# アニメ感想:「REVENGER」11話 ”The Die is Cast”
惣二に接近する礼拝堂のシスター、宍戸の思惑など諸々絡み合ってさてどうなるの第11話だよお!!
先行カットで泡を吹きました。知ってたけど……予想はついていたけど……絵にされたくはなかった……。
詳細:アバンタイトル~OP
中華風の……無縁仏の共同墓地のようなものかな、そこで線香を置いて手を合わせる雷蔵。
劉の鎮魂を祈っているのでしょうね……そこからスッと立ち上がる勢いに意志の強さというか、「腹を括った」感を感じる。
鳰に連れられて通った道、空を泳ぐ凧にびいどろ……昨日と同じはずなのに違って見えるのは視聴者なのか、雷蔵も同じなのか。
細かく首と視線を動かしながら町を歩く雷蔵は、やがて焼け落ちた船もそのままの港に戻ってきました。
首を上げる雷蔵、塀に身を寄せて一八の射線から外れます。
撃たないのかと疑問を零す捨を厳しく窘めながら、「あれは誘いだ」と教える一八。
上司としてはちゃんと付き合ってくれてるほうだな……。捨本人の態度が卑屈だもんな。(もっともそうなるのも当然の環境ではあるが)
標的(雷蔵)の仲間が側にいるはずで、うかつに撃って居場所がバレたらこちらがやられる、という一八の言葉を裏付けるように舞う鳰の凧、そして徹破先生……。
OP~アイキャッチ
雁来屋で絵を眺める惣二、横になって睨み付けるように見ていたのはゆいの絵……表情が幾分柔らかいというか、生気のある顔つきになっている、「美人画」と素直に思えるよい絵ですね……。
問題はこれを見ている惣二の心中なんだよなあ……。
***
「碓氷幽烟一派への働きかけ、その後はいかがです?」
教会の地下でイイもん食ってんねえ君たちねぇ!!!
「迂遠な事をさせる。宍戸のリベンジャーが始末をつけるのを待てなければ、いっそ貴様の手の者を差し向けてはどうだ?」
えっシスター、ジェラルド司祭に対してもそういう喋り方なの……!?
という事は同じ勢力でも上司部下の関係には無いってことか。
司教、戦力の観点から幽烟組を失うには惜しい人材だと返します。
「曲者であっても、いえだからこそ使い出があるというもの。これからは尚更」
顎をしゃくって無言で言葉を促すシスター。
(ボディランゲージで何か該当するものがあったかな……と思って調べたけど確認できなかった)
「ひとたび阿片が長崎に解き放たれれば、やがて日の本全てが蝕まれる。
強欲なアンゲリアが座視する筈もなく、世は大いに乱れ、島原の悲願は成就される」
「島原の悲願」、司祭にとってはマジで「日の本を乱す」なのかな……。
漁澤さん曰く、信仰者が迫害を受けて乱になったそうだから発端は「信仰を認めて欲しい」だったんだと思うんだけど……。
始まりの願いがいつしか歪んで復讐になるの、人間あるあるって感じだな……。
「それに乗じて、九州に神の国を打ち立てて、お前はその王になると?」
「まさか。私の望みは信仰を蘇らせる事のみ」
「王はあなた方が選べばよい。
アンゲリアの異端者共の猖獗(=悪しきものが蔓延ること)、これ以上は望みますまい?」
背景で壁に木の根が張ってるの、「計画」「侵略」のメタファって感じィ……。
同時に「根の国」っぽさもありますね。罪穢れが流れ着くところ、悪霊邪気の根源ともされる場所……。
ジェラルド司祭、グラスを掲げて一言。
「王のものは王に。神のものは神に」
神の血たるワインを嚥下する神父……。
とりあえずシスターはジェラルド司祭直属ではなく、アンゲリアの工作員のような立場なんでしょうねえ……。
長崎を覆う、深い霧……。
「先の見えなさ」がそのまま幽烟組の現状であると同時に、「阿片の煙が覆った未来の長崎」をも連想させて不吉さがすごい。
漁澤さんの虱潰し、幽烟の釣り。互いに成果なしを報告する二人。
「餌が薩摩芋じゃなあ」
ひっぱるじゃん……どこまでも……。
「いっそ宍戸に尻尾振って、坂田の後釜にでも」
「そこです」
そんな気まったくないくせに宍戸に下るかという漁澤さんと、そこから違和感を見いだす幽烟の流れ、漁澤さんが水を向けたのかすらわからん高度なやりとりだなほんと……。
さて前提として、「阿片の抜け荷(密輸)は重罪」。
いかに長崎会所の元方目付ともいえど、露呈すれば死罪は免れない。
ゆえに坂田とて、宍戸をしょっ引いて阿片を根こそぎ奪おうぐらいは考えたはず。
「宍戸はそれができないと確信できるから、取引を持ちかけた」
「公議が手を出せねぇとすりゃあ……」
そうだね、離れ島の礼拝堂だね……。
清国で行き場を無くした阿片を買い取ってくれるなら、薩摩藩勘定奉行だろうが長崎会所元方目付だろうが知ったこっちゃないわな~~~~。
とはいえ、離れ島からはどうしたって船を出すから目立って仕方がない。
「だとすれば……」
あっ、この幽烟の足OPのやつだ。
考えを巡らせながら歩く幽烟の前に徹破先生がひょっこり、先生も成果なしか……。
「それで、何か?」
「それがねぇ……」
「悪ぃな旦那。用事があるのは俺のほうなんだわ」
そ、惣二ィ……!直で来たじゃん……。
さてそんな訳で地下アジトへ移動である。
「前から気になってたことがあってよ」
ああ……やっぱりか……その疑問の種に光を当て水を注いだのがシスターと……。
自分たちが薩摩まで出張ったのは、比良田が死に際に小判を噛んだからだよな?と惣二。
「ずいぶん唐突ですね。何故今更?」
徹破先生が「ほら言ったじゃん厄介なことになるって……」という顔をしており味わい深い。
「俺ぁ旦那と違っておつむの出来がよくねえからよ。
悪いがいちいち確認させてもらうぜ。それで合ってっか?」
「ええ。間違いありません」
雷蔵が松峰を斬ったあと、幽烟は鳰に鐘を鳴らさせた。
「ありゃあ、誰のためだったんだ?」
そうだね……殺害後に鐘を鳴らしていたのは松峰の件だけだった……。
比良田はとっくに死んでいたから、彼のために鳴らしたところで意味が無い。
「なら、誰だ?」
徹破先生の眉間の皺がますます深くなるぜ……。
惣二が「もう一つ聞きてぇんだがよ」と言うカット、目を伏せる幽烟に徹破先生が煙管セットを幽烟に寄せている……裏を共有している二人だからこその呼吸って感じだ。
「雷蔵の野郎が後生大事に抱えてる許嫁の簪、あれ旦那(の作品)んだろ」
はい、正解でーす……。ポップアップストアの展示でおもくそネタバレされていた件でーす……。
ああ、作っていたのを何度か見てたのか……。蒔絵細工って時間かかるもんな……。
「その通りです。比良田様の依頼で、私が設えました」
幽烟の煙草の葉を丸める指の動きが、記憶の糸をたぐるようにも見える……。
実際、幽烟が煙管を吸うのって記憶を反芻してる時っぽいんですよね、以前吸ってたのは5話で鳰を迎えた話をしていた時だったはず……。
「ゆいさん……繰馬さんの許嫁への、結婚祝いの品でした」
「それが解せねえ」
雷蔵の話では「許嫁が身につけていた」と言っていた。
そうなら、死んだ比良田の代わりにゆいへ簪を届けたものがいることになる。
「……亡くなられた比良田殿が、飛脚にでも託したんじゃないのかい?」
徹破先生、自分でも苦しいと解ってるじゃん……。
「そうかよ。……それでいいのかよ」
煙管に口をつける幽烟、灯るのは記憶の熾火……。
***
仕上がった簪を見て
「ゆいもきっと喜ぶだろう。
薩摩の田舎娘には、過ぎたものかも知れぬがな」
と満足げな比良田殿……。
「娘には過ぎたものかも」と言いながら奮発して幽烟に発注してるんだから、娘の結婚を祝いたい心が現れた台詞だなぁ……。
「此度のお役目、大変に危険なものと窺っております」
その簪のためにも無事に戻ってくださいね、と幽烟。
その言葉にどこか遠い目をして、障子の向こうを見る比良田殿。
「ますます帰らねばならぬ理由ができたが……」
「お主が話してくれた利便事屋なるもの、万が一の時には早飛脚も引き請けてくれるのか?」
これには「いささか冗談が過ぎる」と幽烟も戸惑います。
比良田殿は既に刺客が差し向けられていることを察知してたんだな……目の光が覚悟を語っている……。
でもその刺客が自分の義理息子、娘の許嫁って事までは……。
しかし誰が自分を斬ろうと些細な事、自分が恨みを刻むのは、阿片の抜け荷を目論んだ元凶ただ一人であると語る比良田殿。
ここら辺はやっぱ武士のメンタルだぁ……。
「はて、小判の恨みは遠く薩摩の地まで届くものであろうか」
その言葉に幽烟、背筋を伸ばして
「例え地の果てであっても」
***
幽烟、吐いた煙の余韻を追うように
「私ですよ」
と告げる……眉根を動かす徹破先生……。
「直接お伺いして、お父上の形見をお渡ししました」
「旦那ならそうするだろうよ」
「んで、その娘はどうした。父親たたっ斬られといて、泣き崩れてそれきりか」
***
父が斬られた夜、結婚祝いから父の形見になった簪を受け取った手がゆっくり揺れる。
「では利便事屋なる方々が、父の恨みを晴らしてくださると……」
抗いがたい喪失に胸を切り刻まれながらも、武家の娘として気丈に振る舞おうとするその痛々しさよ……。
ああ、「弔いの鐘」は幽烟が言い出したことだったのか、それがそもそもなんでだろ……罪人として処罰されたから葬儀に人を呼べない、ので幽烟も来られない、その代わりに復讐を為したら弔いの鐘を鳴らしますという事なのかな……。
幽烟が罪なく殺された父の死を悼んでくれると知り、自分を愛してくれていた父への言葉を零すゆい。
「ですが松峰様……松峰は、薩摩を離れられぬ身。父をその手にかけたものは、何者です……?」
ああ~~~武家の娘~~~~!!!!頭が回る~~~!!!
実際だんだん冷静になってくると因果関係が気になってくるもんだけども……。
「今は、繰馬雷蔵という名しかわかっておりません」
誰も悪くない……この場にいた誰も……悪くない……ただひたすらに間が悪かっただけ……。
ここからのゆいと幽烟の表情演技、TVアニメじゃそうそう見ないレベルですよ……。
ゆいの心中で起きている認識や感情の推移が雄弁に描き出されており、「絵の力」でブン殴られてしまう……。
簪を見るゆいの口元の引き攣りっぷりを通した作画監督、サンキューな……。
そう、あまりにも受け入れがたい事実を無防備なタイミングと角度で食らってしまった人間はね、こういう顔をする……。
また幽烟の表情も絶妙で……。
最初にゆいが顔を上げた時に意表を突かれ、その次で「ただ事ではない」と姿勢を直して顔を引き締め、対ショック姿勢に入っている……。
「嘘……」
「ご存知、なのですか……」
「わ、わた、私の……」
ここで虚しく落ちる簪がまたよぉ……。
「夫となる筈の御方が、なぜ!!」
この慟哭を最初に聞いた時、「そりゃ……原由実になるよ……」という感想になってしまいましたね……この演技が必要なら、原由実を呼ぶでしょ……。
心が歪む時に立てる音そのもののような泣き声だよ……。
「では、比良田様は、義理の息子に……」
お労しや……比良田許せんよな……という顔の幽烟……。
この時点では幽烟でさえ「そう」だったんだよな……。
「おのれ……」
「おのれ、繰馬雷蔵……」
うん……。
「最初から、そのつもりだったか」
うん……。
「繰馬の姓を捨て、比良田の家を継ぐと……命をかけて私を守ると!」
今となってはその言葉、思い出すのも苦しい……。
「そう言った腹の底で、お父様を……私をあざ笑っていたか!!」
とうとう身も世も無く泣き崩れ、畳に這いつくばるゆい。
「その男が松峰の手下であれば、リベンジの刃は、諸共に下されるでしょう」
ゆいを慰めるように告げた幽烟に、それまでとは打って変わった静かな声。
「斬ってください。あの男を……」
「繰馬雷蔵を。どこにいようと……」
「地の果てまで追い詰めてでも!生かしてはおけませぬ……」
口元から血が流れる、小判に刻まれたあまりにも深い恨み。
「父の恨みが松峰を裁くなら、繰馬雷蔵は私が恨みます!」
「あの男……どうして生かしておけましょう!
どうか……どうか!!」
畳を掻いた爪が剥がれる痛みなど、
小判を噛む力余って口を切った痛みなど、
迸る叫びが喉を焼く痛みなど、
この身を渦巻く恨みに比べれば全てが些事。
そんな女が噛んだ小判を拒む道理など、利便事屋にはあろうはずもないのでした。
「承りました」
ここまで来た視聴者がだいたい察しつつも、「これほどとは……」と感じざるを得ないシーンだったと思います。
これまでで雷蔵とゆいの絡みって2話までで薄かったから、「幽烟に恨噛み小判を託した理由」っていくらでも想像できたんですけど、もうごくごく単純な行き違いだったなあ……。
だからこそ一番取り返しがつかないんですけど……。
江戸時代の「家」は存続が命だから、「男が姓を捨てて他の家に入る」という入り婿はなかなかに重いことだったんだよな……。
その上で比良田家とゆいを守ると告げた男が、まったく真逆の事をしたという事実に対しての整合性が取れなくなってるから「何か訳があるのかも」とすら考えられなくなっている。起こったことが理不尽過ぎて。
これを「いったん棚上げして裏取りをする」というのは、仮に司法の精神があってさえ大きな苦痛を伴う事だと思いますから、「繰馬雷蔵は最初から裏切るつもりで比良田家に近づいた」という流れになるのは、人間としてごく当たり前の話ですね……。
これほどに血を迸らせる恨みになるということは、即ちそれだけ血の通った愛が、雷蔵とゆいの間にはあったわけで……。ある意味ゆいがやったことって「お前を殺して俺も死ぬ」だからそれってつまり……
や、やめろやめろ!!!装甲悪鬼村正みたいな話はやめろ!!!これ以上はおしまい!!!
アイキャッチ明け~ED
幽烟がずっと懐で暖める羽目になった小判を見せられ、
「雷蔵の奴もずいぶん深く恨まれたもんだなぁオイ」
と惣二。
「真相が判った以上、小判はお返しせねばなるまい、と考えていました」
でもゆいも自害してしまい、後には全てを失った雷蔵と宙に浮いた小判があるばかり、と……。
これ幽烟からしてみたら、「橋の下で見慣れない侍が居座ってる」と言う情報で行ってみたら、とても己の義父を仕事で斬り殺して平然としているようには見えなかったのだから戸惑ったろうな……。
雷蔵が一人で飛び出した時徹破先生が「それは聞いてない」って言っていたということは、4人でリベンジした後、隠れ家に戻って雷蔵を殺す手筈だったのだろうし……。
「繰馬雷蔵は松峰にいいように遣われただけ」だとわかっただけならともかく、さらにゆいも自害していたのだからもう、なっちゃったからには、もう、ね……。
碓水幽烟、めちゃくちゃ胃痛役じゃねーか……。いや、ここで雷蔵が間に合ってゆいとの間に下手に確執を残すよりはまだ少なくて済むのかもしれない、胃薬の量は。
「いや、旦那はあの哀れな野郎に情が移っちまったんだ」
おっ、自己紹介か?
「そのせいで俺達はどうなった。野郎の頭ん中は阿片の始末っきゃねえ」
手前勝手に突っ走ってあらゆる勢力を敵に回して、俺達は外もマトモに歩けなくなっちまった、と惣二。
「なあ。ここらで仕切り直そうじゃねえか」
「宍戸との大一番が控えた時にかい?」
「んなの関係ねぇ。俺達は利便事屋で、ここに恨噛み小判があるなら、遅いも早いもねぇだろうが」
最初に「雷蔵殺したら戦力が減っちゃうよ」という計算高さと冷静さを出してくる先生、好きだな……。
その言葉が先生なりの牽制だということに気づかない惣二も「雷蔵への情」という点では大概なんだわ……。
「本当にできるのかな」
「は?」
「彼の後悔を、君はずっと側で見てきただろう」
銛がダメなら大砲を出す、そうだね正解だね。
これには言葉を詰まらせるほかない惣二、しかし後には引けないとばかりに声を張り上げます。
「俺達の的に、ただの一人も誤解や逆恨みで殺された奴はいねえってか!
クズみてえな悪党にも、病気の母ちゃんがいたかもしんねえし、
自分の悪事を悔やんでたかもしんねえ!
改心して絵描きになれた奴もいたかもな!?」
ここら辺は、惣二自身が常々感じていたことなんだろうな……。
誰にだって改心するきっかけや、罪を犯さないといけなかった弱みがあったかもしれなくて……その「あったかもしれない」を永遠に奪って「もう叶わない」にしたのは自分たちなのだ、という……。
「だがよ……一度受け取った小判を、なかったことにはできねえだろうが……」
あとには引けない、どれだけ悔いても悩んでも、奪われた、絶たれた命は戻らない。
結局その場では納得できなかったのでしょう、しかめっ面の猫背で町を歩く惣二の前を歩くのは……囮を引き請けている雷蔵……。
「そなたはこの件、乗り気ではないと思っていたが」
「てめえが無茶しねえように見張っとけって、旦那の指示だよ」
これマジなのか嘘なのか判断に困るな……振り返って空を見れば鳰の凧がちゃんと雷蔵を追っている……。
隠密はできないから、白昼堂々歩き回って敵を気を引けば、その分鳰が自由に動ける、と雷蔵。
音もなく、どこから撃ったのかもわからないような相手なんだから、道のど真ん中で撃ち殺されても知らねえぞ、と惣二。
このシーン、雷蔵は腰の刀、惣二は胸の数珠飾りがアップになっているのですが、
「刀=固い、動かない」
「数珠飾り=ふわふわ、揺れている」
ということがそのまま「それぞれの心理状態」を表してると気がついて、演出力に泡を吹きました。こ、こんなの演出上手いダブルピースしちゃう……。蟹になっちゃうよお……。
11話、めちゃくちゃ「表情」に力を入れておきながら、ふっとこういう遠回しな事するじゃん…………。
自分が撃たれたら後を頼む、という雷蔵の刀は微動だにせず、
てめえの仇討ちなんざごめんだね、という惣二の数珠飾りは後ろへ引かれるように揺れている、多分「お前そういうとこだぞ」だと思っている……。
というか雷蔵は「劉の仇討ち」についての話をしているはずなのに、「雷蔵の仇討ち」と受け取ってる惣二も大概である。
「俺のことなど……」
おい繰馬雷蔵、お前マジでそういうとこだぞ。
まあ……囮なんか捨て鉢メンタルでないとできるもんじゃないと言われればそうではあるけども……。
「だが、劉は小判を噛んだ。
利便事屋にとって、恨噛み小判は絶対だ。そうだろう」
10話で「今まで得心していたわけじゃなかった」って言ってたもんな……今は得心している、利便事屋について……。
しかしここで雷蔵がそれを言う、というのは、惣二にとっては「殺すべし」と言われたようなもんで……。
「そうだ……恨噛み小判は絶対だ」
懐から仕込み花札を取り出す惣二、視線は無防備な雷蔵の延髄に集中し……。
突然きびすを返す雷蔵、惣二を押し倒した一瞬後に着弾音。
「てめェ……!」
「気を抜くな。奴らはいる」
そう、そもそも雷蔵は狙われるために町を歩いているわけで……自分も「標的」の内に入っていることを失念してたね、惣二……。
雷蔵が出血レベルの怪我を追ったことに焦る惣二ですが、雷蔵は淡々と
「かすっただけだ。そなたは無事か」
繰馬雷蔵ーッ!!!お前マジでそういうとこだしどんどん湊斗景明さんになってるからマジでやめな!!!
「……てめぇはいつもそうやって……!」
おっ惣二さん気が合いますねぇ、この件カタついたら飲み行きましょうよ~~~!!!
一方こちらは撃った側の一八と観測手の捨。
ギリースーツとまではいかないまでもちゃんとカモフラしてる一八と、白い着物のまま黒い屋根に上って上半身を起こしちゃう捨である。
「どうだ、動きはあったか」
「いえ、特に何も……」
「だろうな。あればお前は死んでいる」
慌てて身を隠す捨くんかわいいね……。
しかしここで動きがないのは……
「とすれば、他の奴らはどこで何をしている……?」
港を見張る徹破先生、船の出入りを記録している……。
その記録によれば不審な動きをしている船が一隻、夜中に出航して夜明け前に戻る、か……人目に付きたくないって意志だけははっきりしてるな……。
幽烟の報告に、
「するってえと、そこまで離れちゃいねえか」
と漁澤さん。彼曰く、アンゲリアが長崎に居座った当初、沖合に無理矢理おっ立てた灯台があるとのこと。
「彼らの旗の下に奉行所が踏み込めば、かの国も黙っていない」
「ともあれ、いざとなりゃ知らぬ存ぜぬを貫きとおしゃいい」
肝の座ったお人だよほんと……。
しかしあからさま過ぎる、誘い罠の可能性もあるという漁澤さんに「既に、人を送っています」と幽烟。
「抜かりはねえってか」
で投げたダーツは畳に刺さるのでした。いや~ノーコン乙と言いたい所ですが、漁澤さんの場合は最後までわかんないからね……。
さて当の不審な船、アンゲリアの旗上げてアピール十分じゃん……。まあ仮に役人が哨戒してたら籍を明らかにしないほうがモメる可能性あるからな……。
件の灯台が見えてきた、おっ与太郎君だ……雇い主が太っ腹なのはいい、それはそう。(すごくそう)
「いっそこの船丸ごと頂いて、海賊にでも鞍替えしちまうか~?」
おいおいおいその後にくっついてくるリスクがデカすぎるでしょ!?
こういう我慢が効かないというか……面白そうな事にホイホイ引き寄せられそうなあたりを貞が「馬鹿」と言っているのかね……。
そんな与太郎がマストの上から見つけたのは……鳰くんちゃん!?
わりとあっさり背後に寄られてしまった鳰くんちゃんである……。
「何度も行き来しているのにそんなに珍しいかよ」
「すいませぇん……自分、新入りで……」
鳰くんちゃんの下手っぴ三下演技カワイイ……。
しかし与太郎には通じず、腕を取られてしまいます。
「へえ。どうりで船乗りにしちゃあ、きれいな手をしてやがるわけだ」
潮時だと判断した鳰、ガラス糸で牽制しつつ与太郎の腕を振りほどいて海へ脱出。
興が乗ったのか「もっと遊ぼうぜ!」と声をかける与太郎、徹破先生の銛に牽制されて、小舟で合流して逃げていく二人を「めんどくせえ」と見送るのでした。
ここで寄ってきた部下、練度が高い。
そもそもこんなイカれた格好した若造にちゃんと敬語使ってちゃんと指示を仰いでいる……。
「どうせ奴らはすぐ戻ってくる。宴の準備といこうや」
小鳥の声が聞こえる爽やかな朝、豪華な絨毯の上でまた一人阿片の犠牲者が……。
そしてそれを最新の「写真機」で撮影するのが……宍戸斎門という男……。
「これが写真機というものですか」
貞の後ろ、さ、最悪……阿片(で狂った人)がいっぱいコレクションじゃねえか……。
「大したものですなぁ」が、写真機に対してなのか宍戸のコレクションに対してなのか最早わからねえ……。どっちに対してかもしれねえ……。
「己の裡の怒り、嘆き、苦しみ。
それらを形にするには、天分の才が必要でしたが、
これさえあれば、話は違う」
いや……自分の心を形にするのに才なんかいらないよ……「伝える技術」は必要だけど、形にするだけなら誰にだってできる……。
例えば、小判を噛んでみるとかさ……。
は……?数を揃えてやることが、「阿片で狂った女性の親兄弟を連れてきてどんな風に女性を撮るか知りたい」……????
女の子の親兄弟が、渡されたカメラで自分を殴り殺しに来るという考えがない……?えっコワ~~~~~~。
貞も貞で「さすが数奇者でいらっしゃる」で流してるじゃん……。
さてここからが本題、「例の島」が突き止められてしまった件について詫びる貞でしたが、宍戸はむしろ「ようやく」「むしろ、遅かったぐらいですよ」と返します。
「では?」
「ええ。ネズミ獲りにはうってつけの場所でしょう。
一網打尽に、しちゃってもらえますか?」
とここで、壁にもたれ掛かっていた阿片被害者の女性が倒れ込んでしまうのでした。
ここの宍戸、「あら」がほんとに……人の心が壊れているというのに「お皿にヒビが入っちゃった」ぐらいの感触でほんとに……。
そんな宍戸に貞は言うのでした。
「承って、ございます」
いや~~~~~、「灯台もと暗し」とは正にこのこと……1話で既に灯台、写ってるんだよね……。なんてことするんだこのアニメ……。
あと大量の写真の隣に碓心の絵も飾られていたので、「写実」を「写真」が駆逐する、即ちこれからの美術には写実が求められなくなって雷蔵が絵師として生きられなくなるであろう事を示していますね……。
実際、西洋画も写真が出回るようになって「ただリアルに描くだけじゃ……ダメだ!」になって印象派など様々な「画風」が生まれていくので……。
マジでなんてことすんだこのアニメ……。AI絵師が問題になりつつある情勢を踏まえたら余計に示唆的になっちまった……。
焼け落ちた寺で刀研ぐ雷蔵、ナンデ?になっちゃった……。
そんな雷蔵の元までわざわざスパイクブーツを届けてくれる幽烟である。
深刻な声で詫びる雷蔵。
「此度の一件、俺が幽烟殿らを巻き込んだ」
えっあっ……どっちかというと逆……いや……そうなのか……?
ああ……惣二の殺気には気づいていたのか……。それで人の匂いがしない場所にいたのかな……。
「……絵は、描き続けているのですね」
ここの絵、タッチが違う気がするけど木炭が写ってるから、焼け跡に転がっていた炭を使ってるっぽいな……。
「考えるより先に描いている。剣でも筆でも、俺は変わらぬらしい」
自嘲の声で応える雷蔵。
ゆいの絵に、困ったような、切ないような表情を浮かべる幽烟……。
彼女が望んだ復讐を果たせない痛みを覚えるほど、「生きた」女の顔が紙の中にある……。
「ですが、それは大きな違いです。
あなたには、刀の他に握れるものがあった」
剣は斬ることでしか世界に干渉できないけど、筆が生み出すものは「人の心」に干渉するからね……。
「侍でいられなくなっても、あなたは刀を振るうことでしか生きられない。
そう思ったから、私はあなたをリベンジャーに誘いました」
「ですが、あなたは別の生き方を見つけ出した」
「生きる……許されるのか?そんな事が」
「神は、許されます」
ウオーッここで信仰者としての側面出してくるのずりぃよ……。
荒れ寺を去りながら、幽烟は言います。
「後は、あなたがあなたを許すかどうかです」
日が落ちて装備を整える雷蔵、ウオーッ1話(とOP)と同じ原画だぁ……。全ての因果が1話に巡って帰ってくる、という演出にこれほど効果的なリフレインはあるめえ……。
しかし全く同じではない、ここに辿り着くまでの道筋があったという事実を、腰に差した短刀が物語っています。
迷うことはな……決して間違いではないんや……。
弓を担いで診療所を後にする徹破先生。
凧を背負って歩く鳰、その前をゆく幽烟。
そして、路地裏の惣二……ああ、そっか……10話からこっち、流れに呑まれて「自分の博打」を出来てなかった惣二が、ようやくそれを取り戻せた瞬間でもあるのか……。
夜道を駆ける雷蔵に投げられた札は、牡丹の傍を舞う蝶二匹。
姿を見せ、顎をしゃくって先を促す惣二に、ふっと笑って後を追う雷蔵。
こ、この構図……いろんな所で見たやつだ……!!!(大興奮)
徹破先生に手を振る鳰くんちゃんカワヨ……。
ばつが悪そうな顔の惣二にやれやれ顔の徹破先生、ほっこり顔の幽烟が顔を見合わせるの良……「しょーがないなあ惣二は」みたいなリアクションの鳰くんちゃん好き……。
五人揃って道を行く、雷蔵のナレーション。
「晴らせぬ恨み、これあらばその無念、金貨一枚に刻むべし。
裁きの沙汰、天に代わりて請負候。
これ即ち、復讐者」
ここでタイトルロゴがドーン!!!(大盛り上がり)
次回最終話、「The Sun Always Rises」。
誰にも等しく昇る太陽の中、行き先を見いだせるのか、どん詰まりで人殺しの悪党らしい死を迎えるのか。
迎え撃つは宍戸斎門と貞一味、泣いても笑ってもこれが最後です。
今後の展開
とりあえず雷蔵が最後まで生き残ったとして話をしますが、絵師「碓心」として生きるにしても、ゆいの恨み節を知らないままだとなんか違う気はするし、かと言って自分に向けた小判があると雷蔵が知ったら「じゃあ殺してくれ」になるので…………やはり鍵を握るのは碓水幽烟……。
まあ何にせよ、ここまで来たら……見届けるのみよ!!
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