asanotski
物語のはじめだけ。おもいつくまま。
さわやかな風が頬をなでる。 まだ朝日の昇りきらない暁時、いつもこうして草原を眺めるのがエナの習慣だ。 右も左も、見慣れた景色。それをゆっくりと、全身に風を纏って感じていると安心する。―ここは、私の場所。私の世界。 深呼吸をひとつ。そうしたら、朝一番のあいさつをしにいこう。 トゥトもマァも、一つ下のミラももう起きて卓を囲んでいる頃だから、少し遅れたことを詫びながら。 それもいつものこと、風が異変を運んでくることがなければ。 ―なんてね、ここはいつも通り。何かなんて
このケーキ、なににみえる? あかのスカートのおんなのこ、「いちごのケーキ!」 くろのズボンのおとこのこ、「チョコレートケーキ!」 みどりのくつのおとこのこ、「ケーキじゃないよ、プリンだよ!」 きいろのふくのおんなのこ、「わかんなぁい!」 さてさてケーキはこまりました。 だれひとり、おなじ「じぶん」をみていないみたいです。 じぶんはケーキのつもりですが、もしかしてケーキじゃないのかしら。 でも、あかのことくろのこは「ケーキ」とよんでくれました。 みどりのこにいわ
やけに空があかるいと思ったら、ほぼ満月に近いんじゃないかという月がかかって星も見えない。 雲もなくて、月の独壇場。さすがに情緒のかけらもない。 ひっそりした夜の空気が好きなのに、煌々ととでも言うべき月の光。あーあ、影から影へも楽じゃない。 きょうのところは白旗あげて、やすむとしよう。 きっと明日、明日がだめならつぎの日にでも、私の好きな夜がまたやってくる。
その夢では、いつも同じ自転車が出てくる。 必死に漕いで暗闇に突撃すると、夢の終わり。目が覚める。 それまで何をどうしていたかは覚えてなくて、ただただ、追われるように自転車を漕いでいたことだけが脳裏からはなれない。 あの自転車は、私のものだったろうか?
まだ太陽の名残りものこる西の空を見上げると、私の好きな雲空だった。 薄く広く。それももう、あとすこし。
ずいぶんと長い間、眠っている気がする。 ときおり聴こえる声や音は、もしかしたら自分を起こそうとしてくれているのかも。 そう思っても、なぜか目を開ける気にはならなかった。 ーまだ、その時じゃないから。 いったいなぜそんな確信を持っているのか。 こうやって「考えて」いるからには、もう目覚めているようなものなのに。 それでも微睡みを手放すことはなく。 いつかの出会いが来るまで、いますこしー
水の都と呼ばれるだけあって、至る所に水路が引かれ、そこここを繋ぐ橋がかかっている。 「あんたの子かい?ねぇ」 通りがかった橋のたもとから、欄干の中ほどに立つおばあさんが見えた。 「あんたの子かい、ねぇ、かわいいねぇ」 話しかけているのは、カラス。 カァとも返事をしないけれど、2羽が左右からおばあさんを慕って甘えているように見えた。 鳥特有の、カクカクした首の動き。 撫でてほしそうに、撫でたそうに。 やさしい景色。 暮れなずむ空、風も冷たく感じる夕方、それでもこの心がふわふわ
おととい撮影。昨日、今日と雨でけっこう散ってしまっていますが、もうすこし楽しみます。