあるうちにな」
「俺に間者の真似事でもしろってのか!」
「金は受け取っただろう?」
「てめェが押しつけたんだろうが!」
ちょっ……鉄板仕込んだ花札を上から散らすのはやめて差し上げて!
言いたいこと、やらせたい事だけ散々言って消えたシスター……。
「……なんだよ」
そうして参道の火は消え、悩み迷う、人間臭い男が暗闇の中に一人残されました。
「旦那と雷蔵の野郎が、何だってんだよ……!」
ここに来て膨れ上がる疑心暗鬼…………というか、もうこれは間者がどうこうというより、「惣二自身」が知らないと気が済まないタイプの奴なんだろうな……ずっと目を背けていた小さな違和感を、より生命の危機が迫ったこの状況で突きつけられて「そもそも」を知らずにはいられなくなるタイプの奴だ……。この展開如何によってはマジで惣二死にそうで嫌だよお~~~~~~~~~~~!!!!
所で天山先生の遺作、調べたら亜細亜堂の古参アニメーターで陶芸家でもある人に作って貰ってたのォ!?いや実物あるかはわからんが……。
今後の展開
次回、「The Die is Cast」。 賽は投げられた……今回の事と見せかけて、実は「ずっと前から」なんだろうな……。
あと「Die」(死)が入っているのがこう……この事態は誰が「投げた」結果なのか、それが明らかになるのかもしれません。
いや、もう予告カット出てるからほとんどわかったようなモンなんだけど……分かってても「それ」を絵の形で見るの、辛いよお……。
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