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SNSを見てると、次から次へ色々なものが欲しくなる

ジェイコブ先生が授業でルネ・ジラールの「欲望の現象学」を題材に講義をしている。

ジェイコブ先生: さて、今日はルネ・ジラールという思想家の「欲望の三角形」について学びます。これは、僕たちが何かを「欲しい」と思うのは、必ずしもその物自体に惹かれているからではなく、他人がそれを欲しがっているから、持っているから、という考え方です。

ソフィア: え、どういうことですか?自分が欲しいものは、自分が欲しいから欲しいんじゃないんですか?

ジェイコブ先生: いい質問だね、ソフィア。例えば、最近流行りのスマホケースがあるとします。別に機能は今まで使っていたのと大差ないのに、友達がみんな持っているのを見ると、急に自分も欲しくなったりしませんか?

エマ: あー、あります!インスタでインフルエンサーが紹介しているのを見て、可愛いと思って欲しくなることもあります。

ジェイコブ先生: まさにそれだよ、ジラールはこの現象を「欲望の三角形」というモデルで説明したんだ。この三角形には三つの要素があります。「主体」「対象」「媒体」です。

ソフィア: 主体、対象、媒体…?

ジェイコブ先生: そう。「主体」は、欲望を抱く人のこと。君たちの場合、スマホケースを欲しいと思っている自分自身だね。「対象」は、欲望の対象となるもの。ここではスマホケースです。そして重要なのが「媒体」。これは主体と対象の間に入って、欲望を伝える役割をする人や存在のことなんだ。

エマ: インフルエンサーが媒体ってことですか?

ジェイコブ先生: その通り!インフルエンサーがSNSで「このケース、めっちゃ可愛い!」と発信することで、それを見た人たちは「私も欲しい!」と思うようになる。この場合、インフルエンサーが媒体となり、スマホケースへの欲望を伝えているんだ。友達が持っているのを見て欲しくなる場合、その友達が媒体になるわけだね。

欲望の三角形

ソフィア: なるほど!だから、自分が本当に欲しいのか、周りが持っているから欲しいのか、わからなくなる時があるんですね。

ジェイコブ先生: そう、ジラールは、僕たちの欲望は常に他者の欲望を模倣することで生まれると言っているんだ。直接的に対象を欲望するのではなく、媒体を通して欲望を模倣する。だから、「欲しいと思うのは他人が欲しがっているから、持っているから」というわけだ。

エマ: SNSだと、この「媒体」がたくさんいますよね。インフルエンサーだけじゃなくて、友達の投稿とか、おすすめに出てくる広告とかも。

ジェイコブ先生: まさにそうだね。SNSは「媒体」だらけの世界と言えるかもしれない。だから、SNSを見ていると、次から次へと色々なものが欲しくなってしまうんだ。

ソフィア: それって、なんか怖いですね。本当に自分が欲しいものがわからなくなりそう。

ジェイコブ先生: ジラールの理論は、欲望が満たされることがないということも示唆しているんだ。常に新しい「媒体」が現れ、新しい「対象」への欲望を刺激するからね。だから、何かを手に入れても、すぐにまた別のものが欲しくなってしまう。

エマ: なんかわかる気がします。新しい服を買っても、すぐにまた違う服が欲しくなったり…。

ジェイコブ先生: そういう経験は誰にでもあると思う。ジラールの理論は、僕たちの消費行動や人間関係の複雑さを理解する上で、とても役に立つんだ。ただ、彼の理論には批判もある。すべての欲望を模倣に還元するのは単純化しすぎだという意見もあるんだ。個人の内発的な欲求も無視できないからね。

ソフィア: 確かに、全部が全部、周りの影響ってわけじゃないですよね。

ジェイコブ先生: この「欲望の三角形」という考え方を知っておくことで、自分が何を欲しがっているのか、なぜそれを欲しがっているのかを、より深く考えるきっかけになるはずだよ。