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愛されたかったと思ってたなんて、知らなかった。

父のリハビリ施設に面会に行くと、なぜか母まで同席していた。
せっかくのチャンスだから、金銭面の話は少しにして、実家家族と離れたいことをしっかり話した。

小さい頃から親に対しておかしいと感じ、頼ることをあきらめて生きてきたこと。
自分で子育てをしていくなかで、あれはやっぱりおかしかったんだ、と思うことが次々に増えて、どんどん苦しくなってきたこと。
親が原因で心療内科にかかるのは今回が2回目なこと。
これ以上関わりたくないから、(老人ホームの)保証人は引き受けないということ。

私が最後に言ったこと。
「縁を切りたいくらいに思っているが、そこまでは言わない。今後、もし兄弟が結婚するようなことがあれば、(求められれば)結婚式には出る。息子が会いたいといえば自由に会わせる。もう関わらないでくれ」

両親ともに、「小さい頃から」という点にショックを受けていたようだった。

特に父は、私が関わりたくないと思う理由をしっかり話したことで、かなり納得してくれたようだった。
また何十年も家庭内に問題が存在していたのに、放置していたことを反省してくれたようだった。

この父だけを考えれば、本当はこちらも再考の余地があるはずだが…。

父という重しがなくなったら、母は何をし、何を言い出すか分からない。
だから、私は父ごと母を切り捨てるしかないと思っている。

案の定、リハビリ施設を出たとたん、母は私のダンナに軽やかに言った。
「先々、私(母)が老人ホームに入る時がきたら、実家の処分をお願いしたいんです~」

ダンナは「えっ…」と絶句していたが、私が即座に断った。
もごもごと曖昧にしていては、母には了承したと取られるのだ。

帰宅後、ダンナは「自分で」って気持ちはまったくないんだね…とつぶやいていた。
以前、私はダンナに「うちの母はとにかく人に寄生する生き物だから、絶対に気をつけて!」と言って、苦笑いされたことがある。
ダンナもさすがに理解したらしい。

面会のなかで私は父に言った。
「父という重しがあるから、今は母は父の言うことをきく。しかし父という重しがなくなったら、金銭的にもその他の話としても、とんでもないことを言い出すおそれが強く、私はそれを強く不安に思っている。まるで時限爆弾を抱えているかのような気持ちだ」

さんざん面会中に、関わりたくない話をしたのに、直後にしれっと「実家の処分」とか言い出すのだ。

それはもちろん両親ともに亡くなって、「相続」としての話になった場合は、しかるべき人間が処分せねばならない。
そういうことは分かっている。

しかし母が言うのは「自分が老人ホームに入るタイミング」である。

私の他に、兄弟がいるのになぜ、私のダンナに。
関わらないでくれって言ったばかりだろうよ。

この件は、あとから父に報告させてもらった。
父がいなければ母はこうして、次から次に問題を起こすのだと分かってもらうために。

ちなみにこの件について、父からは「言うべき言葉が見つかりません」と返事がきた。
対面ならともかく、慣れない携帯メールでは、このような返事になるのも致し方なしか。


とても疲れた。


面会があったのは昨日の午後。
今朝、両親それぞれからメールがきた。

ふたりとも、私が小さなころから苦しんでいたことに気づけなかったと反省している。
そして体を大事にして、とも言ってくれている。

たぶん根っからの悪人ではない。

本当にこんなことをしてよかったのか、という気持ちが少しだけわく。

でも思い出せ。
2週間前の自分を。
苦しくて苦しくて、予約もなしに心療内科に駆け込んだあの大雨の日を思い出せ。

(予約なしだったので、受付だけしてもらって、実際には3日後の診察になったけど、予約が取れたことだけでもずいぶん安心できた)


洗濯を干しながら、思った。


私は両親に、とくに母に、愛されたかった。

母には「恥をかかせて!」と言われてばかりだった。
顔を見れば挨拶代わりに「長い顔!」と言い、足を見れば「でかい足!」と言う。

面会中に「恥をかかせて!ってしょっちゅう、言ったよね」と指摘したら、母はいまだにそう思っていることが分かった。
「だって、あんたは本当に恥をかかせることばっかりしたんだもの」と。

体調不良で保健室にむかえにきてもらうことが恥?
宿題を授業時間内に終わらせてしまって、家ではやらなかったことが恥?

思い出す母の笑顔は、必ず第三者がいるときのものだ。
ふたりだけでいるときの笑顔の記憶がない。

父は、時代のせいもあり、子育てにそんなに多くは関わっていない。
それは仕方ない。

しかし父は母の横暴をすべて見逃した。
父がいない時間に、どれだけ私が嫌な思いをしたか、父は知らないのだ。

そして父の目の前で展開されたもめごとに対しても、父は母にはフォローしても、私にはなんのフォローもなかった。
ただ「分かるだろ?」というような顔をしてこちらを見つめるだけ。

親に頼るのはあきらめていたから、何も言わなかった。
本当は「分かるもんか!ばかやろー」と思っていた。

言ったら、何か変わっただろうか。


とにかく。
愛されたかったんだ。
唐突に、そのことに気がついた。
自分でも、自分の気持ちを知らなかった。


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あさのしずく
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