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行楽日和の日には思い出す。
いい天気の連休には、きまって昔の職場を思い出す。
新卒で入社したのは、お土産屋さんを経営する会社だった。
最初こそ事務所のようなところでお茶くみをしていたが、すぐに現場(店舗)に出されて忙しく働くことになった。
お土産さんというのは平日はだいたいヒマである。
そしてGWだとか盆暮れ正月のように、他人様が休んでいる時こそが忙しい。
朝から晩まで、それはもうコマネズミのように働いた。
レジに入ればお土産のお菓子やキーホルダーなどが山のように差し出される。
次々にお会計をする。
お土産のお菓子をまとめ買いするお客さんも多いから、大袋にまとめて入れて、さらに小分けの土産袋もお付けする。
キーホルダーなどはひとつずつ小さな袋に入れる。
合間には道案内をして欲しいお客さんから声がかかる。
レジをしながら、道案内にも返事する。
ガチャガチャやプリクラの調子が悪いとか、頻繁に声がかかる。
そのたびに鍵束を持って走り回る。
レジに入っていない時間は、売れいきの良い商品の補充だ。
店の中の在庫をさっと眺めて、裏の倉庫から段ボールをいくつも台車に乗せてくる。
どんどん品出しをする。
出すそばから売れていくような人気商品もある。
人気商品の業者さんは、1日に3回も配達に来て補充していってくれる。
それでも観光バスなど来ようものならあっという間にすっからかんになる。
混雑する時期には、店の外にも臨時売店をつくってあるから、そちらの様子も見る。
ふかしたての肉まんやあんまん、氷水で冷やしたペットボトルなども、調理したり補充したり、大忙し。
たくさんある自販機の面倒もみなければならない。
売上金の回収に釣銭のセット。
商品の補充。
本当に、いくらでもやることがあって朝から息つくヒマもない。
早番で朝7時から働いていても、気づいたら夜7時くらいになっている。
でも楽しかった。
お土産屋さんに来るお客さんは、いい人が多い。
観光や帰省の行き帰りに立ち寄ってくれる人ばかりで、みんな楽しそうなのだ。
怒ってるお客さんはあまりいない。
楽しそうなお客さんで混雑する店内は、幸せな活気に満ちている。
連休に遊びに行くことなど不可能な職場だし、そもそも連休なんてもらえない職場だった。
誰一人として有給休暇なんて取ったことがない。
今なら超・超・超ブラックな職場だったけど、楽しかった。
行楽日和の日には思い出す。
倉庫に行く時、自販機のメンテをする時などに、ふっと空を見上げたことを。
海に続く青い空。
晴れ渡る広い空。
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