【小説】牛島 零(18)(最終話)
最後
俺は牛島のおかげで生き返ることができた。牛島の葬式に美咲とともに出た。
「牛島は、俺のために死んだんだよな」
「そうだよ」
「なのに俺はこんな悠々と生きてていいのかな」
「罪の意識?」
「まあ」
牛島は俺を助けるために、どんな気持ちで死んだのか俺にはわからない。
「まあでも、私はネオが生き返るなら何でもいいと思ってたよ。あの時は神にもすがる気持ちだったからね。牛島は神になったんだよ」
「不謹慎だな」
美咲は初めからこんな人間だったっけかな、と思ったが顔を見てどうでもよくなった。
牛島の遺影は、おそらく生徒手帳用の写真で写りがよかった。持ち帰ってアルバムに入れたい。牛島の家族は、非常に残念そうな雰囲気はなく、淡々と葬式という作業をしていた。パパ活をしていた女の末路って感じである。
俺と美咲は、式場を出るといつもの川に向かう。
「葬式どう思った?」
「私は葬式だなって思った」
「俺も」
「今日どっか夕飯食べてく?」
「いいかな、気分じゃないし」
「そっか」
足並みをそろえて歩くのはテクニックがいる。ただ歩幅を合わせるのではなく、歩くペースを合わせなければならない。
「なんかなあって思う」
「なんかなあって何よ」
「牛島はさ、葬式の時俺に対してどう思ったんだろうなって」
「賢者タイムだなって思ったんじゃない」
「いや、それは」
「無気力すぎるよ。すべてを悟ったみたいな雰囲気出しちゃって」
「まあ」
そう俺は悟った。昨日。
「今日する?」
「うん」
「ご飯は食べないのにね」
「うん。俺って最低かな」
「最高だよ」
ああ。
これは後日談だが、俺をうった犯人は俺の元父親で、牛島が死んだ三日後に逮捕された。それと駐在さんが俺の実の父親だったらしい。母親は、自分がしたことに対して自責の念に駆られていると思いきや、朝食のパンを三枚切りにグレードアップしていた。何もない日常が流れている。
ありがとう牛島。
「ついた」
この気持ちを川に流す。